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転生したら寄生鎧だった ー女盗賊ミランダとアメジストの大ダンジョンー  作者: えぐれっと
ー女盗賊ミランダとアメジストの大ダンジョンー
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4 アメジストの街

ミランダと共にダンジョンを無事脱出した。


太陽は垂直に照らし、眩しい紫水晶の光。眼下に広がる緩やかな草原の丘は、所々がくぼみや焦げ跡が殺伐としている。


更にその下に高い塀で囲われ、煙突から黒煙を立てて大きく広がっている街。


フェクトの目玉を撫でる様に横からそよ風が吹いた。正午を過ぎて、朝露の水気もなくなる時間帯。

日差しの割に冷たさを感じる風。くるぶしほどの草木が出す初夏の青臭さはとても薄い。


(ここは高原か。今は初夏…いや、夏前か?その割に涼しい。いい山風が吹いてる。)

「よく夏だってわかるね?」

(太陽が真上にあるからな。冬場は正午でも傾いた位置にあるもんだろ?あとは気温とか、植物の生え方とか。標高の高い寒いところには、背の高い木々は育たないしな。遠くに見える森も、密度が低い様に見える。)

「へぇ…物知りだね。」


彼女は一度太陽を仰ぎ見た後、穏やかに歩を進めたが、武器を握る手は硬いままだ。まだ警戒は解いていない。

丘を下っていく間に見えるのは、朽ち果てて地面に突き刺さっている槍、バリスタのボルト、投石器の焼けて砕けた石、中心に焦げた草花がいくつかある。その下からも少し緑色の草が伸び出している。


ミランダの言う、ダンジョンから湧いたモンスターが街に攻めてくるというのが本当なら、この眼前に広がる丘は、モンスターとの戦場。街での決戦を防ぐための緩衝地域だ。

雑草は足首程度まで伸びている。しばらくは戦闘が起こっていない様だ。


(思っていたより酷いな。凄い戦場の生傷だ。)


「そりゃね。でも、ウチらの生計はこれで立ってんのさ。」

(モンスターが無限に道具作ってくれるんじゃ、そうもなるな。)


フェクトは眼下に広がる扇形の要塞都市を見た。レンガ造りの煙突から黒い煙が上がっているのをじいっと見る。

鉄工所だ。見たところ石炭を燃やしている。


(争いがあれば、それだけ発展するとはよく言ったものだ。世界的に見ても、この規模は大きいんじゃないか?)

上から見るだけでも、人の往来が多いのが分かる。


「あぁ間違いない。国境を越えて別の王国から派遣された学者やらが、色んな兵器を持ち寄って魔物相手に実験台にしてるのさ。見なよアレ。」


ミランダが指を示した方向では、石柱や紫水晶の柱で作られた、集落か前哨基地の様なものがある。


その中のゴブリンの集団を、駆け出しの冒険者が荒らしまわっている。

彼女はウィザードレイスのぼろきれになったマントを羽織った。直後にマントの穴ごとフェクトの目に返り血が入る。


(うぇっ!目に血がっ!)

「はーぁ。ったく、これだ…。ローブ持ってきてて正解だったね。」


遠くで振り抜いた剣の先から、放物線を描いて飛んだ血が飛び散る。ゴブリンの集団はたまらず悲鳴を上げて逃げていく。一方的な蹂躙だ。笑い声さえ聞こえる。


(ひでーな。どっちがモンスターなんだかわかりゃしないぞ。)

「ダンジョンに入れば、ああやって笑えることもなくなるさ。ここは人間に有利な地形だからね。」


先頭で両手剣を振るっている男は、フルプレートで全身鎧を着こんでいる。やや剣に振られている様にも見えるが、足腰は体が持っていかれない程度には踏ん張れていた。


(駆け出しの冒険者って割には、装備はよく見えるな。)

「柵の外に見張りもいるだろ。偉そうにしてるやつ。」


集落から逃げようとする追い込まれたゴブリンを蹴り飛ばして、訓練生らしき者と戦わせている。


(討ち漏らしが逃げない様に見張ってるのか。)

「連中は、街の中心生まれのボンボンの冒険者さ。教育係も付いてる。手厚いもんだよね。」


ミランダはなるべく巻き込まれない様に、迂回するような足取りをする。

(その口ぶりからして、君の出身の想像がついちまった。余りいい暮らしではなさそうだな。)

