第28話:地下への階段
玉座の裏にある隠し扉から、地下へと続く階段を降りる。
冷たい風が吹き上げてくる。
(……ここ、覚えてる)
三百年前、新婚旅行に出発する日。
私たちはここを通って、裏口から馬車に乗った。
カイゼルは私の手を取り、笑顔で言った。
「さあ、行こう。最高の旅になるぞ」
でも、その手は氷のように冷たかった。
私は緊張しているのだと思っていたけれど、違ったのだ。
彼は恐怖していたのだ。
私を失う未来に。
「……ねえ、カイゼル」
私は彼の背中に呼びかけた。
「あの時、怖かった?」
「……ああ。怖かった」
彼は立ち止まらずに答えた。
「お前を失うのが怖かった。……だが、お前が死ぬのはもっと怖かった」
だから彼は、私を封印した。
「失う」ことよりも「生かす」ことを選んだ。
たとえ、二度と会えなくなるとしても。
「……馬鹿ね。私が生きてても、あんたがいなきゃ意味ないじゃない」
「……そうだな。今ならわかる」
彼は足を止めた。
地下の最深部。
巨大な扉の前。
アークの安置所だ。
「開けるぞ。……全ての真実が、そこにある」




