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ダンジョン嫌いの元英雄は裏方仕事に徹したい ~うっかりA級攻略者をワンパンしたら、切り抜き動画が世界中に拡散されてしまった件~  作者: 厳座励主(ごんざれす)
第1章 ダンジョン嫌いニキ、バレる

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第27話 愛沢の想い

「ちょ、ちょっと……これ、どういうことっすか、ねえ、先輩」


 愛沢が研究室のテレビにかじりついたまま、わなわなと震えている。

 画面には、さっきまで流れていたダンジョン攻略の中継映像はない。

 ノイズ混じりの映像と、慌ただしく動くスタジオ。

 テロップには『緊急速報』の文字。


「だって、ルクシア様っすよ? いや、それだけじゃないっす。氷帝ミザリーに、雷王シャザクもいたんすよ? せ、世界のS級攻略者が集まって、ありえないくらい強い夢のチームが完成して、それなのに……先輩っ」


 氷帝ミザリーに雷王シャザク。

 俺は聞きなじみのない名前だが、愛沢が言うのだから、どちらも世界トップクラスの実力者なのだろう。

 だが事実として、攻略の中継映像は途切れてしまった。


「……負けたんだろ」

「あ、ありえないっす! そんな、そんな……!」

「ダンジョン攻略は、そういう世界なんだよ」


 俺は目を閉じる。


「どんなに強い部隊でも、絶対はない。想定外が一つ起これば、一気に崩れることもある」


 実際に、俺はそれを経験している。


「っ……じゃ、じゃあ、この世界はどうなるっすか……!」


 その問いに、すぐには答えられなかった。

 脳裏にドルヴァノの顔がよぎる。

 世界に魔物を溢れさせる。

 魔具を売るために。


 ひょっとすると、奴が絡んでいるのだろうか。

 ……いや、これは違う。

 あいつの狙いは市場の拡大だ。

 世界の滅亡じゃない。

 新しいダンジョンの誕生は奴も望むことだっただろうが、想定外に強すぎる。


「……世界は、滅びる」

「ううっ……そんなの嫌っす!」


 愛沢が頭を抱えて叫ぶ。


「仕方ないだろ。あの部隊は、間違いなく地球上で最高の戦力だった。あれが負けたなら、もうお終いだ」

「くうう……ま、まだ24歳なのに。ゲート研究も人間用試作機ができたとこなのに。それに何より、何も楽しい事できてないのにっす……」

「楽しい事って……何かしたかったことでもあったのか」


 そう問うと、涙目で睨んでくる。


「そりゃ、あるに決まってるっす」

「へえ。例えば?」

「た、例えば? ……そりゃ、その……先輩と……」

「俺と?」

「つ、つ、つ――」


 その瞬間、ニュースが再開した。

 

『――ダンジョンゲートから速報です』


 英語のアナウンスに、日本語字幕が流れる。


『今入った情報によりますと、どうやらゲートが臨界点に達し、今にも暴走が起こるとのことです』


 画面の向こうで、巨大なゲートが赤黒く脈打っている。


『これを見ている全世界の視聴者の皆様、祈りましょう。どうか、我々に救いを』


 それを最後に、リポーターは喋らなくなった。

 中継映像は、空中からひたすらゲートを撮影している。

 俺はそれを見て、ため息をついた。


「まあ、暴走までどれくらい時間があるか分からないが、それまで好きに過ごせばいいさ。やりたい事があるなら、付き合ってやるぞ」

「はあ……鈍感な先輩を持つと苦労するっす」

「あん? 俺が何なんだよ」


 愛沢がテーブルに手をつき、俺をまっすぐ見る。


「もう最後だから、言いたいこと言わせてもらうっすけど」

「ああ。悪口でも文句でも、なんでも――」

「――好きっす」

「……は?」

「大好きっす、先輩」


 まず、脳が理解を拒んだ。

 次いで、言葉の意味を咀嚼する。

 最終的に出した結論は、『趣味の悪い冗談』であった。


「ったく、その手には乗らないぞ。また変な冗談を――」


 言いかけて、止まる。

 愛沢の顔が赤い。

 グレーの瞳が潤んでいる。

 いつもニヤついているのに、今は唇をきゅっと噛んでいる。


「……マジなのか」


 静かに問うと、愛沢はこくりと頷いた。


「大マジっす。ずっと昔から、大好きっす」

「……いや、待て」

「待たないっす。今までずっと我慢してきたっすから。好きっす! 好き好き、大好き好き好き好き好き好きっす!!」


 好意の連打とともに、勢いよく抱きつかれる。

 愛沢は俺の胸に顔を押しつけてきた。

 ぐりぐりと額をすりつけたあと、深呼吸をしてから、上目遣いでこちらを見る。


「……せんふぁい、すきっす」


 真っ直ぐすぎる好意が、胸に刺さる。


「……悪い。ちょっと、整理させてくれ」

「……はいっす」


 愛沢は落ち着いてくれたのか、今度はすんなり言うことを聞いた。

 胸から離れた愛沢に、俺は問う。


「ずっと昔から好き……って言ったな?」

「言ったっす」

「入社した時からってことか?」

「……いや、もっと前っす。アタシが14歳の時っすから……10年前っすね」

「10年前ぇ? まだ知り合ってないだろ」

「でも、アタシは知ってたっす。()()()()()()()()を――」

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