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第一章 砂塵の都 第六話 二人の世界 前編

黒剣ネーリアとは何か? と問われればこの剣に触れる機会の会った研究者達は口を揃えてこう答えるだろう。


馬鹿でかい剣のレプリカだと…


彼らの言い分には訳がある。通常、遺跡から発見される武具は大抵長い年月の間に劣化し、殆どは使い物にならないが稀にネーリアのようにちゃんとした形を残した物が見つかる場合がある。

それらは特殊な効果を持っている武具であったり魔力を込めると何かしらの魔法が発動したりする魔具だったりと希少な代物のが多い。

他にも特殊な魔法が掛けられた装飾品や防具、使い手が限られてくるが精霊の力を宿った物なども少かれ存在している。

このような武具に魔法的な効果や術式を永続的に付与する技術は研究が進み何とか似たような物を作り出す事が出来ているのだが再現率はオリジナルの四割をいけばいい方と余り芳しい結果を得られてはいない。

だがネファリウスで主流である陣式魔法の特性を考えればどちらにせよかなり貴重な物だろう。何しろ魔力(又は、精霊の力)を込めるだけで発動するのだからその有用性は推して知れる。

これらの物はオリジナルは勿論の事、例え模造品であろうとも恐ろしく値が張り、オリジナルならば例え大富豪でもおいそれと購入出来ない値段が付いている。

正に冒険者や軍人、騎士など戦闘に関わる達の垂涎の的になっているのだ。

ネーリアを調べた研究者はそういった遺物に施された術式を専門にしている者達だった。

しかし黒剣は魔法や魔具による調査工程を何十回と繰り返したのにも関わらず全くの無反応。研究者達は色々と期待していた分、一気に熱が冷めたのか後はおざなりな記録を付け、保管庫に放り込んだのである。

調査結果の他に剣のレプリカだと思われた要因はやはりシュウと出会い契約を結ぶまで鞘を彼女がその身から外せなかった事も理由の一つであろう。

彼らにはネーリアは剣の形を模しただけの物体にしか映らなかったのである。


……少し“もしも゛の話をしよう。

ネーリアが別な方面、そう魔法技術的なものではなく、完全に遺跡だけを調べている者達…、それもギルガ・アスを専属にしている研究者の元に運ばれていたなら話は違ってくる。そうなればネーリアはおそらく研究施設から出る事など到底叶わぬ身となっていた事だろう。

何故ならば彼女の刀身や鞘に彫られた幾何学模様はギルガ・アスの遺跡の要所に刻み込まれたものに酷似し、何より黒剣を形作る物質はその遺跡を組成している未知の物質と同様のものであるからだ…。


……本当にそうなっていたのなら彼女は彼に出会う事なく永遠に一人ぼっちだったかも知れない…。




此処で話題を最初の問いに戻そう。黒剣ネーリアと問われれば、世界で“彼女”を知る二人の人物のうちの一人、シュウとネーリアの保護者と言ってもいいミリウス神国にいるある女性は優しく微笑みながらこう答えるだろう。


「我儘で素直になれない子供っぽいところがあるけど、とても良い子よ? シュウ君も少しはからかうの止めて優しくしてあげればいいのに…」


と最後はいつもの二人の関係に少し苦笑を交えながら…。

そしてもう一人、シュウ・フォレストは名乗る真っ黒黒助はというと…


* * * *


「相変わらず傍迷惑な奴だな、お前は!」


目の前の存在が放つ、己を搦め取ろうと無数に伸びる物を素手で叩き落としながら後ろに飛ぶとシュウは常日頃からネーリアに抱いている不満をぶちまけた。


「ふんっ! 何とでも言うがいい! 我がお主に受けた屈辱を考えればまだ足りぬくらいじゃっ! それと何でも言う事を聞くと言ったじゃろうが甘んじて受けるのが道理であろう!」


