第3話:アメイジング入社式!!
舐められたら終わりだ!
入社式、つまり新入社員の顔合わせ!
ここだ。
ここで、格が決まる!
誰が弱っちいのか、気が弱いのか、誰がボスになるのか……
今後の会社生活でのカーストが決まるんだ!!
外せない一瞬のために、俺は気合を入れる。
しかし、どうやら俺は……
魔族にしてはバカ真面目だったらしい……
──まずは入社おめでとう。
ありきたりな一言から、ジャッカルの入社式は始まった。
壇上にいるのは面接を取り仕切っていたガマガエルっぽい顔のおっさん。
あの時のジャッカルさんとのフランクすぎる掛け合いからして、きっと重役中の重役なんだろう。
相変わらずの重低音声で淡々と挨拶を告げている、が
「えーっ!? それ、それ、それマジかよチョーやべーじゃん!!」
「俺こないだ新作ゲームのさ〜」
「ほら見てこの時計! 入社祝いに買っちゃったんだ! お陰で今内臓二つと目ん玉いっこ、脱脂綿だけどな! ワハハハハハ!!」
会社にずらりと並べられた新入社員13名は、
俺を除いて誰一人として真面目に話を聞いていなかった。
特に……
「おー! おまえか! 面接ン時ジャッカルさんに助けられたってヤツは!?」
「違う違う逆だって! 俺たちが、ジャッカルさんを、助けたの!!」
「それはおまえ、フカシすぎだろ〜!!」
「ガハハハハ!! いや実はそうなんだよね! 俺はアニキと違ってずっと足手まといで、人質にまでされちまった!」
「悪運つっよッ!? よく生きてたな〜」
「まぁエルフって顔良いじゃん? 弱そうじゃん!? 人質名人なのよ! なれたモンよなれたモン!!」
話を聞かない奔放ぶりはもう魔族全体の特性だとして、
エルフって、みんなこんな感じなのか?
今あったばかりの得体の知れない奴らと、
もう仲良くなってやがる……
「それでは、退屈な私の話はここまでとして、社長に一言、激励の言葉をいただきましょう」
ガマガエルの人は流石に慣れているのか、
粛々と式を進めていく。
言ったとおりに、ジャッカルさんが壇上に立った。
「かませ犬とは、『最強』であるッッ!!」
どデカい声に、ぴたりと騒ぎが止んだ。
流石に会場の視線が釘付けになった。
「かませ犬とは、『最強』であるッッ!!」
視線が集中されたことを確認してか、
ジャッカルさんは言葉を続ける。
「これは、大前提だ! かませ犬とはあらゆる世界において最強の存在でなければ務まらない!!」
「ここにいる諸君らを選んだ第一の理由! 1919人から13人が選ばれた理由は、君たちが『強い』からだ!! 入社志望1919人の、上から数えた13人が、ここに集っている!!
勇者より優しく!
戦士より屈強で!
賢者より賢く!
盗賊より巧みで!
剣士より速く!
商人より狡猾で!
道化よりも生き汚い!!
それがかませ犬だ!!
それがあらゆる世界で、
かませ犬になるべき資質だ!
私は諸君らにそれを見出した!!
だから諸君らはここにいる!
だからかませ犬に相応しい!!」
ジャッカルさんは──社長は、高らかに謳いあげた。
むちゃくちゃな理論を、
胸を張って、ギラついた眼で、
真剣な表情で……!!
気づけば、みんなジャッカルさんに呑まれていた。
「私は諸君らを歓迎する! 検討を祈るッ!!!」
ばさり、とつばさが広がった!
うおおおおお!! と叫び出した。
誰もが! キララも笑っていた。
俺も、笑っていた。
キララの目が──
──どうだいアニキ?
──かませ犬って、すげぇ役だろ?
そう、俺に言っているような気がした。
「社歌斉唱!!」
荘厳な音楽が流れた。
おお、すごいな。本格的だ……ン?
〜〜ムチャ〜〜♪
おい、なんか聞いたことあるぞ、これ。
いや音楽は知らないが、歌詞が……
〜〜ヤ○チャあ〜〜チャ○ぉ〜〜ジ○ギぃ〜〜♪
おい!! まずいだろこれ!!?
「あれ? アニキ何焦ってんの?」
焦るわバカ! これ大丈夫なの!?
いやダメだろやばいだろ!?
やめっ……やめろォォォォ!!!
「ヘーキヘーキ! だってヤムチ○とか○ャドって明言してないし!」
伏字の場所を変えるなバカ!!
わかってやってんだろおまえ!!?
「へー! これ、なんでもかませ犬界の伝説のことを謳っているらしいぜ?」
「マジかよ! 良い歌だなー!」
やべぇ歌だよ馬鹿野郎!!
ジャ○プ読んだことないのかこいつら!!?
「はい、それでは新入社員はそれぞれの先輩方に従って班に分かれて分かれて!」
社歌が鳴り止まぬ中で、
モヒカンの男の人が、
メガホンを使って俺たちに言った。
「これから早速、異世界に飛ぶから! 仕事するよぉ〜」
「かませ犬としてね!」
えっ、いきなり!?
モヒカンの男の人の隣にずらりと人がいる。
みな、一目で『強そう』な人だと思える。
つまり……歴戦の有志が、
会場の出入り口に陣取っていた。
彼らに指示されて、
俺たちはいきなりかませ道の第一歩目を踏み出す!
……そして、この道の厳しさを嫌でも思い知ることになるのだった。
……いや、やっぱあの社歌はやべーだろ。
うん……!