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はるかの日々  作者:
89/170

89.熱狂のミラージュ

年末まで僅かとなった頃、大学は冬休みとなり誰もが暇を持て余していた。佐倉とマモルらを除いてだが。


マギプロジェクトでは精霊の介在が確信へと至り、それを視認できるみしゃぐじ様と倉持友梨佳より多大な協力を頂いて自意識を持たない下位精霊を装置に憑依定着させることにあっさりと成功。信じ難い短期間で装置の魔素変換効率を爆増させた。

元素属性を固定化することで一装置で一属性しか発現出来なくなった訳だが、そこから得られる力はまさしく永久機関に近しいものとなった。

可能性でしかなかったプロジェクトは利権渦巻く実利へと昇華したのだ。

だからマギプロジェクトメンバーは超多忙なブラックゾーンへと皆んなが堕ちた。



「ハルカ、お願い。士気上げを。皆んなの、ボクの心に光を………暖かい癒やしを」


マモルもだいぶ煮詰まっているようだ。


「うーん、具体的には何をすればいいんだろう?」


「………リクエストが多かったのはラムジーだね」


それはまたマニアックな。


「触れないのに?」


「それでもいいらしい。聖女の次にミラージュ人気が高いんだ」


単一人物へのブランド化?


「まぁ、そんなんでよければいーけど」


年末は29日まで勤務日となっている。その日に行われる打ち上げパーティーにゲスト参加することが決まった。あと僅かな日々ではあるが、メンバーらは沸いた。


「ラ、ラムジーに、いや、ミラージュに会える………成果を示さねば」


「ご褒美が貰えるくらいの成果を」


「わたしこそがミラージュのご褒美に相応しい」


「ミラージュはわたしのものだ!」


だいぶ病んでいる。それが何者で誰のものかなんて皆んな知っている。なのに誰も突っ込まずむしろ励まし合って競い合って盛り上がっている。

それは半ば神であり、皆んなの御本尊であり、語らえる聖女であるから。公共の存在と化しはじめているのだろう。

◯◯機関説的展開。

熱狂の中、年末の数日が過ぎていった。



12月29日、15時20分。習志野駐屯地。


「みなさ~ん、こんにちは。幹事兼進行役にまたしても選ばれました佐原巴です。どうぞ宜しく。まずは各々のグラスに飲み物を満たして下さい………行き渡りましたか? それでは乾杯の掛け声はリーダーのDr.ガーランドにお願いします」


「ご指名に預かりましたウィリアム・マモル・ガーランドです。年末に急展開した装置の原理転換でしたが、どうにか形にはなりました。年明けにはさらなる進化が見込めます。これらの成果は皆さんの尽力あってこそです。本日はそんな皆さんに細やかながらの振る舞いをさせて頂きます。それではマギプロジェクトのさらなる発展を祝し、乾杯!」


「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」


「「「「「「「「チアーズ!」」」」」」」」


飲食と歓談が始まった。この会場内にまだ遥はいない。

開始45分ほどが経過したところで会場が俄にざわめき出す。


「ミラージュ?」


「おい、アレって?」


「まさか………宣言無しでか!?」


メイド服らしき衣装を着た垂涎の美女は会場内を舞うように移動する。


「ああ、ハルカ。やはり君は美しい」


マモルまでもが見惚れている。100人を超える参列者らは言わずもがなだ。誰もが魅入られたように遥に見惚れている。

渇望、懇願、崇拝………求める想いは千差万別ながら、誰もが例外なく遥を求めた。


「ダメだ! 触れられない」


「ああ、神よ!」


「なんと尊いことか、奇跡がそこに」


「我らが存在意義たる貴女様!」


「私は頑張りました。この先も貴女の為に捧げます」


「どうか私を見て! 1秒でいい、私をその瞳に写して下さい!」


ある者は泣きながら、ある者は恍惚の表情を張り付けて、そしてある者は歓喜に身を震わせていた。

彼ら彼女らは報われたのだ。自らの才気をフル回転させて各々が成果を挙げてDr.ガーランドへ上納する。その褒美が今下されている。

なんと幸福なる時間であろうか。


なんと1時間ものあいだミラージュは会場に留まり飲食までしていった。

その間、女性にはボディタッチや頬や手の甲へのキスを、男性には手繋ぎを施して回り、触れ得ざる者から触れられる奇跡を誰しもが体験した。


聖女に帰依した熱烈な信徒らはこの日さらなる楔をその魂の奥深くに打ち込まれた。皆の熱狂はピークを超えて次のステージへ。

まぁ、遥の労いからくるサービスなのだが、これ以降の信徒らの信仰の厚さと熱さは自己責任とも言える。


来年度からは彼等が遥の大学へ特別講師として出向くのだ。世界的頭脳の提供。そんな彼等の徹底的依怙贔屓と称賛に遥は追い詰められてゆく。

学校すら平穏の地ではなくなる遥の明日はどっちだ?

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