表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/18

3.夜の散歩者

これはちょっとBL色が強いかも。

苦手な方は飛ばしてください。物語の後半はそうなってます。

半分以上は「ピュリファイア」の説明です。

これで少しは謎解きになるのではないかと……。


  ナイトウォーカー。

 それは僕らのことかも知れない。

 僕らの本当の時間は「夜」にやってくる。


  時間は深夜0時を少し回った頃。

 それでも巨大ショッピングモール、リリアガーデンの灯りは消えていない。

 まぁ。24時間営業のアミューズメントが施設の中にあるからね。

 ほとんど朝方までライトはつきっぱなし。

 眠ることを忘れた人は一体どこに行くのだろう……なぁーんて。哲学してみたりして。

 翌日、眠い目を擦りながら、学校やら仕事に行くのがオチだろうけど。


  僕はこの日も尚哉と一緒。

 デートだよ。って言いたいところだけど、これは立派な〔仕事〕。

 僕と尚哉はコンビを組んでいる。

 大切なパートナー同士ってことになるんだ。

 

  僕らは業界から〔浄化者ピュリファイア〕と呼ばれてる。

 業界っていうと……〔カタルシス〕という組織のこと。

 この組織は世界規模の巨大組織。でもその活動は、その国々の自主性に任されてる。

 例えるなら……「世界遺産」のような、「世界共通の遺産です」って言うけど、維持、管理、保護をするのはその「遺産」を保有する国。っていう感じ。もちろん、それにだって色々例外はあるけど。あくまで例えるならって感じだよ。

〔カタルシス〕に、世界を統一する〔本部〕はない。

 国によっちゃ、単なる「カルト集団」扱いするところだってある。

 幸いにも、そんな国にはほとんど被害はないんだろうな。

 そんな僕らの敵ってのは、〔ミュトス〕と呼ばれている。

 もっとわかりやすく言うなら、〔霊長意識集合体〕。

 え?ますますわからない?

「人だった存在が死んで、肉体は滅んだけどその魂は成仏することなく、この現世に留まり、その「魂」が寄り集まって出来た「集合体」」

 というとわかりやすい?

 でも、「幽霊」とは少し違う。〔ミュトス〕に、「エクソシスト」も「陰陽師」も「悪魔祓い」も適わない。どんな宗教の言葉だって通用しない。

 その〔霊長意識集合体〕である〔ミュトス〕は、数万年前。強いては十数万年前の霊長類の意識も含まれる。

 そんな彼らに、仏教のお坊さんがお経を読み上げても、通用しないだろうし。

 事実、通用しないんだよね。「言葉」が通じないから。

 仕方ないよ。彼らを成仏……〔浄化〕出来るのは、僕らだけなんだから。

そんな〔浄化者〕たちが集まって組織をつくり、活動資金を作るためのルールをつくり、組織を維持

管理、運営してるのが〔カタルシス〕ってわけ。


  〔ミュトス〕は、この現世に強い〔念〕を抱いてる。

 この現世に今一度戻りたいと願ってる。

「人」だった存在に戻ろうとしている。それが〔ミュトス〕。

 より集団化し力を得ると、生物の〔生体エネルギー〕を喰らい、〔人〕に戻るべくを蓄えていく。

 動物も植物も関係ない。ただただ生きる存在の〔エネルギー〕を喰らい、

この地球を覆うほど巨大な〔存在〕になっていたんだ。

 でも〔ミュトス〕はこの物質世界の「存在」じゃない。

 巨大化した〔ミュトス〕のエネルギーは、この世界の〔現世このよ〕と〔常夜あのよ〕のバランスを、大きく崩してしまうことになってきた。

 そうなるとね、地球の自然のバランスが連鎖的に崩れはじめる。

 それだけじゃない。人同士のバランスもやばいらしい。

 長い間起こり続けている「戦争」も、そんな〔ミュトス〕が大量にこの〔現世〕に現れた年と一致するということだった。

 戦争でなくなった人が増えた、ということもあるのか、〔ミュトス〕が関係してそうなったのか、までは僕は残念ながらわからない。そういうのは姫香が詳しいと思うけど。

 

