第4話 ホットケーキとお互いの想い。やはり夢?それとも・・・ 50年遅れのメリークリスマス
ミニライブも終わって人気が引いた屋上。しかし足元が寒い。やっぱおしゃれのためとは言えトッキングで痩せ我慢は体に悪い。
寒くてそわそわしながらエレベーターを待つと、エレベーターガールのお姉さんが
「下へ参ります。ご利用の階をお知らせくださいませ」
と出迎えてくれる。1階から外へ出て下から眺める丸中屋。改めて対の銅像が置かれ、彫刻が施された威容のある玄関に荘厳なファザード、ハレの場でもあり、人々を夢で癒やす場所だからこそ、身なりを整えて行くべきと思った。
そしてそんなノスタルジーとも永遠のお別れ・・・・・
防寒のためぼくの提案で同じ通りの激安衣料品店の売れ残りラクダ色の厚手のタイツを買って上から履いた。ダサいけど、安くて寒さを防げるのだから仕方がない。がフリルのソックスは継続・・・・
丸中屋通りを歩いていると本当に人が多いし、手には買った品物を抱える人が大勢いる。この間なんて電車の乗り換えで渋々歩いている人ばかりだったのに・・・
通りの奥にホットケーキが美味しい喫茶店がありそこへ誘ったら茜ちゃん2つ返事。ぼくはコーヒー、茜ちゃんはホットココアで、もちろん2人ともホットケーキ。
分厚くてきれいなきつね色でふかふかなホットケーキに温かい飲み物が2つ。茜ちゃん
「美味しい」
って言ってくれる。実はここのお店最近リサーチしたんだよね。いつか行こうと思って。
「葵ちゃんこれつけよう」
と言って取り出したおそろいの髪飾り。ぼくは右側に、茜ちゃんは左側に。
「葵ちゃんほんとかわいいよ」
「茜ちゃんこそ」
と言って褒め合う2人。
「そのあとどうなったの?」
とその後のぼくのことを聞く茜ちゃん。
「ぼく大学でイラストと商業写真勉強して、大手企業の広報部に配属されて、その後宣伝制作の事務所に引き抜かれていわゆるクリエイターかな?」
「やっぱそうだったんだ。葵ちゃん昔から絵とか好きだったしよくスケッチしに行ったもんね。公園とか」
「最近会社辞めて毎日行ってるよ。同じ場所でも風景って毎日変わりゆくもの。生き物なのかも」
「そうかも。公園に限らず、デパートも街もみんな毎日少しずつ変わるんだろうね」
「だから、毎日行っても飽きないのかも。人もね」
「でおじさんとおばさんは?」
「おじいさんは75歳まで働いて、おばあさんも頑張って二人とも98歳の大往生だったよ。最後まで痴呆もなく介護にもならず苦しまずに・・・」
一瞬言葉につまったけれど、再び思い切って
「だけどぼく結婚できなかった。いやしたくなかった。ひ孫の顔を見せられなかったのは申し訳ないと思ってる。茜ちゃんしか考えられなかった。お見合いとかでも結婚してほしかったんだろう・・・」
「それにぼく現実とも向き合いきれなかった。茜ちゃんとお別れできなくて、その日部屋にこもってたから」
「大丈夫だよ。独りでも立派にやってきたんだし、おじさんもおばさんもきっと喜んでいると思うよ。それにもしもがあるなら・・・・・私・・・待ってる、こんどこそ・・・・」
そう言って慰めてくれる茜ちゃん。ずっと茜ちゃんが好きで吹っ切れなかったぼく。もしもがあれば、茜ちゃんと一緒になりたい。それは叶わぬ夢だろうけど・・・・
しんみりした感じから店を出て、茜ちゃんから腕を組み手は恋人繋ぎで結んでくれ、頬もよせて温かみや思いに包まれながら歩くぼくたち。だけどこの甘く切ないひとときがもう終わりと思うと、また寂しくなってきた。
そのまま今度は別の私鉄のきれいな電車で遠回りをし茜ちゃんを抱きしめ家路に向かうぼく。少しでも長く同じ時間をすごすために・・・
電車を乗り継ぎ最寄り駅に近づくたび、終わりの寂しさが迫るけど今日は楽しかった。茜ちゃん喜んでくれて・・・きっとおじさんもおばさんも喜んでくれている、おじいさんもおばあさんも。
そして家の前でおでことおでこをくっつけて、長めのハグとバイバイ。これで本当におしまいなのか?それともまた今度なのか?
部屋に戻り現実のおじさんに戻ったぼくはまた眠りにつく。幻かもしれない今日の出来事とともに・・・・・・
そして朝だ。目が覚めるとふとんに温もりがある。なんかぼくの体また子供に戻ったみたい。隣を見ると小学生くらいの見覚えのある女の子がぼくを抱きしめて
「葵ちゃんおはよう。昨日は楽しかったよ。また行こうね。大好きだよ ちゅっ♡」
って言っておはようのちゅう。どうやらぼくたち転生したみたいだ。下からおじいさんとおばあさんの声も聞こえる。
窓を開けると石畳やレンガ積みの異世界ではなく、日本のどこかの時代にたどり着いたようだ。
もう一度あの頃に戻って茜ちゃんと居られるの?夢じゃないよね?夢でもいい、茜ちゃんと一緒にいられるのなら・・・・・・
この夢いや出来事はクリスマスプレゼント?・・・・・・
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