91 封印されし存在
想定よりも早く書けたので。
パールミス王国の王城。
そのとある会議室に国の重鎮たちは集う。
彼らの面持ちは沈んでいる。
これからどうするか?
どうすれば生き残れるか?
どうすればいいのか?
答えの出ない疑問に延々と振り回される。
「さて、これからどうするかじゃが」
大臣が会議を始めようとするが、誰一人として口を開かない。
誰もどうするべきは分からないのだ。
何を口にしたらいいのか分からないのだ。
大臣自身もそうだ。
彼らは運がいい。
死ななかったからだ。
グローリアス王国に侵攻していったパールミス軍に所属していなかった。
つまり、スズによって殺されなかったのだ。
貴族にとって武勲は大事だ。
だけど、彼らは様々に理由でパールミス軍に所属する事が出来なかった。
グローリアス王国の侵攻に加わる事が出来なかった。
だからこそ、こうして生きながらえた。
だけど、生きながらえただけだ。
彼ら自身は侵攻軍にはいなかったが、彼らの息子や兄弟などはそこに所属していた。
資金も出していた。
兵も出していた。
それらがたった一柱の鬼によって、王を残して全て死んだ。
存在の痕跡を残さずに消滅した。
死体も遺品も残さずに消え去った。
意味が分からない。
何故、あの大軍がたった一体の存在によって消え失せたのか。
何故、誰も残らなかったのか。
あの大軍を滅ぼしたのは新たな神王?
神王の逆鱗に触れた?
グローリアス王国への賠償金?
そんな金どこにも無い。
作物がどんどんと枯れていっているという報告も入っている。
まさか、神王の呪いでは?
この先、どうすれば生き残れる?
神王はこれ以上の報復はしてこないのか?
怖い怖い怖い。
彼らの頭にあるのは恐怖と疑念だった。
「あの〜」
気まずそうに手を挙げるのはまだ若い青年。
彼は、とある侯爵の年の離れた弟で、侵攻軍に加わった当主である兄の代理で城に登城したのだ。
もっとも、その兄はすでに死んでおり、兄の息子も一緒に死んでいるので実質的に彼が侯爵家の当主出会った。
「何かな?」
「何かないかと思い、禁書庫でいろいろ探したところ、この様な本を見つけたのですが」
そう言って青年は一冊の古びた本をテーブルに置く。
普段なら「こんな時に何をやっているんだ!?」とか「禁書庫に無断で入ったのか!?」と怒られるところだが、彼らにそんな気力は無い。
むしろ、この非常事態、禁書庫という単語を魅力的に感じた。
何かあるのでは? と。
「ふむ。それで?」
「この本によれば、この城の地下には大いなる存在が封印されているようです」
皆が皆、驚いたような顔をする。
本来なら眉唾ものであるが藁にも縋る気持ちになっているのだ。
「大いなる存在とな?」
「ええ。本によれば神王にすら届くと」
「なんと!!」
全員の顔に希望の文字が浮かぶ。
彼らにとっています今現在の最大の困難は新たな神王の存在だ。
神王については分からない事の方が多いが、神の如きのチカラを持っていると言われている。
現に新たな神王はパールミス軍を滅ぼした。
その神王さえいなければ、新たな神王さえ消え去ればこうして怯える必要は無くなる。
上手くいけばグローリアス王国にも再び手が出せるのでは?
彼らの脳裏には栄光の文字が再び浮かぶ。
「しかし、城の地下にそのような存在が封印されているなど聞いたことないぞ」
一人が全員思っていながら口に出さないようにしていた事を言う。
「それについてはかなり信ぴょう性があります。この本にはその封印されている地下への行き方が書かれています。特殊な方法でしか辿り着けないようなので知らないのは無理もないかと。しかし、私はこの本の通りに地下に進む事が出来ました!!」
「「「おお!!」」」
大いなる存在はいるのだ!!
大いなる存在が新たな神王を倒せば!!
そのままグローリアス王国を蹂躙してくれれば!!
「しかし、この本には決して封印を解く事なかれと」
青年は心配事を口にする。
その記述が最も怖いのだ。
「大丈夫だ。すぐに、魔術師を呼んで封印を解かせよう。皆様もそれでよろしいかね?」
青年を除く全員が頷く。
彼らは憔悴していた。
だから、希望の光に縋ってしまう。
都合の良いように考えてしまう。
その大いなる存在が自分達を害するなども思いもしないのだ。
大いなる存在は自分たちに都合のいい存在だと決めつけてしまうのだ。
封印されている意味も考えずに。
それが、最大の災厄を呼ぶとも知らずに。
ほぼほぼ第六章は書き終わったので投稿していこうと。
今章は1、2日の間隔で一気に放出すべきかいつも通り週一の方がいいのか悩んでいます。
どちらの方がいいですかね?