「男には許容出来る事と出来ない事があるんだよっ! クッ!」


飛びのいた先に狙い済ましたかの様に別の“それ”が間髪を入れずに左右から迫り、シュウは舌打ちをすると身を低し、前方へと駆け出した。

彼の頭の上をギャリギャリと硬質な音を起てる物が猛スピードで通過していく。

何とか体勢を立て直したシュウは悠然と構え、こちらを見ているネーリアにキツい視線を送った。


「今のは危なかったのう、シュウ。いずれにせよ時間の問題、諦めて罰を受けたらどうじゃ?」


「断る。こんなところで一生もののトラウマなんぞ抱えたくないからな」


その言葉にネーリアの顔にピキッと亀裂が走る。ぷるぷると震える彼女の体からは抑え切れない怒気が立ち上ぼり、それに呼応するように足元まで届く長い黒髪が意思を持った様にゆらゆらと動き出す。


「……それを先にしたのは貴様じゃろうがああぁぁっ!!」


ネーリアはシュウの言葉に一際高い怒号を轟かせるとさっきまでの比ではない数のそれをシュウの視界中に展開させた。

彼女の意思に応え虚空に生み出されたそれらは、身をくねらせ互いに擦れ合い先程と同質の耳障りな音を奏で始める。

シュウはその様子にヤベ、地雷踏んだな、と呟くと冷汗を一筋流し逃げ道を探そうと周囲を見渡す。

しかし、此処はネーリアの世界と言っても過言ではない場所だ。そんなものあるわけがない。


「ま、待てネーリア!」


「聞く耳持たぬわ! こうなれば貴様の言葉通りに一生もののトラウマをその身に刻み込んでくれる!」


ネーリアがそう咆えると身をもたげた大小様々な“鎖”が空気を切り裂く凄まじいまでのスピードでシュウに殺到する。


「ぬおおおああぁぁっ!!」


その有様を目にしたシュウは切羽詰まった情けない叫び声を上げると後方へと転進し、脱兎の如く逃走を開始する。


(厄日の次は悪夢とは… 酷過ぎるだろう! もはや神は死んだっ! というか俺が殺す! ネファリウスめ! 殺りに行ってやる!)


パナタスに着いてからずっと酷な状況にいた為か、今の現状に色々と壊れ可哀相な精神状態に陥ってしまったのか…。

心でそんなわけの分からない事を大声で張り上げながら走り出したシュウの瞳から一筋の熱いものが流れ落ちていった…。

時間を三十分程巻き戻そうと思う。シュウがこんな状況に至るところまで…。



ベッドに身を横たえ、意識が眠りへと落ちたと思った瞬間、瞼の裏に存在する暗闇が唐突に切り替わりある風景をシュウへと映し出し始める。

その場所はある一つの部屋。四方の壁、床、天井に至るまで“何も存在しない”という言葉を連想させられる程に病的なまでの白に塗り方められた広大な部屋。シュウはそれが何であるかを認識した時には彼はもうその部屋に一人立ち尽くしていた。


「此処に来るのは四日ぶりか…」


シュウは周りを見渡しながらそう一人ごちる。部屋の大きさは下手するとそこらの王宮のダンスホールより広い。だが、此処には何も無かった。見上げなければ視界に捉えられない天井。遥か先に存在する部屋の壁。それら全てが真っ白に染まっている。


(それにしても本当に何もないな…)


人が知覚出来る範囲でここまで“無”というものを感じさせる場所は他にあるだろうか?

