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4話二次審査のお題

「魔王様第二次審査は一週間後に行われます…審査内容は面接となります」

「面接ぅ?」


執務室で履歴書を見る為に溜めてしまっていた書類のチェック(書類を確認して問題が無ければ魔王の印鑑を押すだけの簡単な作業だ)をしながら、あまりにも普通すぎる内容に魔王は思わず聞き返した。


「はい…一日に百人の第一次審査通過者の方達にお会いして頂き、そこで現在いらっしゃる方達の半分にして頂きたいのです。これを三日に別けて行わせて頂きます」

「なんじゃ〜儂はまたてっきり、やれ悪魔の山脈デビルスマウンテンでしか採れない大病に効く月光草を採りに行けだの―――

地獄の底無し沼にしか棲息しない巨大魚グレートフィッシュを捕まえて来いだの―――

三つ首犬ケルベロスの首に着けられた首輪を捕って来いだの―――

我が魔王軍の精鋭四天王と戦って勝った者だけが勝者となれる―――

そんな内容を想像しておったのだがのぅ〜」


魔王は考えられる様々な無理難題を想像していた為に、少し残念に思っていた。


「いきなりそんな課題を出しては魔王様のお好みの方が脱落してしまう恐れがありますので…第二次審査には適用致しませんでした」

「あ…儂の為…色々と気を使わせておるのぅ〜」


アージダハーカの言葉に、魔王は頭をポリポリと掻いて返答した。


「まぁ審査が進みましたら、かような無理難題も出させて頂く事になるかと思われますのでご了承下さい」

「うむ…くれぐれも死人が出ないようにするのじゃぞ…」


魔王の言葉にアージダハーカは無言で頷くと、「では私は今後の準備がありますので失礼します」と言い残して執務室を後にした。


「しかし…面接は面接で少し楽しみだのぅ…あのイケメ…げふんげふんメリクリウスとも直接会話が出来るやもしれぬしのぅ」


魔王は一人呟いて机の引き出しを開くと、コピーしておいたメリクリウスの写真をうっとりと眺めた(第一次審査通過者の履歴書は重臣達や側近のアージダハーカが必要らしいので渡してあるのだ…ちなみに個人情報は厳守してあるので四天王やバトルロワイヤルを主催している魔族達以外には一切見せてはいない…魔族の誇りの為に言っておく―――念の為)。


「いや…あやつ以外にもなかなかにイケメ…げふんげふん…将来有望そうな人物がおったしのぅ…楽しみじゃのう」


最初はあんなにお見合いを嫌がっていたにも拘わらず、今ではこの面接を少なからず楽しみにしている現状に魔王はくすりと微笑んだ。


『何やかんやで儂も乙女という事なのじゃなぁ…』


数十枚程コピーしておいたイケメン達の写真を見ながら、執務の手を止めていると、ふとある事を思い出した。


『あれ?確か魔大陸までの道のりはウェンティーヌ王国から船で最短でも五日は掛かる…それ以外の人間界の者達ではどう考えてもそれ以上は日数が掛かるのではないのか?大丈夫なのか?』


魔王は第二次審査の面接が一週間後という事に大層心配になり、慌ててアージダハーカを執務室へと呼び戻した。






「どうかされましたか?魔王様」


相変わらず淡々とした物言いでアージダハーカが口を開いた。


「忙しい中すまぬのぅ…ちょっと聞きたい事があってのう〜」


面接の為の準備をしている最中に呼び出され、若干苛立っている風に感じる冷たい言葉に魔王は謝る。


「面接は一週間後という事であったが…これでは魔族の者達には十分な時間であっても、人間達には些か厳しいのではないかのぅ?」


小首を傾げ、少し可愛らしく問い掛けてみるも、アージダハーカには全く効果がなかったようで「気持ち悪いのでそのようなポーズはお止め下さい」とキッパリ言われた。


『ぐはぁ…十代の頃はかなり効力を発揮した筈の儂の十八番芸がぁぁ〜(泣)』


つれない物言いのアージダハーカに気付かれないように、魔王はこっそりと落ち込んだのだった。


「その点でしたらご心配なく…彼等は仮にも勇者や勇者の仲間と呼ばれる者達です。この程度の距離や日数等問題ではありません」

「そ…そういう物なのか?」


アージダハーカのアッサリした言葉に魔王は狼狽えた。


『いや…確かに数年前に魔大陸に攻めてきたあやつら(勇者様ご一行)はあっという間に我が魔王城へとたどり着いたしのぅ〜』


そう、現魔王が即位して間もなくの頃は一時期勇者様ご一行が何十組も現れて、その度に魔王は部下と一緒になって勇者様ご一行を傷一つつけずに帰していたものだ。

今にして思えば、どんな魔法を使ったのか彼等は魔族に上陸の気配も感じさせずにこの大陸へと現れたではないか。


「魔王様が彼等を案じる必要はございませんよ…寧ろ一週間も余裕を持たせているのに、それでもこの魔王城に来られないのであれば、所詮その程度の器だったと言う事で、それこそ魔王様に相応しくなかったのです」


アージダハーカはキッパリとそう言い切ると「失礼します」と改めて執務室を出て行ったのだった。




「いや…まぁ…勇者様ご一行ならば例えどれだけ離れていても…まぁ確かに問題なくこの城へと来られるかもしれぬが―――勇者ではない者も居るのだがのぅ…まぁいいか…」


魔王は考えるのも面倒になり、溜まっている仕事に意識を集中させる事にしたのだった。





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