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32話 交渉

〜アリス=グレース〜


「…まるで物語の主人公みたいな人だったなぁ」


従者であるペラに変えの服を着替えさせてもらいながらそう思った。


冒険者のB級…いくら崩れと言ってもその実力は折り紙付き王都の騎士団員として応募が可能な実力。


それをいとも簡単に討伐してしまった。


あの人のランクはB-…本来ならば討伐などもってのほか共に殺されてしまう所。


ギルドのランク設定は間違えているのかと思ったがギルドは唯一権力の影響を受けない場所。


私達がとやかく言える問題ではないのだ。


でも…あれだけの実力を持ちながら最近滅んだという国は調べさせてもない上にソフィアが言うには我々が持たない知識を持っている。


つまりそれが指すのは…「“勇者”」


でも勇者召喚の報告はない上に単独行動している…召喚した勇者は国は自国から動かないようにするはず。


謎は深くなっていくばかりだ。


「お嬢様、出来ましたよ」


そう頭を働かせているとペラが服を整え終えてくれたみたいだ。


「ええ、早速いきましょうか」


この謎については彼との対話の中で探りを入れながらスキルを使って解決するとしましょう。


〜ツキシロ〜


「では向かいましょうか」


アリスさんとペラさんが戻ってきたので彼女達が乗ってきていた馬車を修復し俺は馬の手綱を握って操作をしていた。


いつ乗馬のやり方を知ってたかって?そんなの知らん。


阿頼耶識のお陰だ。


うちはいろんな習い事や武道はやらされたが流石に乗馬はやったことがない。


しかし阿頼耶識を使うと自然と今までやってきたかのように分かった。


しかし、ここら辺は盗賊が多いのか街の復興が完了したら道の整備と…ってやる事が一向に片付かないな!?


