第三戦 生きる事
真:
「ふんふふ〜ん♪今日はシチューを作りましょ〜♪」
買い物袋を持ってルンルンで歩いていく雑用係真田さん。
あんたはきっとリーダー向けな人ではない(爆)
真:
「ふぅ〜ふふ〜♪……ん?」
何かを見つけて立ち止まる。
目を凝らしてよく見たら…
真:
「!!」
ビルから人が飛び降りようとしていた。
真:
「(マズイなぁ…只でさえ人の魂が奪われてるっつーのに…自殺なんてアホじゃねぇのか!?)」
“パチン”
真田は、両手を合わせた。
真:
「我が身天高く上れ…」
小声で呟くと、真田の体がシュン、と消えた。
“スタッ”
消えた真田はビルの上に現れる。
瞬間移動である。
真:
「オイお前!自殺なんて止めろィ!!」
女:
「!!」
女は驚いて振り向いた。
女:
「あ、貴方誰?」
真:
「オレは真田闇時!通りすがりの主婦夫です。」
女:
「???;」
超意味不明な自己紹介に女は不思議そうな表情を浮かべる。
真:
「お前自殺しようとしてんだろ?止めとけよ。自殺したって良い事ねぇぜ。」
買い物袋を端っこに置いて、女に言う。
女は表情を曇らせた。
女:
「確かに自殺しても良い事はないかもしれない…でも少なくとも今よりはいいわ!今の私は…上司や同僚にいじめられて…親にも見離されて…帰るところなんて何処にもないのよ!!」
女の話を無表情のままで聞く真田。
女:
「わかったらもうほっといて。私は今から死ぬの。」
真田に背を向けて、女は足を前に進めていく。
真:
「そっか。なら死ねよ。」
女:
「!」
女の足が止まった。
真:
「死にたいんだろ?死にゃあいいじゃねぇか。もう止めねぇよ。死ねよ。」
冷たい目で見下すように、真田は女に言う。
女は目を伏せて、涙を流した。
真:
「ほら、死にたくねぇだろ?」
女:
「え…?」
真:
「お前今泣いてんじゃん。死ねって言ったら、悲しくなっただろ?それはお前が死にたくないって思ってる証拠だ。」
さっきとは打って変わって優しく笑う。
天:
「余計な事するな。悪魔。」
真・女:
「!?」
天から声が聞こえてきた。
雲が裂け、そこから天使が降りてくる。
天:
「そいつは自分の意志で死のうとしてるんだ。お前等悪魔に止める義務はない。」
真:
「おうおう、不良天使さん。ウルセェぞぉ。可哀相だろ。まだ人生先が長いってのに。」
天:
「黙れ!!」
“バギュウ!”
真:
「のぉ!!」
天使は掌から電撃を出してきた。
真田は何とか電撃を躱す。
真:
「あっぶねぇだろ!」
天:
「当たり前だ。狙っているのだから。
オイ女。オレがこいつを止めていてやる。すぐにそこから飛び降りろ。」
女:
「……」
天使の言葉に女はまた背を向ける。
真:
「! オイ!止めろ…」
“バキュ!”
真:
「ぐぬ!!」
女のもとに駆け寄ろうとする真田に、天使は電撃を放つ。
真:
「テンメェ…そこまでして人間を無くしてェのか!?」
天:
「そうだ。人間さえいなくなればこの世界は俺たちの物になる。自分の意志で死ぬのならば、お前達悪魔に地獄へ流される事もない。良い事じゃないか。」
ニヤリと怪しく笑い天使は真田に言った。
真:
「クソ野郎が…」
天:
「さぁ、女!早く飛び降りるがいい!」
真:
「止めろ!お前の居場所ならオレが作ってやる!!」
女:
「…ヤダ…」
天・真:
「?」
女が俯いたまま呟いた。
女:
「私は…死にたくない!」
こちらを振り向いて、女は大声で叫んだ。
真:
「だ、そーだぜ?残念だったな。天使さん。」
挑発的に笑い真田は天使に伝えた。
天:
「そんなの…認めるかァ!」
“バリィ!”
天使は女目がけて電撃を放った。
女:
「きゃあ!」
女は電撃により、下に落ちてしまう。
真:
「しまっ…」
“バサバサ”
真:
「!!」
羽音が下から聞こえてきた。
その羽音と共に、大きな黒い竜が上がってきた。
阿:
「まったく…一人でカッコつけようとするから、こうなるんだぞ。」
真:
「あ、阿部!?」
下から上がってきた竜は阿部が召喚した魔獣『阿木竜』だったのだ。
そして落ちてしまった女は阿部の手に抱えられていた。
阿:
「こいつはもう大丈夫だ。存分にその天使を打ちのめせ。そいつは人に手を出したから地獄流しも出来るぞ。」
天:
「!」
真:
「だなぁ…んじゃ、行きますか。」
両手を合わせ、力を蓄める。
真:
「天からの使い、貴様を焼き尽くす!!黒竜炎!!!」
バッと手を前に突き出す。
真田の掌から、竜の形の黒い炎が飛び出した。
天:
「ひ…ぎゃあぁあ!!」
天使はその黒い炎により焼かれる。
真:
「生きるべき者の魂魄を奪おうとする者よ、己が罪、受けとめ、罰を受けよ!!地獄流し!!」
“ガパァン”
天使の後ろに穴が現れ、天使を呑み込んだ。
真:
「ふぅ〜…;疲れた…;」
阿:
「ご苦労さん。ほら、乗れ。帰るぞ。」
真:
「あぁ……って、その女連れて帰るのか?」
阿:
「仕方ないだろう。お前が居場所作るとか言ったから。」
真:
「あ…」
阿:
「…馬鹿者が…;」
仲間が一人増えました。
《続く。》