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第10話:【悲報】穴すらない

伏線回収


「つまり……オビンビン帝国は、突如として現れた謎の軍団の侵略に対抗して防戦してただけなんすね」


「オ・ビィンビン帝国だ! だがしかし、そうだその通りだ!!」

「…………」


 あの卑猥なミサイル爆撃の後、

 俺とキララはぶっ飛んだオ・ビィンビン帝国の近衛隊長、

 ビュルルガー大佐を探し当て手当てをし、

 彼のち○ぽ型飛行船に案内してもらった。

 見つけたばかりのビュルルガー大佐は最初、

 血だらけの死にかけなのに、

 軍人らしく俺たちに敵意と警戒心を剥き出しにして剣を構えてきた。


 なんて男だ。

 軍人の鑑かよ。

 本当にいるべき世界を間違えていると言わざるを得ない……


 現地人にあんまり密接に関わるのは会社ジャッカルのルール違反だけど、

 そんなこと言ってる場合じゃなさそうだしな、

 しょうがないね。

 

 ……ミサイル爆撃? 

 そんなもんオーガの俺に効くわけないじゃん。

 キララに露骨に盾にされたのはまぁムカつくけど……


 そこで、

 今この世界に何が起こってるのとか、

 情勢はどんな風なのかとか、

 どこと、なんの理由で戦争してるのかを聞いた。


 そしたら、

 元々この大陸はオ・ビィンビン帝国が統一支配していたんだと。

 すっげぇ平和だったのに、

 ある日突然、どこからかイケメン騎士軍団が帝国に襲撃を仕掛けてきたという。

 言葉はわかるが話も通じず、

 仕方なく防戦していたそうだ。

 

 ……そりゃ、俺たちがいきなり現れたら、

 拘束もしくは殺害もやむなしだわな。

 むしろよくその程度でおさめてくれようとしてくれたもんだ。

 ほんと、良い人なんだなこの人。

 俺たちの身の上を──話せる部分だけ──説明したら、

 凄い勢いで謝ってくれたし。


「アニキ。あいつらたぶん、『堕天勇者之愚連隊フォーリン・ブレイブ・ソルジャーズ』の連中だぜ」

「ああ、たぶんな」


堕天勇者之愚連隊フォーリン・ブレイブ・ソルジャーズ』とは、勇者ヒーローになりきれなかった者たちがより集まって組織した、文字通りの愚連隊だ。


 意気揚々と異世界に転生したり、

 転移したり、

 成り上がり物語でヒーローを演じていたが、

 なんらかの理由でヒーローになり損ねた連中だ。


 投げ出された物語や世界から、

 その強さや存在の格ゆえに物語や世界と共に心中仕切れず、

 世界からにじみ出た『シミ』となってしまった連中だ。


 彼らはどこの世界にも居場所がなく、

 どこかに定着するためにはどこかの世界を侵略し、

 その世界を『自分の世界に書き換える』必要がある。

 世界を自分色に染める、ってわけだ。

 

 それを効率的に行うために、

 『シミ』たちがより集まり軍団を成したのが『堕天勇者之愚連隊フォーリン・ブレイブ・ソルジャーズ』なのだ。


 やっかいだな……


 あいつらは、基本的に超強い。 

 なにせ、一人一人が物語のヒーローになれる、

 あるいはだった、能力スペックを持っている。 

 もちろんも強さ(それ)もピンキリではあるが、

 『ピン』の方は下手するとジャッカルさんやガマ先輩クラスの強さの場合があるとされる。


 基本的に、

 ジャッカルをはじめとして、

 さまざまな異界に関わる仕事をしている組織はこいつらとは関わりを持ちたくないし、

 なるべく持たないようにしている。


 だって、犯罪組織だし。

 文字通り失うもののない連中なので、

 なにをしてくるかわからないし。


 これを取り締まる機構も多元宇宙間には存在するので、

 彼らに通報して一掃してもらうのが一番だ。  

 てか、それが一般的だ。

 俺たちの世界しゃかいでは、だが。


 幸い、この世界が防戦とはいえ、 

 十分戦争可能な状態をみるに、

 今回は『堕天勇者』側にジャッカルさんクラスのヤツはいないようだし……


「あ、おねぇさんこのお茶おいしーね! 色は真っピンクで化学調味料マシマシって感じの見た目だけど、めっちゃうまいよ! まろやかまろやか!!」


 こいつ(キララ)、ほんとにブレねーな。

 なにか良い案はないのかよロリリ攫われてんだぞ!?