少なくとも自分は此所以外に思い浮かばないな、とどうでもいい事を考えながら彼は目的の物を探そうと歩き出し始めた。

しばらく歩みを進めて行くと急にシュウは立ち止まった。部屋の中央と思われる場所にポツンと一つの黒点が現われたからだ。それが彼の目的の物なのかシュウはじっとその黒点を見つめている。

次第に黒点に変化が訪れる。点から、円へ、そして球体へと。変化するごとにその大きさを増してゆくそれは最終的に家一つを丸々飲み込むまでに膨張し、心臓の音を彷彿とさせる不気味な鳴動を放ち始める。

それはどんどんと速くなり間が存在しない程の間隔で音を鳴らすと、対応するように黒い太陽とも見える球体が次第に小さく収束していく。

すると収束してゆく黒球の中に先程まで存在していなかった物が現れ始めた。

最初に見えたのはシュウの身の丈を三倍は優に超える長大な六角形の立法体。黒球からはみ出すように現われた漆黒のそれの表面にはびっしりと複雑な幾何学模様が刻まれ、それを形作る線の一つ一つが暗く明減を繰り返している。

何かの石碑を思わせるそれはシュウの目に映る正面の三面の内、真中の部分にはだけは文様が刻まれておらず、そこだけは黒く滑らかな無地のままであった。

次に現われたのは台座と思しき部分、石碑と同様の色に染め上げられたそれは緩やかな階段状の段差を持ち、中央に座する石碑に向かい砂山のように盛り上がり、立方体を中心として広範囲に円状に広がっている。

また段差の最下部からは真っ白な床を罅割るように木の根を思わせる黒い歪な線が不規則に放射線状に伸びていた。

そして最後に… もし、こんな物が現実世界に存在していたのならばネファリウス神国の司祭直々に封印呪法をかまされるであろう、どうにも邪教チックな祭壇としか表現しようがない物を出現させた、今では人間の子供サイズに縮まってしまった黒球がフヨフヨと祭壇の前と降り立ってゆく。

ちょうど石碑の前で止まったそれは一瞬、波紋のように波だったかと思うといきなり弾け飛び、小さな黒い粒子をばらまき雪のように辺りへと降らせ始める。

そして、先程まで黒球が在った場所には……一人の幼い少女が立っていた。

背はどうにかシュウの腰より少し高いぐらい。透ける様な白い肌に足元まで届く絹のような滑らかな光沢を放つ美しい黒髪を持ち、髪の所々が心なしか淡く光ってるように見える。

体には黒い布を胸の部分に晒のように身に着け、腰元からは同じ色の布が膝の辺りまでまるでスカートのように巻き付けられている。

普通ならばみすぼらしいと感じられる服装なのだが彼女の妖精と見紛える可憐な容姿と相俟ってか、より神秘的な印象を醸し出していた。

しかし、ある要素が彼女の備える魅力を半減させてしまっている。

それは今の少女の表情だ。台座の高い位置からシュウを見下ろしながら、彼女は不機嫌そうに顔を歪めていた。

意思の強さを投影した宝石のような輝きを放つ黒い瞳にもどこか不穏な色がチラチラと垣間見えている。

ムスっとした様子でジロリとシュウを睨み付けていた少女は口を開くと突如大声で捲し立てた。


「遅過ぎるぞ、シュウ! どれだけ我を待たせたと思っておる! お主今まで何をしておったのじゃ!」


シュウの愛剣に宿る少女は顔を真っ赤にしてそんな事を喚くが、シュウは憤懣やるかたないといった黒い少女を見ると、気怠げな口調で喋り始める。


「おいおい、少し来るのが遅れたからって一々怒鳴らないでくれ、ネーリア。こっちはこっちで色々大変だったんだ。………そう色々と、な」


最後の部分だけ妙に感情を込め、暗い影を背負いながら話す彼にネーリアは訝しげな表情をするが、シュウの事情なぞ自分には関係ないという思考に行き着いたのか彼の意見を一蹴する。


「喧しい! 見苦しい言い訳なんぞ聞くたくもないわ! …大体のうシュウ、前から思うとったんじゃがお主には我の契約者としての自覚が足りん!」


そう言うとネーリアはシュウを指差し、更に言葉を重ねた。


「我の契約者ならば全てにおいて、何よりも我を優先するのがお主の務めじゃろうが! それをお主ときたら、いつもいつも…」


何かのスイッチが入ってしまったのか、シュウの日頃の態度に延々と文句を垂れ流し、それに連れてネーリアの怒り度合いがより一層増してゆく。おそらくその時の情景も不満を言うついでに鮮明に思い出してきたのだろう。


