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13話魔王様の告白

「のう…アージダハーカよぅ」

「何ですか?」

「儂…好きな人が出来たようじゃ」

「それはおめでとうございます」


アージダハーカの淡々とした物言いに儂は必殺卓袱台返しならぬ――デスク返しをする――むむ…ちょっと…いや…かなり重かったのだが…。


「それだけ!?それだけなのか!?ここはもっとクラッカーでも鳴らして満面の笑顔で「おめでとうございます♪」とか「今夜はお赤飯ですね」とかないのか!?」


儂の言葉にアージダハーカは馬鹿な者を見るような蔑んだ目で「魔王様がそうお命じになるのでしたら――」と言ってくる。


す…すまぬ儂が悪かった――ただ、こう…のぅ?初めての恋に動揺してしまってのぅ…。


「どうしたものかのぅ…」

「どうもこうも勝者となった者が魔王様の婿君になられるのは決定事項です」


儂の言葉にアージダハーカはいつもの無表情で答える。

その言葉に小さく溜め息を吐く。このバトルロワイヤルは儂の結婚相手を決める為のもの…例外はない。


万が一睦月ではなく別の者が優勝した場合は、その者と添い遂げなければならない――果たして恋を知ってしまった今の儂にそれが受け入れられるのだろうか――。


「少し風に当たってくる」


そう言い残して儂は執務室を後にした――。






☆☆☆






「夜風はお体に障りますよ」


バルコニーで森の風景を眺めていると、後ろから柔らかい声を掛けられる。振り向くとそこにはメリクリウス=ウェンティーヌが微笑みながら立っていた。


儂に自分の着ていた上着を被せると、儂の横に並んで立つ。

その横顔をチラリと窺うと、絵画を切り取ったように美しい瞳と目が合ってしまう。


「どうかされましたか?」


優しい声音で儂に囁くその声はひどく脳内を駆け巡り、何故だか鼓動が早くなるのを感じた。


こやつに儂の気持ちを言わねばならぬのぅ…。


この気持ちを隠したままではいけない――そう思い、儂は口を開いた。


「儂のぅ…好きな奴が出来たようなのだ…」


静かにそう呟くと、メリクリウスは驚きに目を見開いていたが、「そうですか」と優しく答える。


「私は貴女を愛しています――例え貴女が他の人を愛していたとしてもこの想いは変わりません」

「メリクリウス…」

「私は今貴女が愛する相手よりも、貴女に好きになってもらえるように努力します――ですからもう少しだけ私を見て下さいませんか?」


メリクリウスの真摯な想いに儂は頷くしかなかった。気のせいか先程よりも鼓動が早くなって、頬が熱い。

それを気取られたくなくて儂が俯くと、メリクリウスは儂の髪を一房救い、それに唇を寄せる。


「明日の私の試合もどうか見て下さい」


そう言い残してメリクリウスはバルコニーを出て行った。


その後ろ姿にさえ目を奪われる儂は一体どうしてしまったと言うのか…。







☆☆☆






次の日の試合はメリクリウスと竜族の青年ネプトゥーナーリアだった。

ネプトゥーナーリアは空を守護とする竜族でも珍しく海の神の加護を持つ人物の為、水魔法を使う。






「勝負始め!!」






高らかに宣言を受けた途端、その空間は戦いの舞台へと変わった。


剣と剣がぶつかり合い、剣戟を響かせる。ネプトゥーナーリアが渾身の一撃を降り下ろせばメリクリウスが流れるようにその一撃を受け流す。


二人の闘いは見る者全てに感嘆の溜め息を漏らせた。

かくいう魔王も二人の美しい闘いから目が離せない。


互いの力は拮抗しており、メリクリウスが聖魔法を放てば、ネプトゥーナーリアは水魔法で防御する。


昨日の闘いが死闘と呼ばれる物ならば、この闘いは舞闘と呼ぶに相応しい物だ。


永劫続くのではと思われた闘い。だがそれも長くは続かない――少しずつではあるが、メリクリウスがネプトゥーナーリアを押しているのだ。


ネプトゥーナーリアは水魔法しか使えない――しかし流石勇者と言うだけあって、メリクリウスは聖魔法以外にも防御魔法、その他の攻撃魔法が使える。


最後の力を振り絞ってネプトゥーナーリアが剣で攻撃するが、ほんの少し――常人には分からないような隙をついてメリクリウスが自身の剣の切っ先をネプトゥーナーリアの首元へと押し宛てる――勝負はそこで終了した。


誇り高い竜族の青年ネプトゥーナーリアと勇者メリクリウスの闘いに惜しみ無い拍手が送られた。


二人が出て行った後も、魔王は先程のメリクリウスの美しさに心を捕らわれ続け、心臓が早鐘を打ち頬は上気し心ここにあらずという風情であった――。





☆☆☆





「アージダハーカよ…儂…ビッチといいやつなのだろうか――」

「は?!」


魔王のとんでも発言にアージダハーカは間抜けな顔をしていたとかいなかったとか――







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