しょうがないこれも彼女と今世で会う為…我慢だ我慢。


そんなこんなで馬車に乗りながら数十分フィリップ領に到着した。


「はぁ…あのフィリップ領がここまで復興するとは」


二人して復興の様子を見て驚いていた。


そんなに酷い土地だったのかここは。


しかし、なんというか仕事が早すぎる気がするヨル達の腕がいいんだな。


「さてお二人ともまだ貴族らしい装飾などはありませんが私の屋敷で話をしましょう」


前フィリップ領領主の屋敷が綺麗な状態で残っていたので再利用させてもらってる。


もちろんふざけた装飾は売らせてもらったが。


確かちゃんとした客室があるからそこに通せば文句は言われないだろう。


貴族様の口に合うか分からないけど紅茶もあるしね。


そんなこんなで紅茶を淹れたり茶菓子を用意したりで俺が席に着いたのは案内してから数分経ってからだった。


ペラさんが動こうとしてきたが客人なので座ってもらった。


凄い腑に落ちない顔だったけど。


そうして3人で紅茶を嗜んでいると先に話題を持ちかけてきたのはアリスさんだった。


「フィリップ様、先程のこと改めて感謝いたします。自己紹介がまだでしたね伯爵家令嬢アリス=グレースと申します、以後お見知り置きを」


「こちらこそ、グレースさん」


「ではフィリップ様、早速本題に入りますがジーニーさんから侍女や文官の話は聞いているでしょうか?」


「ええ、聞いていますよ」


「グレース家は代々優秀な文官と侍女を輩出してきました、今回はジーニー様の命で何かルア様の要望があればそれに対応するようにと言われて参りました」


なるほど、ジーニーさんに頼まれてたのか、しかし文官か、どんな人か分からないな。


まぁ自分の中にあるイメージを伝えるとしよう。


「収支をまとめたり交渉などが担当できる文官が良いですかね。


生憎私は領地経営という物をした事がないので」


「成程、それならばご要望に合った文官が用意できるかと。こちらでもフィリップ様の領地経営を補佐できる文官を選んでおきます。


そして話は変わってしまうのですがフィリップ様の出生について聞いてもよろしいでしょうか?」


「ええ、良いで…すよ?」


今何か弱い電流が走ったような。


阿頼耶識で鑑定…ああ、なるほどね。


「アリスさん、出生に関しての事はある程度は答えますが、心理干渉系のスキルの使用はやめてください」


「っ!?申し訳…ありません」


きっと俺は出生が曖昧だそんな所に手に塩かけた文官が行くとなったので心配で俺の本性を知ろうとしたのだろう。


「今回は不問としますが次からは気をつけてください。」


「はい」


「私の出生に関しては昔に滅びた国の血筋の末裔というしかありません、これ以上話すのは少々長くなりますから」


まさか神様に転生してもらったんです!なんて口が裂けても言えない。


この設定を貫き通すとしよう。


「分かりました、ではこれは私の興味本位なのですがあなたの刀術はとても見事な物でした、あれは一家相伝の技だったりするのですか?」


そつか、こっちでは刀術がそこまで発達していない、そりゃ流派なんてないか。


「私の刀術のうち三つは他者にも教える事は可能です。


しかし他の技に関しては門外不出の技術いくら恩がある方でも家族以外に教える事は出来ません」


月城流は天原流と違う基本の方である、[疾風][時雨][霞]に関しては門下を開いていた。


そうやって門下生が様々な形に進化させていくのを取り込み月城流は進化していった。


しかしその他の技は門外不出だ。


例えばさっき使った[水面月]もその一種だ。


「では、もし領地が安定すれば三つの技を私の護衛達に教えていただく事は可能でしょうか?」


「ええ、それは全く問題ありませんが護衛は先程全滅したのではないのですか?」


「いえ、あれは護衛の中の一部なので問題ありません」


そんなに護衛いるんだ…。


「分かりました、もし安定したならば私の技術を教えましょう」


「私の我儘を聞いていただきありがとうございます。


では、フィリップ様に合った文官を送れるよう準備させて頂きます。


それと話は変わるのですがフィリップ様は“勇者”についてどこまで知っておられますか?」


勇者…って言うと魔王とか魔族に敵対する光の存在!って感じのイメージが強いけど、それ以外だと召喚されるとかそんな感じかな。


「魔族に対抗するための存在のような事を聞きましたがそれ以外は特に」


「分かりました、勇者というのはフィリップ様がおっしゃった通り圧倒的な力を持つ魔族に対抗するための人間側の兵器の事を指します。


勇者は基本的に国が任命した魔術師が複数人で数日かけて召喚しますが何処の世界の人物でどんな人かは分かりません。


しかし特徴として魔族に対する有効打と別世界の知識を持っている事が挙げられます、当然ですが勇者召喚を行うときは周辺諸国へと通達を行わなければいけません、要は武力を独り占めさせないためですね。


召喚された勇者は基本的に自由に行動する事は出来ず王宮などで待機させられ緊急時に駆り出される存在です。


さてここまで勇者について説明してきましたが単刀直入に聞きたい事があります、フィリップ様は勇者なのでしょうか?」


確かに俺は勇者の特徴に当てはまっている。でも俺は誰かに召喚されたわけではないし魔族を滅ぼすなんて使命は与えられてない。


そこから考えると俺は勇者ではない、でも特徴には当てはまる…矛盾ばっかだな俺の存在。


とりあえず…「きっと私は勇者ではありません、現にこのように自由行動を行えていますし誰かに召喚されたわけではありませんので」


「なるほど…分かりました、私の質問に答えてくださりありがとうございます。それでは」


そうして彼女はいつのまにか呼んでいた護衛達と共に帰ろうとしたがまた盗賊に襲われでもしたら面倒なので結局俺が護衛の一人として付くことになった。

読んで頂きありがとうございました少しでも面白い。続きが読みたいと思ったらブックマークと感想、星をたくさんつけてもらえるとモチベーションになりますのでお願いします!

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