 ジャッカルさんから預けられた子を攫われて、

 のこのこ逃げ帰るわけにも行かねーし、

 万が一ロリリが殺されたら俺たちの首も飛ぶぞ、マジで。

 

「ヘーキヘーキ! ……って、え? あれ?」


 キララははっとした顔になった。

 何かに気づいた表情だった。

 良い案が浮かんだのか、と俺が尋ねると……


「あ、あー! あー! そうかそーいうことね! はいはい!」


 と一人で謎に納得して俺には何も教えてくれなかった。

 



 一方、ロリリは広間にいた。


 物理的な拘束は何もされていないが、

 この部屋自体に対魔力結界が張られていた。

 強力なやつで、ロリリは『魅了チャーム』も『洗脳フェロモン』も使えなかった。


「フフフ! 良くやったぞ蓮美れんび

「ふっ、俺には大したことじゃないさ、レイス」


 顔を覆うように耳まで伸びた黒髪に、

 整った顔立ち、

 身長もほぼ横並びの2人。


 片方がロリリを攫った男で、

 片方が初めからこの場にいたのだが……

 2人は顔も髪型も服装も良く似ていて、

 ロリリ(傍目)にはどちらが蓮美でどちらがレイスなのかわからなかった。


「クレイトも、この子なら満足するだろう」


「……なんだか知らないけど、クレイトってのはとんでもない変態なのね」


 片方がハハッと笑った。

 ロリリには蓮美なのかレイスなのかわからなかったが。


「光栄に思え! おまえはいずれこの国の王となる、『聖光天翔紅闇十字軍』の、『聖魔天星将クレイト』の妻となるのだ!!」


「えっ!? せ……せい、こう……せい? なんていったの、いま?」

「聖光天翔紅闇十字軍だ!! 聖光天翔紅闇十字軍の聖魔天星将クレイトの妻、聖光天翔紅闇十字軍副官であり聖魔天星副将になるのだ!!」

「ごめん、ほんとごめんなさいね。せめて鉤括弧でくくるか、ふりがなつけてくれないととても読めないわ」


 なんだとぉ……とどちらかが言った。

 まぁまて、とどちらかが言った。


「強がりを言ってるのさ。本当は怖くて仕方がないんだ、可愛いものじゃないか……」

「いや怖がってないし。私が可愛いのは事実だけど……いえ、むしろ、恐れてるかしら? 可愛いからってこんな幼女をガチのマジで妻にしようって考えてるらしいクレイトさんの変態っぷりに、心底恐れいるわ」


「このガキ……! 女の子だからって、優しくするってわけじゃねーぞ! 俺たちを舐めんじゃねーぞ!!」

「あとごめんなさい。さっきからどっちがどっちかわからないから、もう少し髪型とか服装で個性出してくれるかしら? なんで揃って改造学生服みたいなの着てるの? おそろいペアルックよ、ホモなの?」


「このガキ……!」

「まて! 蓮美! ……クレイトさんだ」


 どうやら怒りっぽいのが蓮美で、

 ちょっとキザな方がレイスのようだった。

 

 2人の背後の扉から、

 また一見して2人と見分けがつかない黒髪に学生服っぽい、

 同じぐらいの美形で同じくらいの身長の男が歩いてきた。


「クローン技術が発達してるのかしら?」

「フッ、皮肉も似合う……うわああああああああああ!!!!?????」


 クレイトさんは、

 ロリリを見るなり絶叫し、

 腰を抜かした。


「うわぁ! うわああああ!!?」

「ど、どうしたクレイトさん!?」

「お! おまえらなんてものを連れてきているんだ!!?」


 !?


 2人の顔に疑問符が浮かんでいた。

 なにが怖いと言うのか、ただのロリサキュバスだろう?


