パラレルユニバース
アンドロイドが絶滅された100年後の話である。
この世界にはパラレルユニバースというのが存在する。
地球から何光年も先にある宇宙内に存在し、誰にも発見されたことはない。
それもそのはず、それはブラックホールの先にあり裸眼で目の当たりにした人で地球に戻って来れた人は一人として存在しないのだから。
パラレルユニバースとはなにか。
自分を「神」と名乗る謎の博士の手によって創られた。これは欲深い人間たちによって汚染された世界に傷つけられた人々のオアシスとなりかつリアルの世界を浄化するための、人々の脳が無意識にコネクトされる世界のことである。博士の意志によってしか人々の脳がパラレルユニバースにコネクトされることはないが、誰もがそのパラレルユニバースにコネクト可能な特殊なネットワークを脳に有している。これは博士の長年の脳の研究によって明らかとされたことである。博士は自分の利益のためでなく、世界全体の平和と幸せのためにパラレルユニバースを運営している。なぜなら彼は、
アンドロイドの唯一の生き残りで、誰も知らない豪邸の隅にかくまわれているのだから。
彼は、一人の少女とその両親と暮らしており、その少女だけを友達としている。
ノンレム睡眠がレム睡眠に切り替わる時に魔法のごとく誰かの脳内の意識がコネクトされ、そこで誰がどこで誰と交流し、どんな経験をするのかも神を名乗る博士にしか計画され実行されることはない。
もちろん、リアルな世界で人々から理不尽な待遇を受けかつ濡れ衣を着せられ不幸をしょっているような人たちにそういう社交場がもたらされる。彼らは同じ境遇にあることが多く、すぐに意気投合し、現実では叶えられない夢を実現させることが多い。
したがってその記憶を蓄積した少数の人間たちによって現実の世界の基準点がほとんどの人々の知らぬ間に変化し、彼らに錯乱をもたらしうる。
ちなみに、リアルな世界で飲酒したり喫煙、あるいは自慰を頻繁に行うなどすることでパラレルユニバースへのコネクトの機会を奪われることも少なくない。