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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

一つになります

作者: 赤川ココ
掲載日:2026/09/16

手慰み、第数弾でございます。

長らく投稿しておりませんでしたが、ようやく話を作れる環境が戻りました。

またお付き合いいただければ、幸いであります。

 鬱蒼とした森を越え、ようやく着いた。

 勇者一行が見上げるのは、禍々しい雰囲気の居城だ。

 宿敵の魔王の棲家だった。

「やっとだな」

「ああ」

 長かった。

 勇者は、今までの旅を振り返る。

 魔王に合い見えるために、経験を積んできた日々。

 辛いことの方が多かったが、時々与えられた安らぎが癒しをもたらし、気力を奮い立たせてくれた。

 魔王を消滅させた後の平和のため、勇者はここまで来た。

「じゃあ、行ってくる」

 振り返って告げた勇者は、不安気な仲間たちに笑いかけた。

「勇者。生きて出てこい」

「勿論だ。戻ったら、いい伴侶を、紹介してくれるんだろ?」

 賢者の言葉に頷き、まだ不安気な魔法使いを見た。

「大丈夫だ。どうやって魔王を消滅させるのかは、直接顔を合わせれば分かると、古い文献にもあるそうだ。その通りにすれば、きっとすぐに済む」

「なら、良いが……村で待つあいつを、悲しませるなよ?」

 真剣な言葉を背に、勇者は一人、魔王城に入って行った。


 ここからだと、勇者は腹をくくった。

 相手の魔王は、勇者である自分とは相反する存在だと、文献を読むまでもなく知っている。

 勇者には、今の人生を一度終えた記憶がある。

 魔王を消した後、世界を牛耳ったはいいが、その世界を憂いた者たちに襲撃されて死んだ記憶が。

 その襲撃者の中に、外で待つ魔法使いと賢者がいて、遅まきながら恨まれていたことも知った。

 だから、死後すぐに生き返り、勇者として魔王と相まみえる前に巻き戻ったと知った時、心に誓ったのだ。

 今度こそは、彼らの信頼を、確固たるものにしつつも、世界を収めていこうと。

 幸い、巻き戻ったのは今から数か月前で、魔王が同じような条件で巻き戻っていたとしても、対策しようがない。

 その時で勇者はすでに、魔王より優位な条件を満たしていたのだ。

 その事実を、賢者が神殿の文献で知ったとしても、どうすることもできないはずだ。

 自信満々に先を進む勇者は、過去に魔王が待っていた広間の扉を、威勢よく開け放った。

 広間の奥で、立派な背もたれ椅子から立ち上がったのは、勇者より一回り小さい人影だ。

 ああ、何度見ても、萎える。

 いや、女好きの男ならば、奮いつきたくなるほど妖艶で、美しい女なのだろうが、勇者は女に興味がない。

 前の人生で目を合わせた瞬間、心と裏腹に、前に立つ女に襲い掛かったときは、気が狂いそうになったものだ。

 相反する存在だった魔王のほうも、狂ったように襲い掛かる男に恐怖を覚え、悲鳴を上げて精いっぱいの拒否行動をしたが、心とは裏腹に体が反応し、勇者とは違って色事を全く経験していなかったらしい魔王は、完全に負けた。