「あぁ。盗みも戦闘も、我流で実力をつけてのし上がってきた。対人戦の経験だって少なからずあるよ。」

(間違いなく、人間同士の方が厄介だろうな。なるべく避けたいとこだが、絶対に起きない保証はなさそうだ。)

「中々、分かってるねアンタ。名の知れてる連中と敵対すると、帰った後にも尾を引く。食い扶持稼ぎたいだけの身にとっちゃ、迷惑なもんだよ。」


敵対を避けていれば、おこぼれに預かれる盾にもなってくれるはずだ。勝手にモンスターと戦ってくれれば、自分に対するリスクを減らせるのはメリットだ。


(ワイルドな育ちのキミの方が頼りになりそうだ。使えるものは何でも使う。いいことだと思うぞ。)

ミランダは褒められて嬉しそうに微笑んだ。

「お世辞が上手いやつ。なるべく聖職者には近づかん方がいいね。モンスターの気配を察知できる。アンタがバレちまうかも。」

(神官職か?)

「あぁ、司祭や神官、あとはシスターなんかも冒険者にいるよ。」

(シスターかぁ…)


目を閉じてフェクトは美人な金髪シスターの事を考える。両手を繋げて目を閉じて物静かに祈る。清楚な感じがやはり堪らない。


「いったそばからヤマしいこと考えてんじゃないよ。ゲスだね。」

(男ってのはそういう生き物だから…)

「全く…」

(俺がいると、懺悔もまともに出来なさそうだ。君の回復にも支障が出ると悪い気がするな。)

「ふん。ウチは単身だよ。でも、シスターと関わり合いがゼロってこともないのが痛いところさね。」

(ゼロじゃないのか…)

「知り合いがいてね…」


フェクトは今後、神職と隣り合わせで生活しなければならないことに、不安を覚える。

ミランダはゴブリンの集落を横目に、睨みつけてくる先輩冒険者と目を合わせずに素通りする。フェクトも目を閉じて、ただの防具になりきった。


彼女の背中にある魔法の杖2本と、羽織っているローブを大げさに持ち直し、戦利品を持って帰るだけの通りすがりであるアピールをする。

ボロボロのモンスターのマントでみすぼらしい格好に、振りかけられた返り血を見て、鼻で笑われた。


フェクトは少々イラついたが、ミランダは表情を変えることなく無事に高原を下って街へと入る検問へと辿り着く。


―――


【アメジストの街】



ダンジョンの巨大な紫水晶の名前をそのまま関する街だ。


検問から内側を見ても、喧噪が伝わってくる賑わい。


街並みは中世後期か、1500年代の16世紀ぐらいといったところだ。

鉄鋼の産出が盛んなのか、街を歩く冒険者達の装備はナリがいい者が散見され、水面の様に反射する金属光沢が視界にチラつく。


馬車の他に見知らぬ、恐竜の様な魔物が引く御車も、ごく少数だがある。


(迷宮の中だけならいざ知らず、地表にまであんな生き物が…俺の知る歴史には存在しない。今更だが、やはり俺の知る世界とは違うみたいだ。)


検問を抜ける為に、ミランダは冒険者のカードを見せた。


フェクトは新しい景色に期待を膨らませていた矢先、守衛には、舌打ちの後に通ってよしと言われ、登録カードを投げつける様に渡された後、彼女はキャッチして街の中へ入る。


(…景色はいいが…)


彼女の扱いは、やはり貧困街出身という差別的な目だ。ボロボロのローブがよりそれを目立たせてしまっている。

(何も言わないでくれよ。)

(ごめん。とにかく、まずはやることをやっちまおうか。)

(そうだね。)


表通りを即座に右折して、路地から路地へと人通りの少ない場所へ向かい、質屋にたどり着いて戦利品を売り払う。

特に魔法的な効果のあるアクセサリーが高額だ。

風の加護があれば、より矢は遠くへ飛んだり、風魔法が強化されたり、装備する重量に比して効果が大きく、需要が多い。


中層の入り口では付与された効果がそれなりに高く、自分で使っても遜色ないほど。


「ミランダ、相変わらず単独かい?」

「あぁ。分け前ないのが一番儲けがいいからね。買い取り頼むよ。」

「あいよ。」


店主は渡されたアイテムを持って奥へ行った。しばらくの間、フェクトは目を開けて質屋を眺める。

店頭にあるのは、まだ使えそうだが、修理も断られそうなボロい鎧やら、剣ばかりだ。


一つフェクトの目を引いたのは、両手の中指と親指で輪を作ったぐらいに太い、大きな鉄砲だ。杖型のピストル形状のグリップはなく、筒の後端には同じぐらいの太さの真っ直ぐな木の棒しかつけられていない。