   そこで慌てたのが〔地球ガイア〕自身。

 生きている人間たちに、お仲間だった〔ミュトス〕を成仏……〔浄化〕して、〔常夜〕に戻しなさいと言って来たわけ。

 しかもこの〔ミュトス〕。お国によって出現数が、天地ほどの違いもある。

 で、この日本は「天」の部類に入る。「わーい!「天」なんて!」と

喜べるわけないでしょ。「ワースト」でトップクラスを誇るんだから。

 世界の〔カタルシス〕の関係者から、視察の申し入れが後を絶たないと、

綾香さんがキレてたっけ。

 もう数千年は、この戦いが続いているのだそうな。

 そして僕ら〔カタルシスジャパン〕がとった〔ミュトス〕への対抗策が、

この〔五式市〕ということ。


  僕ら〔浄化者〕は皆、〔水晶〕を必ず持っている。

 この〔水晶〕が僕らの力の〔源〕となる。

 僕らの手にしている水晶は〔永久水晶エターナルクリスタル〕と呼ばれてる。

 外見はなんの変哲もない水晶。特別綺麗でも、決まった産地があるわけでもない。

 でも必ず「水晶」なんだ。これは絶対の決まりごとらしい。

 もっとも〔浄化〕の力に優れた鉱物。地球の分身。それが〔水晶〕。

地球ガイア〕が選んだ僕らが手にするからなのか?〔永久水晶〕が選んだからなのか?

 どちらなのかは僕にはよくわからないけど。

 キーホルダーやストラップのような、加工された小さいものから、数十メートルはあるような巨大な群晶クラスターと呼ばれる水晶の塊まで。

 ちなみに僕は「ミニレーザークリスタル」って呼ばれてる、5~8cmぐらいの大きさがある、水晶柱の原石を12本。

 尚哉は「タンジェリンクリスタル」という、水晶の原石に鉄分が付着してオレンジ色に見える10cmほどの水晶柱を1本と、それぞれ特徴の違う水晶を持っている。

 姿形が違えば、それぞれの発する能力も千差万別。

 まずは、この水晶をなんらかの方法で手にする。

 と、なにかのきっかけでその〔浄化〕能力が覚醒する。

 ほとんどは、どんなに若くても、一度覚醒した能力が成長することはない。

 その時決まった〔ランク〕が、その人の能力の大きさとして一生のものとなる。

 中には、〔ランクUP〕として能力がアップする人が、たまーにいたりする。

 僕の知っているところでは、初菜さんがいるけどね。


  世界の〔カタルシス〕が話し合いで決めたひとつが〔ランク〕制。

 大きく5段階に分けられてる。

 最低が〔D〕。これは〔ミュトス〕でも、一番ポピュラーで害のない〔無意識体エス

 と呼ばれる……〔カタルシス〕の中で一般的な呼び名は〔不浄のフォボス〕かな。

 この存在を〔感じる〕、〔視る〕ことだけが出来る能力者のこと。

 この人たちには、この〔無意識体〕を見つけてもらう役目を担ってもらう。

 次が〔C〕。これは能力が大きく2つに分かれる。

 ひとつが〔結界〕を張ることの出来る能力者。この人たちは数が少なくて貴重。

 もうひとつが言葉通りの〔浄化者〕。〔無意識体〕を浄化出来る人。

 でもこの人たちは、〔結界〕の中でしか能力が発揮できない。

〔無意識体〕は元々、〔現世〕と〔常夜〕の境を浮遊している存在にすぎないから、

 その〔結界〕の中に入り込んで、〔浄化〕する必要がある。

 だから、〔現世〕で能力を発揮する必要がない。

 

