2.泣かないでくれ
新しい朝が来たー
希望のあーさーだ!♪
なんて思わず口ずさんでしまうほど私の気分は明るい。
まじ、超ハッピー。
え、なんだって?
余命僅かな人が、幸せだとか言うな?
親が可哀想?
……知らんがな。
幸せなもんは幸せなんだ。
誰が何を言ってもこの命は私の命だ!親など知らぬ。
――昨日、病院から家に帰ったらお父さんが飛び出てきて抱きつかれた。
お母さんいつの間に連絡したんだろなんてぼーっと考えていたら、お父さんが泣き出した。
普段、冗談みたいな馬鹿げた話をするお父さんが私に抱きついて泣いているなんて……。
私ってこんなに愛されてたんだ。
なーんて、普通なら思ったりするんだろうか?
感動したり、『死にたくない』って強く思ったり、『やっぱりもっと生きたい』なんて心変わりしちゃうのかな?
でも、私の想いは相も変わらず『死ねるなんてラッキー♪早やくこの世から去ってしまいたい!』なんだよねぇ。
この、泣きじゃくってるお父さんは自分の娘がそんなこと思ってるなんて知らないんだよな。
なんだか、可哀想に思えてくるわぁ……。
あ、ちょっと待って。
お父さんにつられて、お母さんまで泣き出した。
……お母さん?貴方どれだけ泣けば気がすむの!?さっきも病院で号泣してたよね?
まぁ、そんなことはおいて、 この抱きついて泣いてるお父さんとつられて泣き出したお母さんをどうしようかとまじ悩んだ。
そこの家族愛素晴らしい見たいな目で見ている君!
娘のために泣いてるのにサイテーって思ってる君も!
あのね?私もね流石に感情がない訳じゃないのよね?
だからね、悲しんでくれるの嬉しいよ。
でもね。
こいつら、玄関で泣いてんの。
玄関で泣かれるのとね、色々と困るのよ。
一つ。例を挙げるとすると、隣に私の幼馴染が住んでるのだ。
しかも、かなり心配性のうざったい幼馴染が――
あぁ、なんだか嫌な予感がする。
「ゆう!なにかあったの!?凄いうめき声が聞こえた……ん、だけど?」
勢いよく勝手に玄関の扉を開けた幼馴染み――七斗は私の両親が私に抱きついて泣いている姿を見て逃げようとした。
逃すまいと、すかさず服を掴む。
そして口パクで「助けろ」と訴えた。
七斗はなにか諦めた顔をして「わかった」と言ってくれた。
そのあとのことは、言わないでおこう。長いから。




