3.最初の最初
「ギャァァァァァ!」
それは子供の頃に乗ったジェットコースターを遥かに超える恐怖を俺に与えた。
体への圧も凄まじく、全身がほとんど動かせなかった。
「もうそろそろ着くぞ」
そう言われ、視線を少し向けるとそこには先ほどまでいた殺風景な島とは違い、遠くから見てもわかるほど活気に満ちた都市が広がっていた。
「このまま、突っ込むと被害が出るから、悪いけどちょっと飛ぶよ」
「えっ、ちょま」
心の準備がま...
「<空打一式 飛>!」
ファルはそう言うと、地面を思い切り踏み込み空に飛び上がった。
「見てみろよ、クマ」
そんな気分じゃなかったが、言われるがままに咄嗟に閉じた目を開いた。
「......すげぇ」
転生前では絶対に見れなかった景色。これぞファンタジーだと、なんだか感動を覚えた。
「.....」
そして、すぐ下。
こちらも転生前では決して見ることの出来なかっ た景色。
遠すぎる地面をただ見つめ、思わず着地の心配をしたくなるような、そんな景色。
「じゃあ、行くよ」
「行くって?」
ファルは行くとだけ告げると、空中で器用に体勢を変えた。
「<空打三式 乱歩>」
ーー あっ、死んだ。
「うっ.....」
急な方向転換とものすごいスピードの落下の恐怖に耐えきれずその場で気絶してしまった。
.....
.....
「おい、クマ起きろって」
「大丈夫ですか」
「.....んっ」
ファルの声と知らない声に起こされ、目を覚ました。
「....ここは?」
「おう、ここは俺たちの住んでいる寮ってか家だ」
「あっ、あのー」
すぐ右にいた少女は申し訳なさそうに、こちらを見つめていた。
「おっ、そうだ紹介するよ。この子ミル・エンナって言うんだ。ミルってよんであげてね」
「.....はじめまして、ミル・エンナです」
「あっ、どうもクマです。よろしくお願いします」
ーー この子は一体?
「そうそう、この子が君に契約して欲しい子だよ」
そういえば、そんな事を話をした覚えがある。
「そもそも、なんで俺なんですか」
「まあ、いろいろあるけど、一番は契約出来る使い魔がいないってことだ」
ファルが少女に目を向けた瞬間、少女は何かを察したように拳を握った
「⁈」
少女が手を握った瞬間辺りには、不思議、よく分からないものが広がった。
「契約には互いのことをある程度知っている必要な事だから、先に話しておくよ」
少し間を置いてからまた語りはじめた。
「ミルちゃんはね、魔力量が多いんだよね、だいぶ異常に」
「魔力量?ってどのくらいなんですか?」
自分のも含めれば良かったが、ファルは少しだけこっちを見ると、話を続けた。
「そうだね、君を100だとするなら、この子は1000000だね」
.....
「えっ、はい?」
思っていた以上の数値に驚きを隠せなかった。
「ちなみに、契約失敗とかってあるんですか?」
「.....はい」
少女はゆっくりと語った。
「失敗したら、あなたは私の一部に還元されます」
「.......確率とかって」
「...わかりません」
「.....」
ーー よし、まず落ち着こう。
「一旦考える時間をください」
ーーー
少しだけ、これまでのことを考えた。
タスキによって転生、何か俺にはやることがあるのだと。そう思っていた。
能力未知数の<プラカード>と貰ったタスキ。まだ使ってないのにも関わらず、失敗したら還元?確率不明?
ーー 上等だよ、受けて立ってやる
「やり」
「あっ、まだ大丈夫だよ。ってかダメなんだよね」
ファルは少しだけ申し訳なさそうにしながらも、ニコニコしながら言った
.....
ーー 俺の決意を返せや。
読んでいただきありがとうございます。
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