背伸びはするもんじゃない 6/6
俺は母親に今日の出来事を話した。俺の自転車がいたずらされた事。ママチャリで遊びに行った事。帰り道に転んだ事。タクシーのおじさんが家まで送ってくれた事。
「なに?タクシーのおじさんが送ってくれたの?そりゃお礼を言わないとねぇ」
母親が親戚のおじさんに電話をしている。親戚のおじさん。正確に言うと、母親の弟である。おじさんはタクシー会社で働いている。
「あぁ、あそこの喫茶店にいるの?分かった。ありがとうねぇ」
「えっ。どこにいるか分かったの?」
「うん。どうやって探したか分からないけど、すぐに居場所分かったよ。タクシーって怖いね」
凄いよりも恐怖が勝った。監視社会。すぐ目の前にきているのだろう。
母親が俺を連れてスーパーに向かう。
「喫茶店に行かないの?帰っちゃうかもよ」
「手ぶらじゃお礼も言えないでしょう。喫茶店にいなくっても、ケン坊のとこで働いてるらしいからいいよ」
ケン坊とは親戚のおじさんである。
スーパーで何を買ったのかは分からない。紙袋に入って、綺麗に包装された箱。それをもって、最終目的地である喫茶店に向かう。
目的の喫茶店。そこにタクシーのおじさんがいた。
「あの人かい?」
「うん」
「あんたも行くよ」
なんか照れてしまう。これは大人になったらなくなる感情なのだろうか。しかし、こればかりは大人になってみなければ分からない。
「先程は息子を家まで送ってくれてありがとうございます」
「ありがとうございます」
母親が先陣をきってくれたお陰で助かった。いい仕事してますねえ。
タクシーのおじさんは愛も変わらずに優しかった。母親とタクシーのおじさんを見ていると、平和とはこういう事を言うのだろうと思う。世界のどこかで戦争が起きている。この光景を見ていると、嘘のように感じてしまう。
今回の経験で得たもの。平和は良いことである。これ一点に尽きる。
俺もこんな平和な世の中で、優しい心を持ちたいものである。




