94 封印魔王
あれから何度か地球とこの世界を行き来した。
17年も経ってるから欲しいものがたくさんあってな。
小説とか漫画とかゲームとか大量に発売されているんだよ。
そういう娯楽類にとって17年という日にちは大きいからな。
俺がいた時代の物は古いので、手に入れるのに少し時間がかかった。
テレビとかパソコンとかの電子機器は最新機種でいいんだけどな。
「罠設置したぞ。こっちに誘導してくれ」
「わかったぁ」
「尻尾切ったよ」
「あっ、死んでしもうた」
そして、今は屋敷で俺とシエルとユウとメーシュでゲームをしている。
四人で狩りをするアレだ。
最初は俺とユウの二人でやっていたのだが、シエルと遊びに来たアルマが興味を示した為、一緒になってやっているのだ。
最近はユウとアルマが泊まり込みでゲームをしている。
ユウはともかく、アルマはすっかり地球の娯楽にハマっているようだ。
「よし、クエストクリア」
「次、何行く?」
「スズ様」
狩猟が完了したので次はどのクエストを受注しようかとしていると、セレスが部屋に入ってきた。
「どうした?」
「ゼンジロー様とサヤ様がいらっしゃいました」
「あー、とりあえずこっちに連れてきて」
「かしこまりました」
優雅に一礼をしてからセレスは部屋から退出し、すぐさまゼンジローらを連れてきた。
「……え、なんでモ○ハンしてるのよ。……え、モ○ハン!?」
ゲームをしている俺たちを見て、サヤは呆れたような目をしたと思ったら、一拍おいてびっくりし始めた。
感情豊かな奴だな。
「おー、スズが保護した人達だね。この前は挨拶していなかったね。ユウ・クラリスです。よろしく」
「えっ、あっはい。よろしくお願いします。えっと、スズくん、彼は?」
「数百年前にお前らと同じところで召喚された日本人だよ」
「数……百年……前」
数百年前と聞いてサヤは驚いている。
まあ、そりゃそうか。
同じ日本人で、さらにそれだけ生きている。
驚いても仕方がない。
「あと、魔王の旦那で勇者だ」
シエルも大概だけど、こいつもいろいろとおかしいよな。
俺なんて転生者で元人間の鬼神の神王だぞ。
……俺も大概だな。
「シエルよ。この者たちはスズの友人かの?」
「そうだよ。ゼンジローお兄ちゃんとサヤお姉ちゃんっていうの」
「ふむ。そこらの下郎という訳ではないのか。ならば妾も挨拶をしなければな」
アルマは立ち上がりゼンジロー達の前までゆっくりと歩く。
「妾は迷宮皇女アルマ・テラスぞ。ひれ伏せい!」
と偉そうにない胸を突き出してどこかで聞き覚えのあるセリフを吐く。
「きゃーー、可愛い!! アルマちゃんて言うのね。私は沙耶よ。沙耶お姉ちゃんって呼んでね」
そして、可愛い子供が好きらしいサヤが感激したようにしてアルマを撫でる。
「む、無礼だぞ。やめんか!!」
「偉そうにしているところも可愛いわ」
口では無礼だぞって言っているが、どちらかと言うと撫でられて嬉しそうにしているので放置しておく。
本当に怒りそうなら即座に止めにはいるけど。
屋敷を吹き飛ばされたりしたらかなわないからな。
「それで、言われた通りに来たが何か用があるのか?」
沙耶がアルマを撫でているのを尻目にゼンジローがそう切り出した。
「ああ、コレをあげようと思ってな」
ドカドカドカと空いているスペースに大量の段ボール箱を出現させる。
「コレは?」
「地球に行って来たからお土産」
地球と言う言葉を聞いた瞬間、ゼンジローと朱理はびくりと震える。
「ああ、それでモ○ハンしてたの」
そして、一通りアルマを撫で終わったサヤは納得したように頷いた。
地球関連の物品がある事に驚いていたようだが、俺が地球へ行き来できる事に関しては然程驚いていないようだ。
確かに、何度か地球に行ける事を言っただろうけど。
