第21話:禁書庫の守り人
王都の手前にある地下図書館。
ここは王家の極秘資料が眠る場所だ。
私はカイゼルに内緒で、ここに忍び込んだ。
「星喰い」について調べるために。
(……ここ、覚えてる)
三百年前、カイゼルはよくここに籠もっていた。
「歴史の勉強だ」と言っていたけれど、本当は何を調べていたのだろう。
「……お探し物は?」
司書のライブラが声をかけてきた。
自動人形。三百年以上前からここを守り続けている機械だ。
「「星喰い」に関する記述を」
「……閲覧権限を確認します。……生体認証、アリア様。権限あり」
ライブラは奥の棚を指差した。
そこには、黒い革表紙の日誌があった。
「王家極秘日誌・第三王子カイゼル著」
震える手でページを開く。
*○月×日*
*星喰いの接近を確認。予言通りだ。*
*奴は「最も純粋な魔力」を狙う。つまり、アリアだ。*
*彼女を守る方法は一つしかない。アークによる完全封印。*
*だが、それは彼女の時間を奪うことだ。俺にそんな権利があるのか? *
*△月□日*
*父王と対立した。父は「アリアを囮にして星喰いを倒す」と言った。*
*ふざけるな。彼女は道具じゃない。*
*俺は父を殺してでも、彼女を守る。*
*たとえ、彼女に恨まれようとも。*
涙が溢れた。
彼は、父王と戦ってまで、私を守ろうとしていた。
「国のために死ね」という言葉は、父王の方針だったのだ。
カイゼルはそれを自分の言葉として語ることで、父王(国)への憎しみを自分一人に向けさせようとしたのだ。
「……馬鹿よ、本当に」
私は日誌を抱きしめた。
彼の愛は、あまりにも重く、そして不器用すぎた。
†
「活字は嫌いじゃああああ!」
ドミノ倒しのように本棚が倒れ、龍神が現れた。
本に埋もれて暴れている。
「アリア! こんなカビ臭い場所より、外で運動じゃ! 筋肉こそ正義!」
「……龍神。あんた、知ってたのね」
私は涙を拭いて、龍神を睨んだ。
「カイゼルが、父王と戦っていたこと」
「……フン。あやつは親不孝者じゃからな」
龍神はそっぽを向いた。
でも、その尻尾は嬉しそうに揺れていた。
彼もまた、カイゼルの理解者だったのだ。
†
図書館を出ると、カイゼルが待っていた。
私が持っている日誌を見て、彼は顔色を変えた。
「……それを読んだのか」
「ええ。……全部、書いてあったわ」
私は彼に近づいた。
殴りたい。抱きしめたい。
感情がぐちゃぐちゃに混ざり合って、言葉にならない。
「……行くわよ。王都へ」
私は彼の腕を掴んだ。
もう、離さない。
真実を知った今、私は彼を一人にはさせない。
星喰いだろうが、父王だろうが、私が全部ぶっ飛ばしてやる。
図書館を出ると、王都の方角の空が、赤く燃え上がっていた。
決戦の時が来たのだ。




