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創作論:書けない病のあなたへ

1.ハードルを下げてみよう


 こだわればこそ筆が重い。

 書き出すまでに時間がかかる。莫大なパワーが要る。

 向き合っている苦しさに溺れてしまいそう。


 わかります。よーくわかります。

 それは必要な過程でもありますから、否定されることはありません。本命作品に関してはその通りに一刀入魂をぜひ貫いてください。


 けれど、筆の重さのあまり、具体的な出力(創作の身動き)が止まってしまっているようであれば。

 それはそれで問題になります。技量が向上してゆくためには訓練の“量”も必要です。いまあなたが本命作品に手こずっているのであれば、はっきり言ってしまいますと「地力が足らないから」です。その厳然たる事実を受け止められるならば、改善するための工夫にも平行して取り掛かってみましょう。


 では何が必要か。

 ぶっちゃけます。駄作の量産です。

 人間の神経と肉体とは使うほど太くなっていくものですから、スムーズに高速で動かしたいなら行為それ自体の“量”を稼ぐ必要もあるわけです。

 それに、創作の足を引っ張る要素とはセンスや言語能力だけとは限りません。たとえば、パソコンで文章を打ち込まれているならば、そのキーボードタッチワークが遅い、慣れていない、ブラインドタッチできずいちいち画面と手元を往復しているせいで疲れやすい、それらのためにせっかく湧いたイメージが結実しないまま逃してしまいやすい。そんなことだって、実際上は「あなたの実力の内」に含まれてしまうんです。

 これもたとえば、ピアノの練習の初期段階で「運指」の修得があるわけですが、音感だとか楽譜の理解だとか指先の器用さだとか以前、手指の「筋力」が足りていないとどうにもならないという厳然とした壁があります。そのため、よほど元から適正ある生活を積み上げてきたのでなければ、一定の期間を意識的に「筋力トレーニング」に割り当てる必要があったりするわけです。

 文章出力において成り立つ創作活動(つまり、物書き志向)としても、同様のことを複数の面で言及できるでしょう。

 つまるところは、急がば回れということです。

 いま上手くいっていないのなら、困っているのなら、立ち返ることも役立ちますよ、と。


 また、「タンクが溜まりすぎても蛇口が詰まる」といった性質もあるでしょう。

 本命作が進まない行き詰まりの期間であっても――あるいは、だからこそ――創作のことを考え続けているはずです。そうすると、使う場面までたどり着いていない発想やアイデア、作中キャラ同士の掛け合いシーンなどがものすごい量、見えないところに積み上がっているはずです。

 これを俗に「塩漬け状態」だとか「HDDの肥やしになっている」だとか呼ぶこともありますが、これが溜まった状態は健全といえません。なぜなら、一つの本命作品に織り込めたくなってしまう要素が膨大化するからです。

 ただでさえ取り扱いが困難化しているところに、さらに抱え込もうとして、上手くいくわけがないですよね? この状態に対して必要な態度は切り捨てる整理整頓です。しかし、せっかく思いついたことをただ捨てろといっても、それは容易ではありません。そもそも未練が少しでも残ればそれは内でくすぶり続けるだけなので、煮詰まり方が形を変えた(ように見える)だけで、解決になっていません。

 吐き出してしまう必要があります。そしてここでいう吐き出しとは、公表すること、つまり「小説家になろう」サイトにおいては作品として投稿してしまうことです。

 投稿してしまったなら、もう取り返しがつきませんし、己の手から切り離されたものとして一定の区切りがつくわけです。これもはっきりいってしまいますと、スッキリします。


 駄作ですから赤っ恥はかきます。つまらないものはつまらないと酷評されもするでしょう。

 でも、つまらないとか、面白味の高低をもって投稿それ自体を否定されなければならないような筋合いは、どこにもありません。

 完成した立派な作品だけを読みたいならばちゃんとお金を出してプロ作家の作品を手にすればよいのです。

 「小説家になろう」サイトは素人趣味作家のための場ですから、練習過程の未熟な品をさらけだしたとて、何をはばかることもありません。むしろ練習者同士の意見交換などに役立てればよいのです。

(なお、“読みに来ている”方々は「小説を読もう!」サイトの利用者です。この区別と分別は必要です。)


 ちなみに、出力量を増やしたからとてアイデアが尽きてしまうような事態を恐れる必要はありません。思いつきなんてものはしょせん妄想の産物ですから、後からいくらでも湧いてきます。