(はぁ、疲れる…)


シュウは文句を吐き続けるネーリアを視界に捉えながら、いつ終わるやも知れない彼女のそれに気取られぬよう心の中で溜息を吐き、そっと肩をを落とした。

この白く閉ざされた部屋は黒剣の内に存在する、契約者であるシュウにしか訪れる事の出来ないネーリアの世界とも言える場所である。

彼が眠りに落ちる時、この黒い少女はシュウの意識を時折、此所へと強制的に連れ込んでは朝が訪れるまで暇潰しの相手をさせたりするのだ。

話し相手ぐらいならまだいい。最悪な時、つまりシュウがネーリアをからかい、彼女の逆鱗に触れた場合に報復として呼びだされた時なのだが、それは、もう何と言えばいいか…。

ネーリアが想像から生み出した、君、何処の星出身? 少なくとも太陽系にはない星から来たでしょ? と尋ねたくなるような、今日び怪奇小説にも登場しない外宇宙生命体をけしかけてくる。それはもう大量に…エンドレスで…。

流石ネーリアの世界と言うべきか、彼女の意思次第でそういった無茶がまかり通るらしく、シュウは今まで散々な目にあってきている。まぁ、そんな目に遭ってもネーリアに対する態度を改めないシュウもシュウなのだが…。

…ちなみに余談だがネーリアが作り出した生命体。外見的にまだ生物の原形を留めているモンスターの方がまだましと言いたくなるリアルホラーの申し子達は彼女の基準からするととても可愛いらしいとの事。

それを聞いたシュウは常人では到底理解出来ぬ彼女の趣向に戦慄し、彼女との契約解除を本気で考えたという。

シュウは己の行いに対し、復讐される時は勿論の事、只の暇潰しの相手として呼びだされる時も此所に来る事を好ましく思っていない。

この世界で過ごす時間はシュウにとって寝ている時に見ている夢という感覚ではなく、そのまま現実の延長として存在している。

確かにこれが終わり目覚めれば疲労は多少なくなり、眠気も飛び、普通に睡眠をした時と同じ状態だ。肉体的には全く問題ないだろう。

では何故、彼がこの場所に連れ込まれるのを忌避するか、別にネーリアの相手が嫌とかそういったものではない。もっと根本的な部分だ。

…考えてみて欲しい。この世界おいてシュウは現実と同じ意識のまま、同じ時を過ごしている。

つまり、彼は眠りたいと思い寝ようとしたら強制的に眠気をさ覚まされ、意識的にはずっと起きっぱなしの状態を延々と強要されているのだ。

一日ならまだいい、それが二日、三日……と続いていったら?

いくら現実世界に回帰した際に眠気がなくなるとはいえ、人間の三大欲求である睡眠という行為を生まれてから普通に行ってきた者にとって自意識の覚醒状態が延々と続くというものは精神的にかなりこたえる。

このような理由から此所に来るのはかなり御免被りたいシュウは何度か彼女を説得し、やめさせようとしたのだが、少女はまるで意見を聞入れてはくれず、大体週に二、三回の頻度でこの強制連行を行っている。

腕を組み日常的に行われる“呼び出し”について難しい顔になりながら、ネーリアの話に耳を傾けていたシュウは文句を垂れ流すだけで一向に話を進ませない事に痺れを切らしたのか声を掛けた。


