4.驚愕の能力1
契約はまだダメだ。
ファルが俺の決意を踏みにじった後、ミルは自室に戻り、俺はファルに客室に案内された。
「ファルさん」
「ん?ファルでいいって」
「じゃあファル。契約の事は、後で聞くけどそれと一緒に聞きたい事があって」
「何が聞きたいんだ?」
俺は、今更になって気になっていた。ミルと俺に圧倒的な差があるとか言っていたが、なんでそんなことがわかるのかと。
「なんで、俺とあのミルって子との差がわかるんですか?」
「あー、それは勘」
「え?」
ファルのその言葉に、動揺を隠せなかった。
「まあ、いろいろあるけど、クマみたいな誰とも 契約せずに、普通に話も出来る使い魔ってだけで、魔力量に限ってはだいぶ多いからな」
「へー、魔力量が多い....」
それを聞いて、今までのファルの行いが気にならなくなるほど、心が躍った。
魔力量が多い。それが本当なら、もしかしたら俺にも才能があるかも知れない。
「なんなら、見てみるか?自分の能力がどんくらいか」
「見れるんですか?」
「おう、よっぽどじゃない限り、簡単に見れるぞ」
ファルはそう言うと、ポケットからとあるビンを取り出した。
「そのビンの中身は?」
「おう、これは特殊な水でな、この水で紙を濡らしてから触れるだけでいいんだ」
喋りながら、紙を濡らし準備をしてくれていた。
転生前に、弱い能力でも別の何かで補うって話があったのを読んだ覚えがある。
もしかしたら、タスキとかプラカードとか、意味のわからない能力も、別の能力で補っていけば大丈夫かも知れない。
俺はそんなことを考えながら、紙に触れた。紙は少しだけ淡い光を出すと、すぐに消え、文字をあらわにした。
「.....うーん」
思った以上に事細かに出ていたが、肝心の能力がよくわからない。
そもそも比較が出来ないし、基準もわからなかった。
「能力の基準がわからないんだけど、見てくれない?ファル」
この場合は、ファルに見せた方が早いと、すぐさまファルに渡した。
「.....」
「どうでした?」
「正直、平均以下だ...が、魔力量が少なすぎる」
「詳しく」
俺はファルに即答した。
「だけど、能力がイマイチわからないかさから、それによればって感じだな」
ふむふむ。
「<プラカード>ってなんだ?」
「.....」
「そういえば、使った事なかったです」
プラカードの能力は、自身の想像した形のプラカードを作る能力らしいが、そういえば使っていなかった。
「確か念じれば、勝手にだっけ?」
少しだけ目を閉じた後、運動会で見たプラカードを想像した。
「......」
出来たプラカードは、確かに運動会で見たものに、一致していた。
「......」
「「それだけ?」」
プラカードを振り回すが、特に変化は起きなかった。
「クマ、お前の能力ってもしかして、それだけか?」
言いたくなかったが、今の俺には一つしか答える事が出来なかった。
「....はい」
今、希望が踏み潰された気がした。
次話は、2/15の予定です。