 勇者と魔王は、相反する存在。

 それは、光と影、裏と表を意味する。

 片方が真面目ならば、片方は真逆。

 片方が色欲魔ならば、片方は甲斐性なし。

 相まみえた相反した存在の彼らは、一つになってどちらかを吸収し、最強に生まれ変わって世界を収めると言われていた。

 完全に体を重ねあって、先に絶頂に達した方が、消滅する。

 今回も、やり直す必要がないほどにその未来を進んでいた。

 と、勇者は思っていた。


 目を合わせた瞬間、魔王にとびかかった勇者は、再び気が狂いそうになりながらも、その体の欲求に流された。

 魔王の方も恐怖に顔をゆがめながらも、男の激しい行為に力を抜いた。

 と思ったら、勇者の力が一気に消えた。

「……?」

 同時に、魔王に力が宿り、男の体が魔王の体の下に組み敷かれる。

 混乱した勇者が目を上げると、そこにはたくましい体躯の男がいた。

 魔王の面影を残してはいたが、男としての妖艶さが滲んでいて、勇者の好みドンピシャだ。

 驚く勇者を見下ろしながら、魔王も驚愕とともに勇者を見下ろしていた。

 そっと勇者の体に触れると、その体は敏感に反応した。

「っ? はっ? な、何でっ?」

 体を跳ね上げてから己の反応の敏感さに気づき、勇者は自分の体を見て、さらに驚愕した。

 魔王が変わったのと同じく、勇者も変わっていた。

 自分を組み敷く男の表情を見るに、ドンピシャの妖艶な女に。

「……これはいい。何度文献を読んでも、経験が全くない私では、お前に勝つすべを見いだせなかったが、これならば、双方合意で楽しめそうだな」

 妖艶な男が、蕩けるように笑いながら、そっと勇者の腰を抱いた。

「っ、な、何をっ」

「心配するな。女の体には、慣れてるんだ。すぐに気持ちよくしてやる。さあ、力を抜いて……」

「あ、ああっ」

 耳元でささやかれ、勇者はうっとりと力を抜いた。

 この後、めくるめく夜を過ごし、幾度目かの絶頂を迎えたのちに、魔王と一つになったが、勇者はもう悔いはなかった。


 ……。

 魔王城の外で待機していた賢者が、そっと溜息を吐いた。

 魔法使いも、安堵で空を仰ぐ。

 どちらも、無言だった。

 人類の危機が、ここで解消された。

 それをしっかりと、噛みしめる時間が欲しかったのだ。

「……魔王でも、子孫を残せるんだよな?」

 しばらくして、魔法使いが問いかけ、賢者は静かにうなずいた。

「ああ。唯一神が残した文献には、そう記してあった」

「なら、あいつも、幸せになれるな」

 しんみりとした呟きには、返事はない。

 仕方がないか、と魔法使いは思う。

 前の人生で、魔王を吸収した勇者は、世界を牛耳った後、ハーレムを作るために、人狩りを強行したのだ。

 自分好みの男を率先して。

 危うくその毒牙にかかりそうになった、賢者と魔法使いは逃亡生活をしながら、勇者を暗殺する力を身に着けたのだった。

 今回は、魔王が勝利するように手を加えたが、それだって付け焼刃だ。

 何せ、二人が巻き戻ったと気づいたのは、勇者との顔合わせの時だったのだ。

 魔法使いは勇者と幼馴染で、もともと面識があったのに、賢者と顔合わせするまで、前の同じ人生を繰り返している事実を、それまで思い出せなかった。

 思い出した途端、慌てたが後の祭りで、同じように思い出した賢者とともに焦った。

 何故焦ったのか。

 それは、勇者本人も、前の人生の記憶を持っているのに気付いたせいだ。

 本人は隠しているつもりだったのだろうが、過去を知る二人には明白な違いだった。

 前の人生では、友情としての好意として受け取れる程度の、軽い接触しかしていなかったのに、今回の勇者は露骨に好意を仄めかす。

 何度、身の危険を感じたか分からないほどだ。

 魔王城にたどり着くまでに、二人は心に決めていた。

 もし、勇者が勝って出てきたら、直ぐにやっちまおう。

 魔王城の端にでも埋めて、ほとぼりが冷めたころに王都に戻り、魔王とともに消滅したと報告しようと。

 そんな覚悟とともに勇者の背を見送った二人に、真面目な声がかかった。

 振り返ると、見知らぬ真面目そうな男が立っていた。

 長身で黒髪の、目立たぬ容姿のその男は、身構える二人にあるものを差し出した。

「……? これは?」

「立場を逆転させる、術のようなものだ。お前さんたちなら、どちらでも使える魔法のようなものだ。有意義に使って、もう少しこの話を面白いものにしてやってくれ」

 

 そう、これは本当に、付け焼刃、だった。

 正体の知れない男に与えられた術を使い、二人は勇者と魔王それぞれに、性別反転の魔術をかけた。

 この時ですでに、前の人生での勇者暗殺時の力を覚醒していた二人は、魔王が勇者を圧倒し、勝利したことも気配で察していた。

 これで、前の人生での憂いは消えたが、これで安心はできない。

 前の人生では勘違いしていたから、手放しで喜んでしまったが、勇者は人間好きだったのではない。

 男を好む男だっただけだ。

 その相反した存在の魔王は女だったが、ただの人間嫌いではなく、単に女が好きなだけである可能性がある。

 そうなると、子孫繁栄の憂いは今回の術で解消される、はずだ。

 多分。

 術に期限がなければ。

 期限がなくとも、魔王本人が、本来の姿がいいと戻らなければ。




 







今回の話の経緯

養い子、ハーレムの話を書く→暇になった養い親の白兎、その話を読んで鳥肌→養い子、兎をなだめて話の中へ行き、登場人物に干渉→こっちのハーレムなら、満足だろう?

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