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7.気がついたこと

何度も章を変更し、大変申し訳ありません。


  「神楽くん!!」

 うえっ!!

 放課後。校門前で、晶がうれしそうに僕に手を振っていた。

 下校する生徒たちが、何事かと晶と僕を見ている。


  たしかに学校は同じ九流学園の高等部と教えた。

 昨日、晶とは知り合ったばかりだし、メアドは交換したけど。

 なんにもメールがなかったから、ちょっと安心していた。


 いや。するべきじゃなかったんだけど。


 「紫桃っ!!」

 うええっ!!

 このタイミングで三橋かよっ!

 僕は1人。最低だぁ。


 「神楽くん。このひとは?」

 晶?なに?その「あたしの他に、女をつくったの?」的な表情は?

「クラスメイトだよ」

「ふーん」

 だから、なにっ?その不服そうな顔は?!

「あら。このは?」

 で、お前まで、なんで「この女なによ?」的な顔してんだって!?

「し、親戚の子だよ。従姉妹なんだ。最近、近所に引っ越してきたんだよ」

「ふーん。紫桃、親戚多いね」

 だから、なんだよ!?その疑惑の眼差しはっ!?僕はロリコンじゃねぇ!!


 「神楽っ」

 この声はっ。

 僕はわけもわからず、なぜか目の前で展開されている、火花散るバトルに巻き込ま

れそうなところへまた女の子の声がして、びくりとなった。

「校門前でなにやってるんだ。みんなの邪魔だろう」

 尚哉に和っ!!

 泣き出したい気持ちで僕は2人の方へ、歩き出そうとしたときだった。

 がしっと、そんな効果音が聞こえたような感じで、僕は右手を晶に、左腕を三橋に捕まれた。

「なっ……なんだよ!!」

「君は?」

 叫んでる僕の右脇にいる晶に、和が歩み寄った。

「あっ」

 あわてて晶が僕の手を離した。

「は……畑中晶です」


  まずい。三橋には、和は僕と一緒で、体の弱い僕の妹だと説明している。

 和が知らないとなると、三橋が変に思うのは当然だ。

 「晶ちゃん。いきなり来ると、神楽が困るとあれほど説明しただろう?

 和。この子が昨日話した、畑中さんのところの晶ちゃんだ。

 和は会うのが今日が初めてだったな」

 ナイス、尚哉っ!!三橋の前でさりげなくフォローをしてくれた。

 和は、病院に入院していた時期が長かったということになっている。

 和もこういう状況はなれているので、尚哉に合わせてくれるはず。

「そう。はじめまして。私が神楽の妹でなぎ。よろしく」

 和は口数が極端に少ない。

 これは小さいときに育った環境のせいなんだけど。

 そのせいで、人付き合いが苦手なところがある。

 だから、「病院に長期入院していた」なんて設定がなりたっているんだけど。 

 初対面の人間には、少し冷たい感じを与えるかもしれないな。


 「よ、よろしく」

 と、晶は少し後ずさりをした。

 尚哉のフォローに一番対応出来ないのは晶だった。当たり前だけど。

 それも和の雰囲気を感じて、というより、僕の周りにいる人の多さに驚いた様子だった。

「神楽くん、用事思い出しちゃった。明日また来るねっ!!」

 晶が駆け出そうとした。

「メールよこせよ。そしたら、指定してくれた場所で待ってるからっ!!でも、夜はバイトがあるからだめだぞっ!!」

「うんっ。わかってるっ!!じゃ、またっ!!」

 ばたばたと昨日とは違い、まるで逃げるように走っていった。

 お母さんの様子を聞きたかったんだけど。

 まぁ。あの様子なら、メールくれそうだな。

「ねぇ」

 ドスの聞いた三橋の声。

 ぎくりと僕は三橋を見た。

 三橋は思いっきり疑いの輝きを放っている半眼の状態で、視線を僕に向けた。

「紫桃さぁ。いつからバイトなんてやってるの?」

「あ……あぁでも言わないと、夜でも1人で会いに来るからだよっ」

「ふぅーん。でさぁ。ずいぶんとなつかれてるのね」

「しょ、しょうがないだろ。あの子の両親、仕事で忙しいからあんまり家にいないんだよ」

「そう。じゃ、あたしはこれで。神宮司くん、和ちゃん、また明日」

 三橋は僕を避けるように、尚哉と和ににこやかに手を振り、帰っていった。

 だからぁ。僕がなんだか悪者みたいだろうがっ!!

 なんか後味悪いんだけどっ。


 「人気者だな。神楽……」

「知らないよっ!!」

 帰り道。

 僕は尚哉の突っ込みに、半ギレ状態で答えた。

 本当に知らないよ。まして、尚哉の前でどうしてあんなとこ見せないといけないのかっ!!

 でも、来てくれて助かったけど……。

「三橋も、晶も。神楽のことが「好き」なんだね」

 和がぽつりとつぶやいた。

 

  正直、和の一言はかなりくるものがある。

 和は「素直」で、「正直」だ。

 だから言葉に飾り気がない分、ストレートな意味をもつ。

 あの晶と三橋の行動は、今の僕にとっては、すごく「痛い」。

 

 尚哉になにも言い出せない今の意気地なしの僕にとって。


  そのとき、僕の携帯のバイブが、ウーウーと鳴った。

 僕はすぐに携帯を開いた。


 そしてメールだったことを確認すると、すぐに閉じて、ズボンのポケットに放り込んだ。


  「誰からだ?」

 「んー。青木のやつ。まだ、中は見てない」

 「宿題でも見せてくれというのかな」

 「たぶんねぇ」


  僕は尚哉の言葉に、呆れた様子で答えて見せた。

 たしかにクラスメイトの青木からは、そんなメールが多い。

 でも、今のは違う。

 メールの相手は〔カタルシス〕の諜報部。

 昨日、晶の家庭環境の調査を頼んでおいた。

 その「調査」を開始したという確認のメールだった。



 




 










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