表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/138

幕間 音無沙耶とケーキバイキング 前編

茨木鈴くんが生きていた時の話。

沙耶さん視点です。

「朱理、音無」


 授業が終わり、朱理と話していると、とある人物に呼ばれた。

 多分、いや確実にこの学校で最も有名人である茨木鈴くんだ。

 容姿、頭脳、運動能力。

 ありとあらゆる面でパーフェクトを通り過ぎた超人さんだ。

 それこそ、少女漫画なんかで出てくるヒーローよりも。

 そんな彼はとにかくモテる。

 彼がモテなければ人類は滅んでいるであろうぐらいにモテる。

 この学校の女子生徒の大半は彼の事が好きなんじゃないかな?

 女の先生も彼に熱い視線を送っている気がするし。

 ああ、極一部の男子も似た様な視線を向けているわね。

 あの容姿なら仕方ないかもしれないけれど。

 茨木くんも気の毒ね。


「あ、鈴くん。何かな?」


 そして、私の隣にいる親友である朱理も彼の事が好きな人の一人だ。

 彼に呼ばれた事を嬉しそうにしている。

 私?

 私は恋愛的な意味では別に。

 友達としては好きだけど。


「放課後暇か?」

「うん! 暇だよ暇暇」


 流れ的に放課後に遊びましょ、てな感じだったので朱理はまくしたてる様に暇だと連呼する。

 よっぽど茨木くんと遊べるのが嬉しいのね。

 それにしても珍しいわね。

 私達が誘う事があっても、茨木くんから誘ってくるなんて。


「音無は?」

「私も暇だけど……」


 だけど、と一瞬考える。

 私が適当に断れば、茨木くんと朱理の二人のデートになるのではないかと。

 私としては朱理の恋路を応援したいし。

 あー、でも善治郎もいるかも。


「そっか、よかった。二駅先にケーキバイキングやっているお店が出来たんだ。そこのチケットあるんだけどよかったら一緒にいかないか?」


 ケーキ!!

 バイキング!!

 食べ放題!!

 私は甘い物が好きだ。

 もちろんケーキは大好物だ。

 定番のイチゴのショートケーキはもちろん、チーズケーキやチョコレートケーキ。

 モンブランやタルト。

 ロールケーキやバームクーヘン。

 どれもこれも大好き!!

 それが食べ放題!!

 素晴らしい!!


「ぜひ行かせて貰うわ!!」


 ふふふ。

 今から放課後が楽しみだわ。

 え? 朱理の恋路の応援?

 そんなのケーキの前には無力なのよ。

 早く放課後にならないかしら。


「じゃあ、駅前に集合な」

「学校からそのままいかないの?」

「俺はちょっと準備があるから」


 そう言ったところで予鈴のチャイムが鳴る。


「じゃあ、また後で」


 そして放課後。

 私は朱理と駅前で茨木くんを待っている。

 先ほど連絡があり、茨木くんはもうすぐ来るそうだ。


「おまたせ」


 朱理と喋っていると、鈴を転がす様なとても綺麗な女の人の声が聞こえてきた。

 誰かと待ち合わせをしていたのだろうか。


「あれ、聞こえていない? おーい、朱理、音無」

「え、私?」


 私達が待ち合わせしているのは茨木くんであって、女の人ではないはずだ。

 そして、その声の主を見て私は絶句した。

 女の子にして多少背は高いだろうが、とんでもない美少女がそこにいた。

 それこそアイドルなんか目じゃないくらい。

 そして、その子は私達と同じ制服を着ていた。

 こんな美少女うちにいたっけ?


「鈴くん?」


 そう思っていると、朱理は少し目を見開いてそう言った。


「そうだけど」


 なん……だと……。

 この超絶美少女は茨木くんだというの!?

 いや、確かに言われてみれば茨木くんだ。

 顔なんかもう茨木くんだ。

 うわぁ。

 マジかぁ。

 なんなのこの人!?

 完全に超絶美少女じゃない!!

 くそぅ!! くそぅ!!

 男の人のくせに!!

 確かに、中性的な顔立ちだし、綺麗だし、女装とかすれば似合いそうだなあと思っていたけれど。

 まさか、ここまでなんて。

 絶対に私よりも可愛いじゃない。

 なんなのこの敗北感は。


「……なんでそんな格好してるのよ」

「え、だってこれ」


 茨木くんは鞄から一枚のチケットを取り出す。

 それは、これから行く予定のお店のチケットであった。

 そして、そこには三人用と女性限定と書かれていた。


「この格好をすれば店に入るのに何の問題もない」


 問題、問題。

 いろいろと問題あるんじゃないかな。

 というか、そうまでして行きたいのか。

 まあ、女装をすんなりと実行して何の問題もなさそうにしているところが茨木くんらしいといえばらしいわね。


「チケット三人用でよかったよ。四人用とかだったらもう一人誘わないといけないし。ゼンジローとか絶対無理だもん」


 うん。

 善治郎が女装とか絶対に無理ね。

 絶対にバレる。

 あと気持ち悪い。

 直視できる自信がないわ。

 チラリと朱理を見る。

 朱理は茨木くんの事が好きだ。

 大好きだ。

 そんな大好きな人が何の問題もなさそうに女装しているのだ。

 朱理がどう思っているのか不安になる。

 もしかしたら幻滅してしまうかもしれない。

 朱理の茨木くんへの恋心が消えたら彼女に残るのは罪悪感。

 それは朱理を苦しめるかもしれない。


「鈴くん……キレイ」


 朱理はうっとりとした表情で茨木くんを見ている。

 ……この子は茨木くんならなんでもいいのかしら。







なんと既に後編が出来上がっているという。

明日にでも投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