(鉄砲があるのか。)

(あぁ。こりゃ火槍だね。火縄で着火するんだよ。)


(そういや騎士の時代にも、火薬はあったな。確か、イェニチェリとか言ったか…)


(よく知ってるね。確か南南東の国から派遣された兵士の事だ。鉄砲を伝来させたのも、そこの国だよ。)


フェクトは首を傾げた。言語はどこか似ているモノがあるらしい。

イェニチェリは彼の知る中では、トルコ語だ。南南東にトルコ語らしき国となると、ぼんやりと今いる場所がどこなのかが浮かんでくる。


だが、それよりもフェクトは気になることがあった。

(使わないのか?鉄砲は強力だぞ。)

街中を歩く人間達は、鉄砲など持っていない。


(イヤだね。火薬クサいと犬には追いかけられやすいし、大きな音が出るし、目は眩んで耳は痛いし、火薬は湿気るし、着火用の火も肝心な時に使えない。)


ミランダは火槍を手に持ってみるが、鬼が肩に担ぐ棍棒と同じぐらいの大きさだ。狙いを定める為に持ち直しても、体が振り回されてしまう。

(ダンジョンや君のスタイルには合わないのか。俺の居た故郷では、火縄銃も古いもんだ。まともな所持が禁じられるほど驚異的な武器だった記憶があるが。)


彼女はため息をつきながら火槍を元の位置に立てかけた。

(末恐ろしさは、確かにあるね。大砲が城壁に配備されてからっていうもの、人の倍もあるでかいクレイゴーレムすら一撃でぶち壊したんだ。今じゃ、防壁まで近づかれることすらなくなっちまったよ。)

(その大砲が、何台も平原に並んで、砲口を回転させながら動いて撃ってきたらどう思うよ?)

(ダンジョンの巨大水晶まるごとぶっ壊せちまうんじゃないかい?冒険者の立つ瀬がないねぇ。)


店主の足音でフェクトは目を閉じた。するすると触手をうなじから戻す。

(おっと。)


店主が持ってきたのは金貨5枚に、銀貨が両手から零れるぐらいにたくさんだ。

「無茶ばっかしてたら、いずれ死んじまうよ。」

「ダンジョンに入るのに、命を賭けていない奴はいない。気遣うなら、もっとこっちに色付けてくんなよ。」

コインを弾いてキャッチすると、肘をついて身を乗り出す。

「悪いね、こっちも商売なんだ。赤字は出せないよ。」

「ふん。寒い奴だね。」


コインを袋に詰めて、ポーチに入れると固く紐を結んだ。


「にしてもミランダがそのウィザードレイスのローブをつけるのも珍しいね。そのブ厚い皮の胸当ては新しい奴かい?」

「え?あ…あぁ…戦利品さ。」

彼女は慌てる様に一歩離れた。


「中層以降で、そのクラスの装備が通用するとは思えんがね。買い取ろうか?」

「いや。買い手も付きそうにないし、大した額にもならんだろうさ。使い潰すよ。」

「そうか。じゃ、また頼むよ。」


退店して、ミランダは更に入ってきた検問から遠ざかる様に、右へ曲がる。都市の左、西方向へと進む。段々と空気がよどんできた。


レンガ造りの家から一変して、傾いた木造住宅が増えてきた。幅も狭く、風通しが悪い。石炭の黒煙がそよ風にのって足元を這っている。


日中なのに空色は緑色に変色している。


(貧困街か、名前の通りって感じだ…どこに向かってるんだ?)

「信用できるヤツのとこさ。」


ミランダが向かった先は、唯一貧困街にある教会だった。


(おいおいおいおいおい、教会じゃねえか。聖職者に近づくべきじゃねえっつったろ!)

