はじまりはじまり
この世界に転生とやらをしてから数年。長かったような短かったような。殆どが日向ぼっこをしてたので大して語る事の無かった日常は突然に終わりを迎えたのでした。
簡単に私のことを話そう。
私はいわゆる転生者。地球の日本と言う場所で生まれ育った私は16歳、高校の入学式当日に見事トラックとぶつかったのでした。左折車両の巻き込み事故だって、怖いね。花のJK生活0日目にして終わってしまった、デロデロデロデロデデンデデン。(ゲームオーバー音)
幸い?にして痛みを感じる間もなく即死だったので、辛くはなかったよ。無かったけど、気づいたらこの世界に生えてた。
そう。誤字でも比喩でもなく、私はこの世界に生えてました。
にょっきり。
というのもですね、意識が戻ったときに自分のからだを見るじゃないですか。そしたらまぁなんと小さい可愛いおててと、ぷにぷにとした足。ぷっくりとしたお腹。いわゆる幼児体型。大事な場所を隠すようにスカート状になった葉っぱ。そして何と言っても特徴的なのは……なんと全身緑色!
これはアレですね!ゲームなんかで言うところのアラウルネというやつですね!
魔物じゃねーか!
と、最初は驚いたもののなんともまぁこの体、ほんとに便利だった。
だってまず、食事はいらない。足先が地面に埋まってるのよね。多分根っこでそこから栄養を吸い上げてるのか常に充足感があって、飢えたりしないみたい。あと私がいる場所が日当たりがいい場所だったのも良かった。太陽きもちー。という事で太陽の下だと常にリジェネ状態。HPが常に回復し続けている。
あ、そうだ。ありましたよ。みんな大好きステータスオープン。やっぱりこれがあるとゲーム感が増すよね。でもなんか数値じゃなかった。
LV1 名も無きアラウルネ
HP、やべぇパない
魔力、数えるのを諦めるレベル
攻撃、我が拳の前には塵芥に等しい
防御、すべてがそよ風の如く
速さ、神様といい勝負のかけっこができそう
精神、オリハルコンとミスリルとアダマンタイトの合金くらいカッチカチ
スキル
鑑定
アイテムボックス
植物
あ、これは、と思ったね。そう。チート。何言ってるかは全く、そうまっっっったくわからないがかなりの上位なのだろう。多分。これで上位じゃなきゃ上位の人間のステータスはポエムとかになってるんじゃないだろうか。
そしてスキル数より基礎ステータスを高くする事を優先したかのようなステ振り。ステータスは高く、スキルは、シンプルにという構成、実に私好みである!神様(?)はキャラ作成を、よくわかっていらっしゃる。一発大火力もいいけど、私は消費少なく、継戦能力が高いのが好み。基礎ステータスは裏切らない。
スキルは少ないけど、異世界チートとも呼べる鑑定、アイテムボックスもちなのはグッドですよ!…というかこれホントに私好みなんだけど、作ったの私じゃないよね?覚えてないだけでキャラ作成したの私のような気がするぞ、このスキルとステータス…。
太陽下だと常にリジェネなのは植物スキルの効果っぽいな。
つまり植物スキルは種族特徴的に取得しなければいけなかったスキルだろう。
ふむふむ、と自分のステータス眺めたり、日向ぼっこしたり、通りがかった動物鑑定したり、動物をツタを伸ばして捕まえて、植物スキルで作った果物をあげて餌付けしてみたりしてたら数年が経ってたというわけだ。
さて、話を戻そう。
そろそろ薄暗くなってきた森の中、眼の前には5人の男、ゲヘヘとか言いそうな悪人ヅラ。薄汚れた衣服に浅黒く日焼けした体、申し訳程度の防具にナイフを持っている。
うーん盗賊!
い、いや、まだ盗賊と決まったわけではない。ちょっと小汚くて顔が悪人ヅラなだけの一般人かもしれないよね。見た目で判断するのヨクナイ!
「アニキィ!ここまで逃げれば大丈夫じゃないですかい!」
「そうだな、追手の声もしなくなった、一旦止まるか」
「ったく、商人の奴ら、あんなに護衛を連れてるとは…」
「肝が冷えたなぁ、銀クラスの冒険者パーティと知ったときは終わったかと思ったぜ。金目のもの何も奪えなかったぜ…ちくしょうが!」
うーん盗賊確定!
男達はその辺に座り込んで休み始めた。
私?私は今体を縮めて、あたかもそこら辺の雑草ですよ〜って感じで立っている。擬態ってやつだね。ただの草みたいな見た目になれるんだよ。スキル植物、なかなか汎用性が高い。
「アニキ、この人数でマルディア商会を狙うのはちっと無理があったんじゃねぇですか?いくら馬車1台だったとはいえ…」
「うるせぇ!わかってんだよ!んな事は!あいつ等逃がしちまった以上は討伐依頼が出るだろうし、明日にはこの森を抜けて隣国まで逃げるぞ!今日のところはここで野営だ!明日は急ぎになるからしっかり休んでおけ!」
アニキと呼ばれる男の号令で小休憩から本格的な野営の準備に取り掛かり始める男達。
え、ここですんの?確かにこのスペースは私の趣味で落ち葉とか小石とか雑多なものはスペース外へ掃き出してるし、地面の凸凹も植物魔法で根っこ使って整地してるから変な凹凸もない。野営にはもってこいの場所なんだよね。まぁちょっとした滞在くらいなら許してやるか。あ、でもゴミ放置したら許さないかんね!
地面の下から根っこを伸ばして本体をスペースの端っこまで移動する。
すごくない?なんと、根っこを伸ばしたその先へ本体を移動させることが出来るのだ。根っこさえ伸ばせば瞬時に移動できるため擬似的にワープみたいなことが出来る。ついでにいうと、体の至る所からツタを伸ばせるんだけどその先へ本体を移動することも出来た。何でもありだな植物スキル。
久しぶりの人間の会話を聞きながら隅っこでのんびりしてた私だけど1時間ほどした時、事件は起こった。
不定期連載ですのでご容赦ください。エタる可能性も全然ある