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幕間 シエルのペット

「るん♪ るん♪ るん♪」


 シエルはご機嫌だ。


 俺は今シエルと一緒に散歩をしている。


 昼下がりの散歩をしているがシエルは吸血鬼だが真祖なのだ。

 日光が苦手でも何でもない。

 血を吸わなくてもいい。


 シエルは今2歳でもう直ぐ3歳になる。

 ハーフが死ぬと言われている2年はとうに過ぎた。

 俺の『暴食(グラ)』による処置は成功しているのである。

 もっともまだシエルは魔力を制御することが出来ないので処置は続けているが。


 そんなシエルの容姿は、母親ゆずりの銀髪をストレートに伸ばし、父親ゆずりの赤目が光るとても可愛らしい容姿である。

 今や村人みんなのアイドルだ。


「にーにー!あっちいこ!」

「はいはい、あんまりはしゃぐと転ぶぞ」

「はーい!」


 ちなみに俺のことをにーにーと呼んでいる。めっちゃくちゃ可愛い。


 転ぶといけないのでシエルと手をつないで歩く。


「にーにー、あっちになにかいる」


 シエルはそう言うと俺の手を引っ張って走り出した。


 シエルの引っ張られるままに行くと、そこには血塗れの仔犬、いや、仔狼が倒れていた。


 今にも死にそうである。


「ワンワン、うごかないの?」


 シエルは悲しそうにしている。

 その言葉に俺は頷く。


「にーにー、ワンワンたすけるのできる?」


 助けることができるかどうかでは可能だ。

 しかし。


「助ける事は出来るけどその後はどうするの? 今助けても親とはぐれて直ぐにまたこうなるよ?助けるのはかえって可哀想じゃない?」


 少し厳しいが命の責任について教えなければいけない。


「じゃあ、わたしがおせわするの!」

「…本当にお世話できる?飽きたからバイバイなんて出来ないんだよ?」

「うん!ちゃんとおせわする。だからにーにー、ワンワンをたすけて!」


 …はあ、まあいっか。

 自分で何かをしようとするのは大切だし。

 それに俺は15になったらこの村を出て行く。

 シエルは俺にかなり懐いている。

 その時になって遊び相手がいなくなったら寂しいだろうしな。

 両親も許してくれるだろう。

 父さんシエルに甘々だし。


「わかった。ちゃんとお世話するんだぞ?」

「うん!」


 シエルは元気よく頷く。


 さて、治療を始めるか。

 俺は仔狼を解析して治療の魔法をかける。

 ………よし、傷は治った。

 けど、こいつただの狼と思ったけど魔狼の仔だな。


 傷は治ったが魔力がひどく消耗している。このままだと存在を維持することが出来ない。


 とりあえず浄化の魔法で汚れている仔狼を綺麗にする。

 すると、とても綺麗な青銀とでも言うべき毛並みが表れた。


「にーにー!きれー!」


 妹も喜んでいる。


 さて、どうしようか。

 今問題はこいつの魔力の消耗具合にある。

 だったら魔力を補給してやれば良い。


 俺はスキルを駆使して飴のような物質化した高密度の魔力の塊を作り出した。

 それを仔狼の口に咥えさせる。

 口の中で魔力が溶け出して徐々に経口摂取させて魔力を回復させてやるといった寸法だ。

 ちょっと違う気がするが医食同源ってやつだ。


 死ぬ寸前で地にうずくまっていた仔狼は徐々に回復していき、10分もすれば「ワン!」と鳴くことが出来るくらいに回復した。


「にーにー、ワンワンげんきになったの?」

「まだ元気ではないけど助かったよ。」

「やったー!にーにーありがとう!」


 シエルは嬉しそうだ。


 もう少し魔力が必要だろうと思い俺はもう1つ飴型魔力体を作り出した。


「ほら、シエル、これをこの仔にあげて」

「わかった!ワンワンおたべ」


