21話 取引
「はぁ…はぁ…勝った…のか?」
さっきの魔族との一戦…冗談抜きで一回でも判断を間違えたら死んでた…。
無理に動いたせいか全身が痛い、でもそれ以上に…ある感情で満たされていた。
やっと恵麻の技を使えたんだ…。
やっと…。
って今はそんなこと考えてる余裕ないな。
なんとも言えない感情に満たされていたがすぐに現実に意識を戻す。
さっき首は切ったけど…魔族が首を切ってハイお終いって事は少ない。
現に今…魔力が小さいが残っている、全身痛い上に膝が笑ってるがすぐに型の体制をとる。さっきと同じ技はもう出せない上に月城流の技すら出るか危ういな。
[暁]ぶち抜け」
残っていた魔力に向けて暁を放つ。
そうして晴れた煙から見えたのは。
暁で所々焼けていたが、さっき与えたダメージが嘘のように佇む魔族だった。
…おいおいふざけんなよ、あんだけ暴れといてまだ元気なのかよ。
ここからの再戦は流石にもう無理だぞ?
「小僧…もっと遊んでやりたいがな童とて暇ではないのだ、じゃが良い運動にはなったぞ?感謝しよう。童は今とても気分が良い故に小僧の命は見逃してやろう」
…何を言ってるんだこいつは?さっきのが遊び…?俺は…遊ばれてたのか?
本当の実力差という物を自覚した、こいつと俺じゃあどんな小細工をしても埋められない差があったんだ。
「次会う時はもっと童を楽しませられるようにしておけ」
そうして魔族はどこかへ消えてしまった。
もっと楽しませられるように…?俺は玩具かよ。
でも正直安堵してしまった、あのまま戦っていれば確実に殺されていたから。
「くっ…そがぁ」
事実上の敗北をしたという屈辱と安堵した自分の弱さが露呈した事で何か黒い感情がお腹の中心に集まる感覚だった。
…なんだ、視界がぼやけてる…?
さっきまで鮮明に見えていた視界が赤くぼやけていた。
自分の体の状態を確認する。
全身のあちこちから血が流れていた。
「は…はは」
自嘲に似た笑い声を上げる、そうか…そうだよな、あいつが何もせず行く訳ないもんな。
そうして視界が空のみになってから目の前が真っ暗になった。
…ここは?
さっきまで闘技場にいたはず、それにここは何故か見覚えが…。
あ、ここは初めて神様にあった場所かって事は…俺死んだ?
「…正確には死んではいない、私が呼んだ」
少し前に聞いたばかりの声が聞こえた。
「あ…神様お久しぶりです」
「久しぶり…と言えるほどの年月は経ってはいないがな」
「あ…はい、そうですね」
怖い!なんかこの人怒ってる?
「怒っているわけではない…ただ少々厄介な問題が起きてしまってな」
そうして神様は難しい顔をしていた、あと普通に心読めるの忘れてた。
「それは…魔族の事でしょうか?」
「いや…魔族に関しては世界の設定の一部だから大きな問題ではないが、もっと別の問題だ」
…神様から言わせれば俺だってシステムの一部なんだろうなぁ。
「……まぁいいか。月城 柊ここで一つ私と取引をしようじゃないか」
「取引…?」
神様との取引…ってなんで神様と取引する事になってんの?俺ただの一般人よ?