  問題はその上のランク。そして〔五式市ここ〕にいる僕らも皆、このランク以上ということになる。

〔B~S〕までのランク。

 これは〔C〕ランクの人が作り出した、〔結界〕とは段違いの、本当に〔現世〕と〔常夜〕の境を作り出すレベルの能力者たち。

 僕らは〔磐境いわさかい〕って呼んでいる。

 この中で使う能力の威力がこれまた段違い。

 〔B〕ランク以上の〔浄化者〕の数は本当に希少だから、結界を作り出す人も、〔浄化〕

を専門とする人も人数は変わらない。

 だから、〔結界〕を作り出す人と、〔浄化〕専門の人と、2人一組でチームを組むわけ。

 そしてもうひとつ。このレベルのランクには、特殊な能力をもつ人間たちがいる。

 それがランクに〔+〔プラス〕〕がつく人たち。これが僕ら。

〔ミュトス〕がもっとも狙う〔浄化者〕たち。

 僕らが特殊なのは、本来〔結界〕の中でしか能力を使えない〔浄化者〕なのに、

僕らは〔現世〕、この物質世界でこの〔浄化〕の能力を使うことが出来る〔異端児〕集団。

〔B+〕、〔A+〕はこの能力者のことを言う。

 最高レベルの〔S〕は+をつける必要のないほど、神がかり的な能力者のことをいうらしい。

 そして〔カタルシス〕では、〔ミュトス〕という呼び名に対抗して、僕らのような

〔能力発現者〕を〔ロゴス〕と呼んでいる。

〔ミュトス〕はこの〔現世〕に戻りたいと思っているわけだから、この〔現世〕で能力の使える僕らの力は、どうしてもほしいのだそうだ。

 この〔ロゴス〕が1人でもいる地域では、〔ミュトス〕の目撃数が半端なく増えてしまう。

 だから普通では、この〔ロゴス〕を長期間ひとつの区域には置かず、頻繁に住む所を変えるという方法をとる。

 そうしないと、〔ミュトス〕がたまりにたまって大変なことになってしまう。

〔ミュトス〕がたまると、〔無意識体〕が意思を持ち、集団化する。

 これが〔現世〕に対し害をなす物となる存在。

 それが〔根源体アルケー〕。一般名?は〔デイモス〕。この呼び方は、昔の呼び方らしいけど、〔ミュトス〕に同情する輩が出ないよう、悪いイメージを与えるという目的で使われてもいるとか。

〔根源体〕になると、〔現世〕に〔実体〕化し、関係ない人や生き物にまでなんらかの害が及び、問題が出てくる。

  