 仔狼は先ほど自身を助けた物と同じ物だと判断したのか、シエルが手のひらに乗せていた飴型魔力体を舌を使って口に含んだ。


「ひゃん!くすぐったい!にーにーワンワンたべたよ!」

「そうだね。この子が食べ終わったら一緒に帰ろうか」

「うん!」

「それで、この子の名前はどうする?」

「なまえ?」

「うん。必要だろ?」

「うーん。にーにーがたすけたからにーにーがワンワンのなまえをきめて!」

「そっか。わかった。うーん、そうだな。今日の青空みたいな綺麗な毛並みだし、ソラっていうのはどうかな?」

「ソラちゃん!いいなまえ!」


 そう言うとシエルはソラの頭を撫で始めた。


「よしよし、ワンワンのなまえはソラだよ」


 その時、シエルとソラとの間に魂の繋がり、魂の回廊が形成された。

 俺はその魂の回廊に偶然介入して俺からソラへと大量の魔力が流れていった。


 魔物を使役する魔物使いはテイムした魔物などに名前をつける。

 それは、名前を付けることによって相手を支配して使役しているのだ。

 その際、普通名付けた相手に魔力が流れる事はない。


 しかし今回行われたのはテイムではない。

 名付けによって魂の回廊が形成され魂深くで繋がりをもつ眷属化なのだ。


 テイムは術者の力次第では強制的に支配出来るが、眷属化はそうではない。

 両方ともに心がの同意がないと魂の回廊は形成されない。

 さらにそれが出来るほどの格が無いといけないのだ。

 ゆえにテイムと眷属化ではその差に大きな差がある。


 テイムは場合であればテイムしていた筈の魔物に殺されることもあるだろう。

 強制的にテイムしていたりするとそういうこともある。

 しかし、眷属は裏切らない。

 なぜなら、魂深くでつながっているのだから。


 今回、名前を決めたのは俺だが実際にソラに名前を付けたのはシエルだ。

 眷属化の特徴として魂の回廊が形成された場合名付けた者から魔力が送られる。


 しかしいくら魔力が膨大といってもまだ2歳のシエルには危ないかも知れない。

 まあ、少し疲れた程度になるんだろう。

 本来は。

 ほぼ偶然だが俺はその回廊に介入してシエルの代わりに俺の魔力をソラに分けたることに成功した。

 おそらく、名前自体を考えたのは俺な事と名付け前に魔力を分け与えたことが原因だろう。

 また、シエルは真祖の吸血鬼だ。

 さらに、ソラにとってはシエルは命の恩人だ。

 眷属化に成功しない訳はない。


 その結果、ソラは走り回れるまで回復した。


「ワン!ワン!ワン!」


 シエルの周りをぐるぐると走り回っている。


「にーにー!ソラが元気になったよ!」

「シエルが名前を付けたからだよ。」

「なまえを付けたのはにーにーじゃないの?」

「俺は名前を考えただけだよ。名前を付けてソラを元気にしたのはシエル。」

「ほんと!ソラ、よかったね!」

「わん!」

「さて、帰ろうか。俺も手伝うけどちゃんとシエルから母さんと父さんにソラと一緒にいていいかお願いするんだぞ。」

「わかった!」


 俺とシエルは手を繋いで帰る事にした。

 ソラはちょこちょこついてきている。




 結果的に両親からOKはもらった。

 母さんは最初ちゃんと世話が出来るのかと言ったがシエルが拙いながら必死に説得して最終的にはOKを貰った。


 父さんはやはりシエルに甘々だった。



 そして、ソラだが、驚いた事に俺から大量の魔力を得た結果、進化したのだ。

 『魔狼(まろう)』から『天狼(シリウス)』へと。

 進化しても子供のままだったがその背から翼が生えた。

 慣れないのか必死にパタパタとしても少ししか飛べないようだ。


 こうして新しく家族が増えた。


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