表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

118/129

ドラゴン肉料理

「はふぅ……美味しかったです」


「本当にな、まさかフローネの料理の腕がここまでとは……」


 目の前には空っぽになった皿がいくつも積み上げられている。


「そんな……、御二人が取ってきた食材の手柄ですよ。私は素材の味を引き出しただけです」


 先程まで、そこにはドラゴン肉を使った料理だけではなく、様々な料理が並べられていたのだが、そのあまりの美味しさに心を奪われてしまい、俺とガーネットは口を開くことも勿体ないとばかりに奪い合うように料理を食べまくった。


「そんなことないぞ、こんな美味しい料理なら毎日だって食べたいくらいだよ」


「そ、そうですか……?」


 フローネはエプロンを弄ると、はにかんで見せる。どうやら照れているらしい。


「野営の時も凄いと思いましたけど、今日のはさらに凄かったです! お肉の皮がパリパリしてましたし、付け合せのお野菜も甘くて美味しかったですよ!」


「流石に野営だと調理する方法が限られていますから。これだけ設備があればこのくらいはできます」


 キッチン周りにある設備のメンテナンスも終わったということで、フルに能力を発揮できたらしく、フローネは今回様々な調理方法を用いて料理を作っていた。


 謙遜してはいるが、こんな美味しい料理、パセラ伯爵家でも滅多にお目に掛かれない。最近、舌が肥えてきたとは思っていたが、俺もガーネットの主張に同意だ。


「惜しいのは、この料理はお酒と相性が良い点ですね」


「ティムさん。私にもワインを……」


「駄目だ! ウイングさんと約束したからな」


 ここに戻ってくる前、ガーネットの衣類や寝具などをアイテムボックスにしまうため、パセラ伯爵家を訪れた。


 その際に、改めてガーネットの面倒を、パセラ伯爵ことウイング氏に頼まれたのだ。


 こっちに住ませる条件として「親に顔向けできなくなるようなことはさせず、ティム君が監督してほしい」と告げられている。


 両親から頼まれている以上、俺はウイング氏の言う通りにするつもりだ。


「たしかにチェリーワインはこの料理によくあっているな。肉の脂を甘みのあるワインが流してくれて口の中がさっぱりするよ」


 相性のことを言われて、俺は先程の料理の評価について振り返る。


「そうなんです! そもそもドラゴン肉の料理というのは実は扱いが難しく、私も初めてなんですけど、チェリーワインがあれば料理の味を格段に引き立てることができるんです。でも、このワインが市場に出回ることは少ないですし、ドラゴン肉も滅多に出回りません。つまり、この両方を同時に味わった人間というのはそれこそ王侯貴族の一部や大商人だけど言われています。当然料理をする側も選ばれた一流のシェフが担当するので、今回こうして私に任せてもらえて感激しているのですよ」


 どうして火が付いたのかわからないが、彼女は多弁になると一気にまくし立ててきた。


「ティムさん……どうしても駄目ですか?」


 一応、15歳で成人を迎えているので酒を呑んではいけないということはない。だが、パセラ伯爵家では彼女に酒を呑ませない方針だったので、勝手に呑ませてよいか判断がつかなかった。


「駄目だって……まだガーネットには早い」


 俺はウイング氏が言いそうな言葉を口にする。だが……。


「私はもう大人です!」


 そう言って右手を胸の前に持っていく。部屋着のため、胸元が強調されているので言葉と合わさってドキッとした。


「御主人様。チェリーワインを炭酸でわったものはいかがでしょうか? アルコール度数も下がりますから酔うこともないかと」


 フローネがそんな提案をしてくる。


 二人から訴えかけられるような視線を受け続けると……。


「はぁ、わかったよ。でも一杯だけだからな?」


「はいっ! ありがとうございますっ!」


 俺が許可を出すと、ガーネットはフローネからコップを受け取ると、美味しそうに呑むのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 酒乱に一票!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