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序章 ~彼との出会い~
~ココロを無くしたのは、いつからだろう~
過去に、とある男性と出会った。
その時僕は、感情を失っており、何を思うにも、何も感じるにも、その全てが不可能だったのだ。
思えばあの頃が懐かしかった。僕はいきなり感情を探すために旅に出ようと言われたのだ。
衝撃的だったはずだが、感情も何もなかったので、何も感じることはできない。
しかし、言葉の意味は分かるので、ただたんに「はい」と答えただけだったのだ。
思えばそれが、僕の中の希望の一歩であり、今の僕を組み立てているパーツであったのかもしれなかったのである。そしてあの時、僕は生まれて初めて涙を流した気がした。
悲しさや苦しさ、妬み。その全てをマスターしたみたいだった。
‘思い‘を伝えることは、こんなに辛かったのだろうか。
‘思う‘ことは、ここまで僕を苦しめていたというのか。
あの時彼は死んだ。僕の感情を探す為に死んだ。彼が死んだ時に僕は初めて涙を流したのだ。
今思えばあれは、僕が‘悲しみ‘の感情を初めて抱いた瞬間なのかもしれない______。