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第8話:※サキュバスは見るものの理想の性対象の姿をとるらしいゾ?

すけべない話です



 『極楽館サキュバスハウス』とは、

 かませ犬派遣会社、ジャッカルのいち部署のことだ。


 かませ犬の仕事は単に最序盤にヒーローに絡むチンピラだけではない。

 

 例えばこんな展開を見たことがないだろうか?

 ヒーローが奴隷商人から獣人の美少女(処○)を買う。

 ──この時なぜか肉体労働に従事されそうなおっさんや本当に有能そうな獣人は飼われないことが多いらしいが──

 まぁとにかく、

 そこで最初に主人公のパートナーとなるヒロインができるわけだ。


 しかし、『英雄色を好む』とは実に的を得ていて、

 ヒーローはだいたいこの後第2、第3のヒロインと出会っていく。

 どこぞの姫様だとか、

 伝説の女騎士だとか、

 怪しいマッドサイエンティストのロリババアの博士とか、

 

 そんなこんなでパーティの色物度合いがインフレすると、

 最初の獣人の美少女は相対的にまともなために影が薄くなる。

 しだいに、獣人のヒロインは出番が少なくなる。

 ヒーローの最初の街に警備の名目で配置されて離れ離れになったり、

 ひどい時には「○○人だから××には行けない」とか、

 差別的理由で行動をわかつ。

 そして戦闘力の意味でもヒーローのパーティがインフレするにつれて、

 終盤ではすっかり、

 あらゆる面で存在が不要となり──


 いつのまにか、

 話そのものからフェードアウトしてしまうのだ。


 長々と語ったが、

 何が言いたいのか?


 会社ジャッカルに所属する彼女たちは、

 それらの親戚みたいなもんだ。

 所詮「かませヒロイン」「ゲストヒロイン」という種類ジャンルにあたるのだ。

 新しい街で都合よく出てきて、

 都合よくヤリ捨てられる存在。


 要約すると、それが彼女たちだ。

 『薔薇姫』クィーン・ローズィーを筆頭にする、

 ベテランの負け犬ヒロインたちだ。


「問題児ってのは、そこに配属した新人なんだよ」


「なにが問題なんすか?」


「処○を捨てねぇんだ」


 !?

 何言ってんだこのおっさん!?

 せ、セクハラだぞそれ普通に!!?


「俺は、大真面目に、言っている!」


 ジャッカルさんは真剣な目で話し始めた。


「まぁ使い捨てヒロインってのは、言ってしまえば水商売だわな。

 出会って、

 助けられて、

 頭撫でられて、

 微笑まれて、

 惚れて、

 そのままベッドイン。


 それを、一通りできなきゃ一人前じゃねぇわけよ」


 ……過酷すぎない?

 えっ、ちょっとそれ過酷すぎないっすか!?

 ナチュラルボーン尊厳破壊じゃないですか!!?

 見ず知らずの好きでもない男に、

 頭撫でられたり微笑みかけられたら、

 そのまま即股を開かなきゃいけないって、

 ちょっと地獄すぎませんか???

 人権の不法投棄にも程があるでしょ??

 

「そーなのよ! アニキもやっぱそう思うっしょ!?」


 おまえはどっちかっていうとそれヤる側じゃねぇかな……


「えーっ! いくらなんでもひどいっスよそれ!! それじゃ、まるで俺が誰何構わず穴に棒をツッコむ変態みたいじゃないっスか!!」


 あ、ごめんそこまでは言ってないわ。


「とにかく」


 ジャッカルさんが言った。


「いろんな男に股を開くのは基本中の基本。だから募集項目には『ビッチ歓迎! サイズを問わずチ○ポが入る人優遇』って但し書きまでしてんだがな……」


 あー、なるほど。

 宣伝がサイテーなのは置いといて、

 それでサキュバス多い……というか、

 サキュバスしかいないワケですわ。


 ヒーローが人類とは限らないからね。

 だから『かませ犬ヒロイン』は、

 人類はおろかコボルトからゴブリンの短小軍団をはじめ、

 オーガ、ドラゴンら辺の巨根軍団まで下手すりゃ相手にしなきゃいけないわけで……

 そんな全局面オールマイティ選手プレイヤーなんて、サキュバス以外にいるはずもない。


 で、その子が処○を護ってるわけだ。


 ……クビにしたら?


「そういうわけにもいかねぇんだよ。やっこさん、お偉い人からの推薦人でな、無碍に扱えんのよ」


 誰すか、それ。  

 四大魔王のジャッカルさんにここまで言わせるヤツがいるんです?


 だだその辺、

 ジャッカルさんは深く突っ込んで欲しくなさそうだった。

 だから、そっとしておこう……

 この会社、いつどこからギロチンがクビに降ってくるかわからないしな。

 相手、全能者だしな。

 物理的に首飛びかねないしな、うん。


「そんでそんで! 彼女? の説得に俺が駆り出されたってワケっス!」


 あー!

 ああー!!