「……じゃから、お主は我をもっと敬なければならんのじゃ。あの時だって我がいなければどうなっていた事か…」


「あー、ネーリア。ちょっといいか?」


「ん? なんじゃ?」


「いや、こちらとしては昼間の約束の方をさっさと済ませてしまいたいんだが…」


「おぉ! そうじゃった!」


シュウの言葉を受け、ネーリアはポンッと軽く手を叩く。


「お前もしかして忘れてたのか?」


「そんな訳なかろう。何をさせるか気付かれないようにお主との回線を断ち切ってまで、わざわざ準備しとったんじゃからな」


余計な知恵つけやがって、と言いたげに顔を歪めたシュウは嫌な事はさっさと終わらせたいという態度を隠しもせずにネーリアに話し掛ける。


「じゃあ、俺は何をすればいいんだ? 何でも言う事聞くとは言ったがちゃんと実現出来る範囲にしてくれんとこっちも困るぞ」


「フフン♪ その辺はちゃんと考慮しておるから心配するでない」


得意げに凹凸が殆ど見えない薄い胸を張る黒い幼女の姿に言い知れぬ不安が体に押し寄せて来るの感じたシュウは後ろへと一歩足を下がらせる。


「最初は犬の真似でもさせて見ようとか、我の魔法の的にでもなってもらおうかと思ったんじゃが…」


ネーリアは片手をゆっくりと上げていく。


「それじゃと何かしっくりこなくての。色々悩んでおったのじゃが、しばらくして天啓の様に前にお主が言っておった言葉を思いだしたのじゃ」


「…………」


シュウは悪寒を伴い、がなり起てるように警鐘を鳴らす己の勘に従い、もう一歩後ろに下がると、どんな状況にも対応出来るよう四肢に力を込めた。


「確か“目には目を 歯には歯を“ じゃったかの。…シュウ、お主には我と同じ目に遭ってもらう。…よいな?」


ネーリアはそう言い放つとギラリと目を光らせパチリと指を鳴らした。すると黒き祭壇の前、真っ白い風景の中に滲み出るかのように無数の鎖が現われる。

指揮者の様にネーリアがシュウに指を向けると鎖の先端が彼へと一斉に照準を定めた。


(ネーリアと同…じ…目に? この俺が?)


シュウはギルドでの鎖に搦め捕られた彼女の姿を思い出す。手足を拘束されて瞳を潤ませながら白い肌を桜色に染め上げて、怪しく蠢く鎖から送り込まれる感覚に時折、身を震わせる少女の姿を。

それを自分の姿へ置き換え…て……いや…それは…何と……言うか……余り…にも………………………………気持ち悪過ぎるっ!!


「ククク… 動くでないぞ、シュウ。元はと言えばお主が「却下だっ!!」」


いざ約束を果たさせる為に、具現化させたそれをけしかけようとした瞬間、間髪を入れずに放たれたシュウの怒声にネーリアの声をかき消された。


「ふざけるなよ、ネーリア。お前それ本気で言ってるのか?」


険しい表情で自分を睨むシュウの先程の台詞とその態度に彼の意図を悟ったネーリアは面白くなさそうに顔しかめる。


「…いきなり何をキレてるのか知らんが、そのお主の物言い、まさか約束を反故にする気なのか?」


「あぁ。そう取って貰って結構だ」


きっぱりと言い切るシュウにネーリアは一瞬だけ悲しそうな表情になると、俯き、


「……〜〜〜」


と誰にも聞き取れぬ程小さな声で口の中で何事かを呟いた。

シュウはその仕草に対し、僅かながら疑問を抱くが、頭に血が昇っている為か些末事と切り捨て、ネーリアが次の動きを見落とさないように彼女の一挙一動を注意深く観察する。


「……もういい。お主が約束を守ると思っておった我が馬鹿だったのじゃ!……ゆけ!」


顔上げたネーリアはそれだけ言うと、虚空に浮かぶ鎖達に号令を下す。主の命を受けた彼らは、無機物である事を感じさせないたまるで蛇に似た生物的な動きでシュウの元へ空中を這うようにして進み出した。

こうしてシュウにとってはある意味、男としての尊厳を賭けた熾烈な闘いが始まりを告げたのである。


【後編へ】

六月には更新できそうと言った挙句、ここまで更新が遅れてしまいまことに申し訳ありませんでした。


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