98 幼馴染
宮本が失踪したらしい。
本当に死神魔王マモンを倒す気でいるのかな?
倒したら倒したで俺の懸念が減るので喜ばしい事だ。
まあ無いけど。
まだ連続で宝くじを当てる方が遥かに可能性がある。
まあ、そんな事よりも監視の強化だな。
流石に直接監視するのは無理だから、国境付近からの監視になるだろう。
と言ってもそれをやるのは俺じゃなくて兵隊さんだけどな。
ハルさんもマモンの危険性はわかっているから警戒態勢に入ってくれているし。
警戒するだけで済めばいいなあ。
しかし、それはやはり希望でしかなかった。
数日後に国境付近にアンデットの群れが進行中との報。
ちっ。
想定はしていたとはいえ、よろしくない事態になったな。
「スズ、どうするのですか?」
「どうもこうも敵対行動を取ったんだ。位置が判明次第、即時討伐だよ。一応警告だけはするけど、無理だろうな」
それが、俺の守護神として役割だし、おそらくは後々暴れまわるだろうから神王としての役割でもある。
「そう、ですか」
そう言うとシアンは辛そうな顔をする。
「心配するな。俺は死なん。信じろ」
「スズ……。はい、信じて待っています。それが妻の役割ですものね」
妻の役割ね。
あー、ハルさんに勝ったんだし近い内に結婚式でもあげた方がいいかな。
ほぼほぼ結婚したようなものだけどそう言うのは重要だろうし。
あくまで式なので死亡フラグにはならないはず。
なんて思ったりしているが、マモンの位置は判明していないので待機だ。
無数のハエ型のゴーレムを飛ばして、それを媒介にして視覚的に捜索している。
見つかるのも時間の問題だろう。
と思っていたんだがな。
元パールミス王城。
今は様変わりしているし魔王城と言うべきか、あそこにいる確率は高いと思ったんだが、どうも違うらしい。
どこに隠れているのやら。
「スズくん!!」
と、そこにサヤが慌ててやって来た。
「魔王が攻めてきたって本当に!?」
一応、国境から離れた王都であるためそこまで情報は出回っていないはずだが。
何処で聞いたのか耳が早いな。
「あー、うん。て言っても魔王本人はいないみたいだし、こちらの軍の防衛戦の最中てところかな」
ハルさんが迅速に対応したので、それなりの戦力があちらにあるはずだ。
と言っても相手はアンデット。
おかしな表現だがなかなか死なないだろうから苦しい戦いになると思う。
彼らの為にも早く魔王を倒さないとな。
「もしかして勇輝が……」
「それなら心配ないよ。あいつが失踪してからほとんど時間が経っていない。少なくとも魔王と戦ったなんて事はない」
国境付近まで行っていたらいい方だろう。
「そう。よかった」
サヤは安堵する。
俺は嫌いだが、あんなんでもサヤにとっては幼馴染だ。
それなりに心配するのだろう。
「沙耶!!」
そして、そこにゼンジローと朱理もやって来た。
沙耶を心配して駆けつけたって感じだ。
「ゼンジローと朱理か。朱理は久しぶりだな」
「あ、スズくん。うん久しぶりだね」
何となく意図的に避けられているような気がしていたけれど、特にギクシャクするような事はなかった。
まあ、避けられていたというか、ゼンジローとサヤがそこそこの頻度でうちに来ているだけなんだが。
他の生徒達とはまったく会っていないし。
「慌ててスズくんの所に行くって言うから心配しちゃっよ」
「ごめんね。勇輝の事が心配になって」
「あいつはなんでそんなに暴走するんだ」
本当にな。
何があいつをそんなに駆り立てるのかわからんよ。
んー、ん?
これは……。
「あー、宮本見つけたぞ」
「え、本当!?」
「ああ、ほら」
中空に一つの映像を浮かべる。
ハエ型ゴーレムでマモンの捜索だけでなく戦場の監視もしているのでそこの映像だ。
その中で、冒険者達が戦っている区画にて宮本を発見した。
アンデット相手に必死に剣を振るって戦っているようだ。
いい感じに倒せているのは宮本のスキルのおかげだろう。
アンデットは光属性に弱いからな。
こうかはばつぐんだ!
「とりあえず……無事みたいね。よかった」
ホッと安堵の表情を浮かべるサヤ。
しかし、俺は他に気になる所がある。
いや、宮本も関係あるんだけど、なんでおねぇと一緒に戦っているんだ?
うん、他の冒険者もいるけれど、おねぇと宮本が一緒になって戦っている。
どちらかと言うとおねぇが宮本を気にしながら戦っている感じ。
まさか……。
……まあ、おねぇに狙われた以上どうしようもないな。
そもそも俺は関係ないし。
「スズくん」
なんて、アホな事を考えていたらサヤに呼ばれた。
真剣で覚悟を決めたような表情をしている。
「お願い。私をここに連れて行って」
「「沙耶!?」」
その言葉にゼンジローと朱理の二人が驚いている。
まあ、恋人と親友が戦場に連れて行って欲しいと言われたら誰でも驚くよな。
「勇輝はどうしようもない奴だけど。それでも私の幼馴染なの。魔王を倒すなんて無謀も良いところだし、その前にこのアンデット達に殺されるかもしれない。流石にそれは嫌。あんな奴でも私は助けたい。死ぬ前に連れて帰る。だからお願いします」
……。
…………はぁ。
ここまで覚悟を決められたら断れないな。
ここならすぐに転移できるし。
「いいだろう。ただし、命の保証はしないぞ?」
「うん、わかっている」
本当に覚悟はできているな。
「待て、スズ、俺も連れて行け。沙耶一人を危険に晒すわけにはいかない」
「善治郎」
ゼンジローの言葉にうっとりとするサヤ。
お熱いね。
「だったら私も行くよ。回復役は必要だろうし。それに篠原くん同様、親友が危険な目にあおうとしているんなら放っておけないよ」
「朱理」
うん。
この三人は相性的にもいいだろうし互いに足を引っ張らないだろう。
この戦場じゃ死ぬ事は無いと思う。
「よし。なら覚悟はいいな?」
最終が確認として三人を見る。
問題はなさそうだ。
「シアンは留守を頼むよ」
「ええ。わかりました。みなさんの無事を祈って待っています」
「よし。それじゃいくぞ」
そして、転移を発動させ、戦場に向かった。
この前投稿した短編「ターン制の横並び世界で勇者は虚しくなる」が全然アクセスされていないみたいなのでここで宣伝しとこうかと。
戦闘狂がド○クエのような敵も味方も横並びで戦闘しちゃう世界に召喚されちゃったお話です。ぜひ読んでみてください。
ついでに短編がらみで。
「公爵令嬢はダンジョンマスターに拾われる」のシリーズで他の人の視点の話をそろそろ書こうかなと考えているのですが誰がいいっすかね?
一応、ふんわりとした構想だけど、ダンマスのお世話係のリビングドールのリーナさんか、ざまぁされたマリアさんか、第二王子あたりを考えているのですが。
わからない人はこちらもお読みください。
作者が幸せになったりします。