こいつもいろいろ変だよな。
「この通りゲームとかの娯楽類とかも入ってるからみんなに持って帰ってやれ」
「いいの? こんなに」
「良くなかったらお前達を呼び出したりしないよ」
「確かにね。スズくんありがとう」
どういたしましてと手を振る。
「スズ様」
と、そこでまたもやセレスが部屋に入ってきた。
「レヴィア様がいらっしゃいました」
「レヴィアが?」
レヴィアが来たと聞いてチラリとアルマを見る。
レヴィアがここに来る理由のほとんどがアルマのお迎えだ。
アルマが勝手に我が家に来てレヴィアが迎えに来るのはいつもの事である。
「な、なんじゃ!? 今回はちゃんとレヴィアに許可をとっておるから妾は関係ないぞ」
「何も言ってないだろ。まあいい。通してくれ」
「かしこまりました」
そして、セレスに連れられてレヴィアがやってきた。
「あら、ユウもいたの。何しているの?」
「地球のゲームだよ。レヴィアもやるか?」
「興味はあるけれど今はいいわ。それよりもスズに用事があるから」
そう言ってレヴィアは付近の椅子に手慣れたように座る。
こいつも結構ここに来るからな。
遠慮がない。
まあ、神王に遠慮を求めるのもどうかと思うが。
「俺に用事?」
「ええ。ちょっと伝え忘れてた事があってね」
軽い言い方だが雰囲気は真剣だ。
マジな話みたいだ。
「えっと、私達帰った方がいい?」
その気配を感じ取ったのかサヤが控えめに言う。
「スズが保護した異世界人ね。まあ、どちらでもいいわ」
「それなら私達はあっちで荷物を納めておくね」
そう言ってサヤは段ボールを空納の魔術で異空間に納めはじめた。
慣れていないからかそれなりに時間がかかりそうだ。
「それで、伝え忘れてた事って?」
「えーと、地図はあるかしら。この大陸の」
「ああ」
俺は地図を取り出して机の上で広げる。
「千五百年くらい前かしら。とある魔王がいたの」
レヴィアは語る。
とある魔王がいた。
かの魔王の力は強大で、オーバースキルを保有するほどの存在だったと。
当然、神王候補であったが敵対はしないものの味方にはならない存在であったらしい。
そして、ある時、とある勇者がその魔王を命を賭して封印したらしい。
「勇者に封印された情けない存在とはいえ、仮にもオーバースキル保持者だったし味方にはならなかったから要注意人物なの。暴れられでもしたら面倒だからね。今は特に。それで、復活しないかどうかその封印地から一番近い私が見張っていたの」
「それで?」
「その封印地っていうのがここなのよ」
レヴィアは地図のとある場所を指差す。
そこは最近、飢饉が激しく難民者が増加している国だ。
主に俺が原因で。
「で、スズがこの封印地から一番近い神王になったから見張りを引き継いでねって訳」
そんな事だと思った。
神王としての仕事はほとんど何もしていないからいいんだけど。
まあ、その神王としての仕事なんかはほとんどないのだが。
「……それで、その魔王が復活しないようにすればいいのか?」
「どちらでもいいわ。復活しようがしまいが。復活したら私達に報告してねって話だけだから。もし、復活して暴れたりするようなら殺せばいいだけだし」
要注意人物ではあるが、そこまで深刻ではないと。
確かに、いくら神王クラスだからといって万能じゃないからな。
神王全員を相手になんてできないだろう。
話を聞く限りそれができるのはルシアぐらいだそうだ。
「とりあえず、復活するかどうか見ていればいいだけ……」
その瞬間、先ほどレヴィアが指差した封印地がある方向。
パールミス王国がある方向から強大な魔力を感知した。
一瞬の事ですぐに収まったが、これは魔王クラスを遥かに超えた魔力反応。
……フラグの回収早すぎないかな。