「ウチの家なんだよ。シスターさんも拝めるかもよ。」

(…知り合いがいるってそういうことかよ。)

「大丈夫、バレやしないさ。拝んでいきなよ。」

(なんかイヤな予感する。)


念のためフェクトはうなじから触手を外して、鎧になりきった。

門を開けると、荒れた教会にやせ細って項垂れている人間や、怪我をしている人物が多い。子供の姿も多く見えるが、元気がない。


(なるほど…君の出自は大体察したぞ。)

「帰ったよ。クレアおばさん。」

彼女がそういうと、奥からブーツの足音と、ロングスカートを蹴る布音が近づいてきた。例のシスターだろう。

フェクトはうっすら目を開ける。

「良く帰ったねミランダ。」

「あぁ、今回の稼ぎだよ。」


銭袋は稼いだ額の2/3だ。受け取った人物は、シスターではあるが小太りの中年の女性だった。黒髪のロングでシニヨンで束ねた、如何にも見た目が母親の中年女性。

ぼろきれのローブの穴から、薄く目を開けて、その姿を見た刹那、目が合った。フェクトに電流走る。


(まずい!ミランダ、逃げろ!頼む!)

「…?」

(エクソシストのババアは鬼強いって相場が決まってんだ!カーチャンタイプのババアには話は通じねえぞ!!)


「なんか…ミランダ、あんた不穏な気配を感じるね。そのローブ、ゴースト系のモンスターのだろ。なんでそんなもの着てるんだい。」


「え?あぁ、いや。まぁそうだけど。」

「脱ぎな!魂が汚染されちまうよ!」

「え?えぇ?」

(ヤバい!バレちまうぞ!早く!)

あれよあれよという間にローブを脱がされてしまう。

「ん?なんだいあんたこれ。」


フェクトは冷や汗を垂らした。本能が言っている。コイツはヤバいと。クレアはまじまじとミランダの胸当てを睨みつける。


「なんだか、邪気を感じるねぇ…」

(マジなのか?)

(言ってんだろ!早く!)


シスターが肩下げバッグから何か取り出した瞬間、ミランダは咄嗟に奪い取った。クレアが手に持っていたのは聖水だ。取り出した右の掌には、光属性魔法の金色の光が発現している。


ビン越しでも感じる鼻を貫く様なツンとした匂い。

ハッカ油に酷似した揮発性の高い精錬された天然の油だ。防虫や殺菌作用、揮発性が強く、火に近づけば引火して蒼く燃える。

フェクトの閉じた目にすら、風で漂ってきただけでも、かなり刺激が突き刺さる。まともに浴びれば失明も考えられるぐらいに痛い。


「ミランダ?」

「あ、い、いやこれはその…」

「なんか隠してること、あるね?」

「え、えっといやそれは…」


手を挙げて聖水を取られないようにするが、詰め寄られて彼女は言葉に詰まった。


「嘘おっしゃい!左!」

「うぐっ!」

「アンタいつも嘘つく時に左向くでしょ!」

「…ハイ。ごめんなさい…。白状するんで、どうか内密にお願い!」


彼女が両手を合わせて懇願すると、クレアはため息をついて奥の部屋に案内された。

フェクトを外してテーブルに置いて事情を説明すると、クレアは訝し気な目でフェクトにメンチを切る。彼は冷や汗を垂らして、目をそらした。


「ふーん。自我を持つインフェクテッドアーマーね…。前世が人間だと。」

ミランダを見る。

「確かにアンタの魂も穢れていない。言っていることの理屈は通ってる。コイツもやたらと人間臭い目の反らし方するし。」

「そう、だから…。」

「でもね、こいつの本能がいつ開花するかわからんよ。危険なことに変わりはないからね。」


ため息をついた後、クレアは不安げな顔をしてミランダのバンダナとマスクを取った。

ミランダの素顔は、釣り目でクールな中性的な顔立ちだ。艶やかな毛量の多い茶髪がハラりと落ちる。


(…顔は上玉なんだな。)

「ミランダ、孤児院の為に稼いできてくれるのなんて、あんたぐらいなもんだよ。本当は単身でダンジョンに行くなんてのも、やってほしくもないんだ。」


彼女はバツが悪そうな顔をして、目を左に反らしながら口答えする。


「分かってる。でも、誰かがやらなきゃ立ち行かないんでしょ。」

「だからこそだよ。危険に危険を重ねる様な真似、して欲しくないのさ。寄付金だって、もっと安くたっていい。」


(孤児院を経営するシスターか。話はよく聞く。やはりお人よしなんだな。)


