伝える魚と伝えられない私
私は、虐めに合っていた。
それはとても恐かった。
友達は見てみぬフリ。
先生も、気付かないフリをした。
私は限界だった。
今すぐにでも、"向こう側へ"
行きたいとすら。考えて居た。
私は学校を休む様になった。
学校に行かなければ、何とかなると思った。
でも。違かった、、
私は。夢の中まで、追い詰められていた。
そんな私に、ようやくお母さんが聞いて来た。
「虐めにでも。あってる、の?」
「ぅん、、」
たったそれだけの事を伝えるのに。
私は随分と時間が掛かった。
『怖い』
その思いが。
私の中を行ったり来たりして。
時にはずっと居座った。
言いたくても、言いたくても胸がアツくなって。
身体が震えた。
気が付けば泣いてる事も、ザラじゃなかった。
お父さんとお母さんは、いつも仕事で忙しかった。
私はそんなふたりの事を考えて。
なかなか伝える事が難しかった。
『考え過ぎなんじゃ、ないの?』
『気のせい、だよ?』
そうやって言われるのが、恐かった。
学校のカウンセリングみたいのもあった。
「ゼッタイニ。ダレカニイッタリ、シマセン!」
そんな言葉が。
信じれる訳も無かった。
お母さん「暫く。学校には、行かなくても良いから。
お家で。好きな事をしてなさい、?」
問題は呆気なく解決したかには思えたが。
私の傷が、直ぐに癒える事はなかった。
もう、そうじゃないのに。
まるで、そこに今。あるかの様に、、
"恐怖"は、ずっと私に付きまとった。
誰か。
誰か、助けて、、
誰か。
分かって、、?
ダレカ、、
カーテンの隙間からは、光が入っていた。
そんなある日。
お父さんがいつもなら居ないはずの時間に、
リビングにお父さんは居た。
お父さん「おはよう、?」
そこにはお母さんも居た。
どうして、、。
何か。あったのかな、?
もしかして。私の、せいかな、、?
私が、、
すると、お母さんは私を抱き締めてくれた。
お母さん「ごめんなさい。
ちゃんと。話せる様な環境を作れなくて、、
辛かった、ね。
ごめんね、、」
違うの、、
そうじゃない。
お母さんは、悪くないんだよ、、
私が、ちゃんと。
上手く、伝えられなかった。から、、
ごめんなさい。お母さん。
「ちょっと。旅行にでも、行こうか??」
そう、お父さんに久しぶりに話し掛けられた。
こうして。
私は、旅行に出た。
久しぶりの外は太陽の光が、眩しかった。
家を出る時は、少し怖かったけど。
お父さんとお母さんが。一緒に手を繋いでくれた。
久しぶりに手なんか、繋いだかもしれない。
恥ずかしい気持ちもあったが。
その手の温もりと強さが。
私を守ってくれている様で、、
とっても。心強かった。
旅行先は海があり。
船が。水面上を行き来、していた。
お母さん「綺麗ね、」
お父さん「こういうのも久しぶりだな。
連れて来てくれて。ありがとう、な?
それと。ごめんな?」
お父さんは、私の頭を撫でた。
何とも言えない感情と恥ずかしさで、
私は顔を見れなかった。
お父さんとお母さんがこういう風にしてるのは。
一体。いつ、以来だろうか。
これが本当にある事なのか。
正直。夢かの様だった。
こうやって居られる時間があったのに。
どうして、こんな風に居られなかったんだろう、、
その場所に居るのに。
居たハズなのに。
どうして、、
何で。
それは大人になったら分かる事だった。
次の日は、観光をした。
って言っても、ずっと観光をしていたのだけども。
有り難い事に、人はあまり居なかった。
その夜はタイミング良く。花火大会だった。
人混みがまだ恐い私は。行くのを拒んだが。
「遠くから、、見るなら。」
と、条件付きで承諾した。
ご飯はどこも美味しかった。
今までは、こんな風には思えなかった。
お腹が空いて食べても。
『美味しい』
とは、感じ無かったからだ。
だからその感覚すらも戻った私は、何だか嬉しかった。
そんな風に思いながら、ゆっくりと昼食を取っていた。
久しぶりに口に運ぶ料理は、上手く食べる事が出来ず。
お母さんとお父さんは先に食べ終わり。
気を遣って、別の場所で待って居てくれた。
だから。私はゆっくり食べていた。
窓際の海が見える場所。
船が通り。
太陽の光が水面に反射して、時折眩しかった。
私はようやく食べ終わり。
返却口へと、食器を戻した。
そこは外に出られる様になっていて。
お父さんとお母さんを探そうと、扉を開けた。
「何で、また来ちゃったのよぅ、?」
「ダッテネ、オネエサンニ。
マタ、アイタカッタカラ」
「次に来たら。あなたは、
食べられちゃう。
って言ったじゃないっ。
もぉ、、?!」
私はその女の人と目が合った。
女の人「あははは。
気のせいよ。
ねっ?」
そう言うと女の人は、人差し指を鼻に当てた。
「オイラガシャベッテルコトハ、
ゼッタイニ。ナイショダカラ、ナ?」
その声は、床でピチピチと跳ねる魚から聞こえていた。
女の人「だから喋るなっ、!ってのに。
もぉ、、」
女の人は、私に近付くなりこう言った。
女の人「世の中には、ね。
まだまだあなたの知らない世界があるのよ?
でも。それは、"話しちゃイケナイ"の。
分かるでしょ?」
「、、はい。」
女の人「よろしい。」
そう言って、頭を撫でてくれた。
魚「ネエネエ??
オラト。オトモダチニナッテヨ!」
女の人「やめなさい。
怖がっちゃうでしょ?
またね。?」
私は軽く会釈をして、その場から去った。
お母さん「食べ終わった?」
「うん。」
お父さん「次は何が食べたい?」
お母さん「んー。」
「直ぐには、食べられない。」
『あははは。』
さっきの事が嘘かの様に。
直ぐ近くに。いつもの世界は、あった。
私はきちんと女の人との約束を守った。
お母さん「ここなら、良いんじゃないっ?」
お父さん「そうだな。」
私達は、いろいろ観光をしながら。
夜の花火を見れる場所を探した。
そうして、昼食を取ったこの場所に。
また、戻って来た。
昼間の女の人を探したが。
女の人は、居なかった。
けれど水槽の中に。
昼間の魚が居た。
魚は口をパクパクさせたが。
喋りはしなかった。
大きな音と共に。
夜空は一気に明るくなった。
バン!
バン!!
お母さん「うわぁ、、」
お父さん「こりゃ、すごい。」
「綺麗。。」
今日。いろんなモノを見たが。
その中でも。一番、綺麗だったかも知れない。
バン!バン!
バン!バン!
次々と打ち上げられた花火は。
あっという間に消えてしまった。
私は花火を見ながら。
あの魚の事が頭に浮かんだ。
魚だってちゃんと伝えられるんだ。
私だって、。
私は、お母さんとお父さんの手を取った。
お父さん「ん?」
お母さん「ん?」
ヒュー!
「お父さん。お母さん!」
バン!
「ありがとー!!」
私はこの旅行で。
少しだけ。
大人に慣れた様な気がした。
魚「オーイ。
ココカラダシテクレヨー。
オーイ。
オイシクナイゾー、」