そこですんじゃねぇ
「おっと、ちょっとしょんべん…」
そう言って男の一人が立ち上がる。
おいおい、やめてくれよ、このあたりの地面に根っこ張って栄養分吸収してるやつだっているんだぞ!はい、私です。
でもここまで黙ってたし、今更声かけるのもなぁ…。できるだけ遠くでしてくれると助かるんだけど…って…えぇえ!?!
なんと男はあろう事かこっちに向かって歩いてくるじゃないですか!まじでふざけんなよ!
「おい、あんまり離れんなよ。魔物に襲われても助けにいけなくなる」
アニキが男に声をかける。余計なことすんなずっと遠くへ行ってからしろ!
へーいと気の無い返事をしながら私が擬態する草むらの前まで来ると、ブツを出そうとズボンに手をかけ…
「ごるぁあああ!ここでおしっこするんじゃなぁぁぁぁい!」
た瞬間に私は吠えた。そりゃもう全力で。何が悲しゅーて盗賊(暫定)のナニを目の前でポロリされた挙げ句おしっこかけられなきゃならんのだ!断固阻止!
「……っ!」
「ひぃっ!?」
「魔物…!?」
「アルラウネか!下がれ!魅了をかけてくるぞ!」
アニキによる迅速な指示。魅了ってなんぞ。
「かけるわけ無いでしょうが!ばっちい盗賊魅了して私になんの得があるの!?はいそこのあんた!トイレはあっち!私と逆側で離れてしなさい!見えないくらい離れてよね!」
まくしたてると、私に驚いて尻もちついてた男がオロオロしながらス、スンマセンと謝りつつ逆側へ歩いていった。
ポカーンと口を開ける他の盗賊達へ視線を向け
「あんたたちもここ使うのはいいけど汚さないでよね。ゴミは持ち帰り、来たときよりも美しく、わかった!?」
小さい緑の幼女に怒られて、唖然としながらコクコクと頷くおっさん達。ちょっと面白い。
「…あー、その、ここはアンタの縄張り、ってことか?ズカズカ入っちまって悪かったよ。一晩休んだら出てくからとりあえず襲わないでくれると助かる」
最初に正気に戻ったらしいアニキが、こちらが話ができる相手だとわかったのか一度構えていたナイフを腰に戻し、話し合いの姿勢。
「別に休んでく分にはいいよ。襲わないし。さっき言った通り、トイレとゴミだけ気をつけてね。あ、なんだったら場所代替わりに色々聞かせてよ。(この世界に来てから)人間と会うの初めてなんだよね。」
「助かる。おい、お前らも武器を下ろせ。」
鶴の一声ならぬアニキの一声。子分たちはこちらを警戒しながらも武器をしまう。統率がとれてるようで何より!