   その性質を逆手にとったのが、この〔五式市〕ということ。

 僕ら〔発現者ロゴス〕を集めに集め、〔根源体〕となった〔ミュトス〕を一気に

〔浄化〕しようというのが、この都市の役割。

 何年かかるかはわからないけど、数千年という途方もない〔時間たたかい〕を数十年、もしかすると数年に短縮出来るのではないか、と考えているらしい。


  「……いるぞ」

「うん、わかった」

 尚哉は〔結界〕を張る役目の〔浄化者〕。別名タイプ〔S〕。

 そして僕は〔浄化〕を専門とする〔浄化者〕。タイプは〔C〕。

〔S〕の意味は「Sympathyシンパシー」。水晶と〔共鳴〕しながら能力を発揮するタイプのこと。

〔C〕は「Controlコントロール」。水晶を自身の〔支配〕下に置き、能力を発揮するタイプ。このタイプにはひとつの特徴がある。

 尚哉が僕の返事を合図に、〔結界〕を発動させる。

〔結界〕というより、〔空間移動〕のようなもの。

〔現世〕と〔常夜〕の〔境〕の空間へと転移している。

 この空間は薄暗く、あちこちで仄かな七色の輝きがふわりふわりと、点滅を繰り返している。

 そしてここでタイプ〔C〕の特徴。

 神経の高ぶりが消え、気持ちが異常に落ち着いてくる。

 冷静沈着。物事に対し、全てを見通している気分になってくる。

〔支配〕系の〔浄化者〕が持つ、〔トランス状態〕。ハイになることはない。

〔浄化〕という戦いに対して、絶対的に優位にたつ精神力が宿る瞬間でもある。

-……フォォォォ-

「声」が聞こえた。

 僕は神経を研ぎ澄ます。大丈夫。相手の姿は捉えてる。

 尚哉の作った〔結界〕の中では、僕は無敵だ。たとえ相手が「神」でも、僕に敵うものなど,

 この〔尚哉の作り出した結界内せかい〕ではあり得ない。

 そう、僕はここでは最高の「神」なのだから。

 ビキビキビキと耳障りな、鉱物が擦れあう音が足元から聞こえる。

 僕は両手に、水晶柱をバラリと広げた。僕の想いに反応して、水晶が仄白く輝きはじめた。

-ガァァァァァ!!!-

 その声だか音だかが聞こえたときには、僕の手のひらの水晶は全てなくなっていた。

 動きが遅いよ。僕の背後から襲うつもりだったんだろうけどね。

 12本のうち、5本の水晶で〔シールド〕をつくり、相手の攻撃を食い止めた。

 刹那、残りの7本の水晶が閃光となって、地面から伸びた岩のような〔根源体〕の体を貫いていく。何度も何度も。

-……ァウ……-

 いく筋もの光に貫かれた〔根源体〕は、一度だけ体を仰け反らせると、闇に同化するように消滅した。

「大丈夫かっ!?」

 尚哉が僕に駆け寄る。

 そのとき僕は〔トランス状態〕が解け、いつもの気弱な僕に戻っていた。

「うん、大丈夫……」

「じゃ、ないだろうっ!!」

 えぇ!!?楽勝だったと思ったんだけど?詰めが甘かったのか??

 尚哉の怒った声に、先ほどとはまったく別の、恐慌状態に陥った僕がいた。

 えっ!!と、思ったとき、尚哉の舌が僕の首筋に触れた。

「……ふっ」

 あっ。声が出ちゃうよ。

「動くな。血が出てる……」

 待ってよ……。耳元に尚哉の息がかかってる。ちょっと。

 尚哉には〔結界〕を張る能力の他に、その〔結果内〕なら怪我を治癒出来る

〔治癒能力〕がある。

 なぎがその能力に長けているけど、尚哉はついでその力が高い。

 ほとんどはパートナーである僕が、その恩恵を受けているんだけどね。

 でも今日は……怪我の場所が。

「……ん……あ」

「もう少し……」

 声が……出ちゃうよ……。なお……や。

 限界と思ったとき、尚哉が離れた。

「……他にないか?」

 また耳元で……。僕、耳は弱いんだって何度も言ってるのに。

「ここか」

 えっ?今度は右手の小指??こんなとこ怪我したっけ?

「ふぅ……」

 おかしい。だめだ……すごく感じてる。尚哉はこんな僕にお構いなく、小指を口の中に含んでる。

「……よし」

「あ……ありがと」

 やっと離れた。離れちゃった?なんだろ?すごく残念な気分になってるのは?

 気がつくと、もう〔結界〕は解かれてた。

「今日はもう遅い。〔根源体〕の気配もないからな。戻るぞ」

「ごめん……。今日は怪我してないつもりだったんだけど……」

「いいよ。今日は倭さん家に泊めてもらう。まだ怪我している場所がないか、見てみないとな……」

 はい?尚哉??まだ怪我って?これからまたあんなこと続ける気?!

「なにぼぅっとしてるんだ?帰るぞ?希空さんも和も心配してるはずだ」

「あ、え……。そ、そだね。帰ろう!!」

 尚哉は僕のこの気持ちを知ってるの?

 という僕の心の叫びは、尚哉の「ほら、行くぞ!!」という声にかき消された。

 この先、どうなって行くんだろう。もうわからないよ……。










 







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