「えっ……? お前らまさか、そいつが人の形に見えるのか……?」


「……えっ?」


「あ、なるほどね。チート能力持ってる勇者だから、私の『擬態』を見破れるのね」


「擬態……?」


 ロリリは小悪魔っぽく笑った。


「せっかくだし、見せてあげるわ。妻になるんですものね? 私の恥ずかしいところまで、全て見せてあげるのが道理よね? ダーリン?」


 そういうと、ロリリの姿がどろりと溶け始めた。


 そして……


「ヒイイイイイイイ!!!」

「お、おげぇっ!? こ、こいつ人間じゃねぇ!?」


 それは、形容し難い……というかできない容姿をしていた。

 2人もクレイトと同じように、腰を抜かしてへたりこんだ。


 ──さぁ、愛しあいましょう?


「ぎゃああああああああああ!!!!!!」






「ってことがあって大変だったわね〜」


「過程を全部ぶっ飛ばしてんじゃねぇよ!!」


 ち○ぽ型のライフル銃を手に、

 亀○の形のヘルメットを被った、

 フル装備のキララとなにも持たない俺は、

 扉をぶち破った先でけろりとしたロリリを見つけた。

 

 ロリリの肌はツヤツヤしていて、

 その足元にはロリリの腰ぐらいまでの大きさの肉団子がごろりとしていた。

 

 ロリリは俺たちが質問する前に、

 何があったのかは一通り話してくれたが……

 話の最中俺はひたすら背筋が凍る思いだった。


 まさか、こいつの本体が、そもそも形がないとは……


 キララの意味深な言葉が全て繋がっていく。

 そういえばキララは、

 一度もロリリを『女の子』と呼んだことはなかったのだ。

 あれ、とか形容詞で表現していた。


「キララはすごく年季の入ったエルフみたいだから、私の『擬態』を最初から見破ってたのね」


 キララ……なんで言ってくれなかったんだよ……?


「えっ!? だって言わない方が面白かったし……第一、アニキが不定形の軟体生物フェチで触手フェチの可能性がゼロじゃないからさ! 黙ってたんだよね!! やっぱさー、どんなドン引きする性癖でもはなっから否定するのはダメじゃん? 触手フェチで軟体フェチで不定形フェチって良くわかんねぇけどさ!!」

「オレ、オマエ、コロス」


「ぎゃあああああ! アニキ折れる! 折れる! アニキの太くて長くてバッキバキで血管浮いてる逞しいやつにいっぺんに挟まれると、割り箸みたいに簡単に腕が折れる──っ!!!」


「紛らわしい言い方するんじゃねぇ! コロス!!」


「あはははははっ!」


 俺たちはそのあと、

 揃ってビュルルガー大佐にお礼を言われた。

 皇帝に謁見することを許されたが、

 それは丁重にお断り申し上げた。

 流石にそれは会社ジャッカルのルールに違反しすぎてるだろう。


「とにかくありがとう! 諸君らのお陰で、我がオ・ビィンビン帝国は再びの安寧を得た!!」


 ああほんと、この人初志貫徹いい人だったわ。


 そして、俺たちは『虹の架け橋』を渡って会社に戻った。


 薔薇姫様がげっそりした顔で俺たちを迎えてくれた。


 俺たちは即、社長室に呼び出された。


 そして……



「良くやったぞ、お前たち! あの世界に残っていた『堕天勇者之愚連隊フォーリン・ブレイブ・ソルジャーズ』は、【黄泉】に引き渡したからもう大丈夫だ」


 面倒をかけたな!

 と社長は言った。


「結局、ロリリは処○捨ててないと思いますけど、いいんすか、これで?」


 ……そもそも捨てる処○なんてあったんだろうか?


「問題ナッシング!!」


 ジャッカルさんは親指を立てて言った。


「ロリリにはお前とキララとでスリーマンセルを組んで、かませ犬業に従事してもらう! これは最初から決まっていたことだからな!!」


 へっ?

 じゃあなんで、ロリリの処○を捨てさせようとしたんですか?

 『極楽館サキュバスハウス』に籍を置くためじゃ……???


「お前たちに期待してるからだよ」


 ジャッカルさんはニヤリと笑って言った。


 こ、答えになってねー!!


 でも、口答えしたら殺されそうだし、何も言わなかった。


 




 ──ふふ。


 ──わたし、幼女の方が色々都合がよくて、この格好してるんだけど、

 

 ……とキララは、わたしが不定形の化け物とわかっても、態度も何も変わらなかったわね。


 わたし、

 あのふたり、

 結構好きかもしれないわ。


 ──ふふ、かませ犬なんてつまんないと思ってたけど……



 あのふたりと一緒なら、少しだけ楽しそうだわ。


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