第29話:開かれた扉
扉が開くと、そこには巨大な水晶の柱――制御モノリスがあった。
無数の魔法陣が刻まれ、淡い光を放っている。
ここは、聖地アークへ魔力を送るための「心臓部」だ。
「……これ、全部あんたが?」
「ああ。三百年間、毎日欠かさずここから魔力を送り続けた」
カイゼルは汗を拭った。
気が遠くなるような作業だ。
聖地にある私の「棺」を維持するために、彼はこの王都の地下から、生命力を削って魔力を供給し続けていたのだ。
一日でも怠れば、聖地の結界は解け、私は星喰いに見つかっていただろう。
「……どうして、そこまで」
「言っただろう。お前がいない世界に、価値はないと」
彼はモノリスに手を触れた。
その表情は、遠く離れた恋人に触れるように優しかった。
「……アリア。そこにある制御盤を見てくれ」
彼が指差した先には、古びた石板があった。
その裏側に、何かが挟まっている。
「……手帳?」
革表紙の手帳。
私が持っている日記帳と対になるような、同じデザインのもの。
カイゼルの日記だ。
「……読め。それが、俺の遺言だ」