 こいつイケメンだもんなあ。

 トーク力はともかく、懐っこいもんな。

 説得要因としてはまぁ納得の一手だわ。

 この会社控えめに言って、

 男に関しちゃ現状俺の知る限り、

 顔面が工事中の道路地図みたいなブサイクしかいないし。

 でも、この現状があるってことは、

 こいつになびかなかったのか。


「あー、いや。俺がムリだったんスよ。いや、アレはちょっとねーわって……」


 苦笑いを浮かべて顔を引き攣らせるキララ。

 ウソだろ、

 この誰とでも飲み会開始10秒で打ち解けそうな、

 コミュ力のよくばりセットにここまで言わせるとは……

 そのサキュバス、

 いったいどんな化け物なんだ……



 そして、俺とキララは『極楽館』に来た。

 色鮮やかな薔薇で囲まれ、

 過剰な香水の匂いがつん! と鼻を突く。


 うへぇ、雰囲気がもうケバいや。

 オーガは目も鼻いいから辛いぜ。


「ようこそ、極楽館へ」

 

 案内されて赴いたピカピカの部屋の奥、

 一番でっかくて豪華な真っ赤なソファに、

 この世の次元で表せないぐらいの絶世の美女が座っていた。

 目元が切りそろえた髪の毛で隠れている。

 薔薇のブローチを胸に、

 紅を基調とした長いドレスを着こんでいた。

 金髪ロング、前髪ぱっつん。

 声は透き通るようで艶かしく、

 こちらの肌を撫でる。

 

 なるほど、淫魔だわ。

 この人に手でも握られて、

 「ドキドキするわ、こんなの初めて……」とでも言われたら落ちないオスはいないだろうよ。


 いや、世間の8割方の男子ぃは相手が女の子なら、

 それは誰に言われても落ちちゃうけどな!!


 ガハハハハハ!!! 

 泣いてないもん!!


「ちっす! 薔薇姫ローズィーさん! 俺! キララです! ふたたびまたたび来ちゃいました!」

「ローズよ! ズィーと伸ばすなっ!」


 よくわからんポイントでキレるなこの人。

 こいつのチャラい態度はどうでも良いらしい。

 いや、もういい加減、

 この会社の重役ってそーいう人らの集まりだって、

 わかってきたけど。

 

「それで、役立たずのクソエルフが、もっと役に立たなさそうなクソオーガを引き連れて、のこのこ何しにきたの?」


 あ、やばいめっちゃキレてた。

 でもコレ今のやり取りに対する怒りじゃねぇな。

 ずっと溜め込んで煮込んでグツグツしてるやつだ。


「いやいやいや! ローズィーさん聞いてくださいよ!! ここにいるアニキは10000人のオンナを一晩で口説き倒して全員とヤリ尽くした性豪ですぜ!? アニキにかかりゃあちょちょいのちょいっ! よ!!」


 おまえデタラメにも程があんぞそれ!?

 なに勝手に人の武勇伝クズエピソード捏造してんだ!?


「いや、一晩で10000人抱くのは無理でしょ」


 ローズィーさん、意外とまともな人だった!?


「だってそれ、一晩を12時間で考えても1時間で833人にダしてるのよ? それ性豪っていうか早漏じゃない……」


 まともな方向が違う!!

 ダメだこの人神話のおふざけエピソードにマジレスしちゃうタイプだ!!

 

「だっはっはっ! バレました? 実は10000人じゃなくて、15000人なんですよ!」


 なんで増えてんだよ!?


「なんで増えてるのよ……」


 気を削がれた、と息をつくローズさん。

 こいつはほんと、こういう間の作り方は天才だな。


「今からあんたたちには、くだんの子と一緒に異世界に行ってもらうわ。そこで、その子がちゃあんとお仕事こなせるか見張ってて欲しいの」


 それ新人に与える仕事なんですかね……?


「だってだって! しょうがないじゃない! ほんとはガマを頼ろうと思ってたのに、あんたのせいであの子今落ち込んでんでしょ!?」


 うぐ!


「だったらガマの分もセキニンとんなさいよ! 男はヤらかしたらセキニン取るもんでしょ!!? まさかそんなこともできないのこのヘタレ! イ○ポ!! 中折れオーガ!!」


 罵詈雑言が掛けねなしに罵詈ってますね!?

 そこまで言われちゃ誰だってへこむ!! 

 ちっくしょお〜! 

 こういう「性に強いタイプです!」ってやつは、

 実際にエロいことしゃべったりエロ運動すると黙り込むもんだけど、

 この人の場合ナニを出したらそこから精魂食い尽くされそうだしさぁ!?

 数多の尊厳破壊を乗り越えた豪の者だし!

 経験値的に勝てるわけないだろ!!!


 ああくっそ!

 赤い舌に粘液を絡めてぺろぺろさせやがって……

 ちっくしょおお!!


「交渉成立でいいわね? 出てきなさい」


 ローズさんが言うと、部屋に女の子が入ってきた。


 ……そう、女の子だ。


 人間で言えばまだ二桁歳いかないぐらいの幼女だ。

 それが、

 ジト目で、

 おかっぱで、

 引きずるぐらい黒髪ロングで、

 まろ眉で、

 下着同然の布地に薄いレースをかけただけの服を着ていた。


「な、な、な、なんじゃこりゃあ!!?」


 その子は物おじせず、

 はっきりと名乗り上げた。


「ロリリム・ロリラリムよ。よろしくブサイク」


 ロリ? ロリリ……? 

 な、なんだって…………???

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