「一般人と言うが、君はその中でも上澄だ私が取引を行うに値する人物だよ」
…神様にそう言われるのって嬉しいな、これももしかしたら神様の話術の一部なのかもしれないけどね
「取引内容は君があの世界における世界観測者と呼ばれる存在になる事だ。どうかな?」
世界観測者?何それ知らない。
「簡単に言えば読んで字のごとく世界の観測者の事だ、観測者とは言っても一定の階級の神々と同程度の存在だがな。
一番それに近いのはアカシックレコードだ、それをイメージしてもらえれば良い、世界を記録する者と言っても差し支えはないよ」
…つまりこの神様は俺に神になれと?出来るの?そんな事。
「そう簡単に人が神になる事は出来ないが君なら自ずと出来る確率が高いだろう、方法に関しては伝える事は出来ない。禁忌に触れてしまうからね。さてどうする?受けるか?」
…正直神になんて成りたくはない、でも神様には恩があるその恩返しの一つとして受けるのは良いんじゃないか?もし神達の一員となれば彼女にまた会えるかもしれないし。
でも仮に仮にだ達成できなかった時のデメリット…それは聞いておきたい。
「仮定の話ですが達成出来なかった場合どのようなペナルティがあるのでしょうか?」
「ペナルティ…と言って良いのかは分からないが君のいる世界で手に入れた力全てが失われると考えておいて欲しい、期間としては君が天寿を全うするまでだ」
…命に関わるペナルティではないのか、それに自身の天寿を全うするまで…これ俺にしかメリットがないような気もするけど…せっかく神様が取引を持ってきてくれたのでこれを受けないのは勿体ないだろう。
「はい、受けます神様」
「よく言った!月城 柊!では報酬の一部を前払いとして授けようじゃないか。そうだな…君の想い人…天願 恵麻との縁を結ぶと言うのはどうだ?」
………………?
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え?どゆこと?情報が完結しないんだけど?そんな簡単にポンポン人転生させて良いんですか?
「あ、リソース結構食うから私とはしばらく会えなくなる、質問があるなら今のうちにしてくれ」
あ、ちゃんとリソースとかあるのねそりゃそんな生き返らせてたらまずいか。
「では彼女…恵麻とはどのような形で会うのですか?」
仮に結んでもらっても会うのが老いてからとかだったら洒落にならない。
「細かい事は言えないが君の行く道で会う事になるだろう、それはそうと君は魂と名前をそのままあっちの世界に持っていったが、天原 恵麻については記憶のみ引き継ぐ形になる。
そして相手が気付けないなんてリスクはないから安心してくれ。
しかしリソースの関係で完全に分かる訳ではないが前世で何か縁があった人…のように感じるようにはしてある。
まぁそこから記憶を思い出させる手段は君次第だな、君にも同じような処置をしておこう」
成程、まぁ良くある前世の記憶を思い出すってやつか。
「あ、無論貴族の娘に引き継がれる事になるから君に会うまでは処女だぞ」
「ぶふぅっ!」
やべ、神様の前で思いっきり吹き出した。いや確かに処女の方が良いけどさ…今言わなくても良くない?
「今世での君と彼女の出会い方を詳しく言い過ぎればリソースが足りなくなり天原 恵麻を転生させる事が出来なくなる。
しかしヒントぐらいなら問題はない。
君の滞在している姉妹国の伯爵家とだけ伝えておこう」
僕の所の姉妹国…後でジーニーさんに聞いてみようかな。
それはそうと…「神様」
「なんだ?」
「一つ分からない点があります」
「申してみよ」
「何故ここまでしてくれるのですか?神様には何のメリットもないというのに」
純粋な疑問だった、神様は俺に対して全然見返りを求めようとしない、さっきのペナルティだってあってないような物だ。
「それは…最初はお詫びの気持ちとしてのギフトで今回は取引による正当な報酬だ、前者は何も求めていないが後者はちゃんと対価が存在する、当然必ず果たしてもらおう」
「はい、分かりました!絶対に達成します」
その意気だ。そして彼女を生き返らせ縁を結ぶという破格の報酬のこれがあればより頑張ってくれるだろ?」
よく分かってますね神様、俺という人間を。
…それはそうと、神様達って結構管理雑?死者蘇生なんて本来禁忌に当たりそうだけど。
「雑とは失礼だな、ちゃんと管理しているんだぞ?最後の確認だ。
別にこの取引は無理に引き受ける必要はない、見たところ君は神にはなりたくないようだ。
別にまた通常の輪廻転生で会える確率に賭けると言うのも間違ってはいないと思うぞ?前世の記憶を思い出す保証はしないが
それでも君はこの取引を受けるか?」
「…お気遣いありがとうございます。でも俺は…いえ私は神様を信じています、なのでその取引を受けます!」
「信じているとは…昔を思い出すよ、さてそろそろ時間だそれはそうと死んではないけど、傷によって数日間寝てることになってるから状況処理頑張ってね」
「え、ちょっ神様ーー!」
そうして初めて転生した時と同じように光に包まれて行った。
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(少し時間があったので書く事が出来ました)