ミランダの出身も教会で間違いないだろう。恩義を果たすべく、稼いでいるのだ。


「おばさん、あんたには世話になったけどさ。ガキ扱いしないでくれよ。ウチだって、もう大人なんだ。」

彼女はフェクトを掴むと、部屋を出ようとする。

「待ちなよ。」

「止めないで。ウチは行くよ。」

「止めやしないよ。だけど、そっちの鎧!」

彼はクレアの方を見た。

「ミランダに何かあったら、ただじゃおかないからね。あと、隠すならちゃんとしたローブかマントつけな。アタシの部屋にお古があるから持っていきな。」

彼は細い触手の先で、丸を作って答えた。

教会を出てすぐにミランダはフェクトを着ける。


(ひー、死ぬかと思ったぜ。)


「まさか、あんなに勘がいいとは思わなかった。」


身近な人間だけあって、ミランダは彼女のことを、ただのシスターと侮っていた。


(れっきとした神職者ってこったろ。いい人じゃないか。)

「魔物のアンタに言われんのは、なんか癪に障るねぇ。」

(事実だろ。母は強し、ってヤツだ。治安が悪そうな貧困街でシスターやるにゃあ、あれぐらいの豪胆さも必要だろう。)

ローブを着ていると、女性の声がした。


「あ、ミランダ!」


フェクトは手を振りながら近寄ってくるシスターを見つけた。黄色く、宇宙の様に美しい目。淡い金髪をなびかせて笑顔でミランダに近寄ってくる。

(ハッ…カワイイ女の子…)

「げっ、しまった。」

彼女はローブを閉じてフェクトを隠した。

(おい見せろよ、というかちょっと見えたぞ!可愛い子じゃないか!ふわふわした声、見なくても分かる!)

(下卑たアンタにはとても目に入れちゃいけないもんだよ!)


ローブの中で彼の目は虹色に光って回転する。


「どしたのミランダ?なんか光ってるよ?」

「あ、あぁ、戦利品のアクセサリーだ。」

「そっかぁ。なんか派手だね。縁日の玩具みたい。うふふ。みしてみして。」


ローブをめくろうとするが、ミランダは手を払いのけた。

「あっ、こら、これはダメ!」

「えー、ケチ!」

活発であどけない感じと言い、人を疑うことを知らなさそうだ。


「一人で出歩くなって言ってるだろ、シトリン。アンタまで病気になられちゃ困るよ。」


―――


再会を嬉しそうにする彼女は、見習いシスターのシトリン。


ミランダと同じ孤児の出だ。彼女とは血縁関係でないが、ほぼ姉妹と言っていい。

2人とも、普段から教会の離れ小屋の同じ部屋で暮らしている。

礼儀正しく善人ではあるが、男の子の様にヤンチャで悪戯好き。活発で危なっかしい子だ。

ミランダの様に目を離せる性格ではなく、普段はクレアの傍にいて、シスターの見習いとして暮らしている。


―――


「大丈夫だって。私だって、ここの育ちなんだよ!タフなんだから!」


(あ、やべえこの子絶対可愛いわ。存在が尊さに溢れてる。水差さないでおくわ。)


フェクトは目を閉じた。二転三転する彼の言動にミランダは気味悪く思い、あきれ果てる。

「ごはんもう食べた?一緒にどう?」


ミランダは彼女の言葉に表情を変え、声が低くなる。

「…いや…悪いんだけど、これからまた行くところあるから。」


「…そっか、ざーんねん。んじゃね!」


何か2人は意味ありげな間を置いた。ミランダの肩を叩いた後に笑顔を見せると、教会のドアを開けて中に入る。

「お金入れておいたから、あんたもいいもん食いなよ!」

「やりぃ~!ごちになりま~す!」


ドアが閉じる。


(…いい子じゃねえの。)

「だろ?ウチなんかには勿体ない妹分さ。」

(笑ってるだけで回りを幸せにしそうな子だ。あれは守護らねばなるまい…。)

「勝手にナイト気取って心底気色悪いねアンタ…でも、うちも同じ意見さ。」

(きっとおっぱいもデカいんだろうな。)

「…それは、ないかな。」

(ないのか。)

「ないね。さっさと行くよ。」

来た方向とは逆の方向へ、彼女は更に表通りから遠ざかる。

(…スゥーッ…まぁそれはそれで解釈一致だな。)

ミランダはゴンと胸当てを叩く。

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