 思いつきは誰にでもできるんです。生み出す立場としての壁は、それを形にする工程です。

 だからこそ出力量を増やして練習経験(脳神経へのフィードバック学習)を稼いだ方が効果的ですし、そうして出力神経が太くなっていけばアイデアはむしろどんどん閃くようになっていきます。これは成功した先人方がよく語られていることなので気になる方は調べてみてください。



2.具体的な例


 前述の「ハードルを下げる」という取り組みにおいて、ここ「小説家になろう」投稿作品の中にわたくしあんころ(餅)が強く尊敬させていただいている先例があります。

 それは、「箇条書き転生」さん(https://ncode.syosetu.com/n6985cf/)です。


 これでいいんですよ。

 最低限というなら、これでいいんです。素人が楽しみでまず書いてみるということは、これで書いていて楽しかったなら、成功なんです。

 批判の予測は容易だったでしょうになおもって世に先んじて送り出された作者さまには頭が下がる思いです。この先例を知っていられたから、自身の煮詰まりとそこからの脱出に一つの救われる見地がありました。


 もしこれをご覧になっているあなたが、まだ初めて書いてみようというところでその取っ掛かり方に迷っていらっしゃるなら、「箇条書き転生」さんに倣われてみてはいかがでしょうか。

 繰り返しますが、これでいいんです。

 書けないままでいるより、これでいいから書いてしまって投稿する。それで一歩進むのですから、その行動は経験として価値があります。なお、もし文句つける人が現れても、それは単なる勘違いと思い込みにすぎませんから相手にしなくていいです。(あくまで作品の存在自体を否定するような言に対してであって、つまらない面白くないといった“感想”であればそれは正当です。)


 ただし、個人的に強力にオススメさせていただく「箇条書き転生」さんではありますが、これにも一つだけ欠点があります。

 文章の形態が、一般に小説として許容される範囲を逸脱してしまっていることです。

 この点をカバーするため、僭越ながら拙作として試させていただいたものが「異世界ヒキニートにロボ娘さん」(https://ncode.syosetu.com/n9789ci/)です。

 文章作法の細かい点に関して、崩し方をギリギリに攻めつつも、壊していない形にこだわっています。

 もしご自身が書かれる立場として文章作法や現代小説文の構造論に関して調べてみたご経験ございましたら、よく見比べて分析してみていただければと存じます。少なくともあんころ(餅)が知る限りでは損なっていないはずです。(といいつつ大外れだったらごめんなさい。)

 とはいえ、それでも一点だけ怪しいグレーゾーンがあって、それは波線「~」を複数重ねて使うという形です。作法上、これの行儀はよくないです。しかし商業ライトノベルなどでは行われている作品も珍しくありませんので、ここでは“アリ”の範囲として扱わせていただいています。


 また、小説作品ではなくエッセイになってしまいますが、もう一つオススメさせていただきたい先人例がございます。

 それは、「俺は、せっかくだから〈side ○○〉〈side out〉形式の小説を擁護するぜ」さん(https://ncode.syosetu.com/n3823bk/)です。

 素人が趣味の楽しみとして創作に取り掛かることに対して、踏み入った洞察を示されておられ、こちらにもあんころ(餅)は敬意を払わせていただいております。

 お読みになられたことない方は、ぜひ一度目を通してみてください。「上ばかり見上げていないか」「足元を見失っていないか」「理想に取りつかれて、自身ではなく他者にまで押しつけ求めてしまっていないか」こうしたところに反省の観点を共有していただけるような方であれば、考えに得るべきものを拾っていただけるかと存じます。



3.気楽でいいのよ


 ということで、まとめた言葉としては「気楽でいいのよ」です。

 もっと、気楽でいい。創作っていうのは本来楽しいものなのですから、それを趣味として休日や余暇の時間を使うということは、楽しむこと第一であって誰はばかることありません。

 果たして今、「この一文」が書いていて楽しいか。これが原点ではないでしょうか。


 ただし、当然にわきまえて分別すべき一線として、プロ作家を目指されている方や出版社大賞などへの応募に取り組まれている方は、この限りではありません。

 これは細かく論ずるまでもなく自明な事柄と存じますので、この一言断り以上に触れるつもりもありません。


 とはいえ……。

 創作は、芸術です。芸術は、論理で割り切れるものではありません。

 それは上を見ればきりがないということ。

 しかし、下限であればどうでしょう。具体的な線引きが可能ではありませんか?

 ですので、たまには……上でなく下を見てみることも、益があるかもしれません、ね。



 乱文乱筆にて失礼ながら、もしご覧いただいた方々の創作活動におかれまして一つでもお役立ちできる点がございましたら大変幸いに存じます。

 以上、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 2020年05月01日、誤字箇所を修正。

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