ハンターズギルド
おはようございます。
第九話です。
お楽しみください。
落ち着いて眺める街並みは壮観の一言であった。
決して高く派手な建物があるわけではない。
むしろ、ほとんどの建物が平屋か二階建て、まれに三階建ての建物がある程度だ。
だが、地球で見た中世的な街並みとは異なるこの世界ならではの要素があちこちに散見され、私の目を楽しませてくれる。
街は多くの人でにぎわい、活気であふれている。
きっとこの街は良く統治されているのだろう。
行きかう人、店先で声を張り上げる人、そのほかにも多くの人が笑顔でいる。
この街に来た時にひと悶着あった衛兵さんもいい人のようであったし、良い人の集まった良い街なのだろう。
その中においても、やはりアルビノで回りとは大きく異なる風貌をした私は、明らかに周囲の視線を集めていた。
服装こそ領主様の屋敷でサリファスさんにお借りした、周囲の人たちが来ているものと似たような服を着ているものの、長く真っ白な髪に、同じく白い肌を隠すことなくさらしてしまっている。
私としては、この白い髪も紅い瞳も白い肌も気に入っているし、隠してしまうのはもったいないと思っている。
だが、もったいないからと言ってさらし続けていれば、昨日のメイドさんの言葉にあったように、目立とうとせずとも注目されてしまったり、よからぬことに巻き込まれたりしてしまうかもしれない。
そうなれば、私が目指す世界を巡る旅を阻害する要因にもなってしまうかもしれないのだ。
今でさえ、歩いているだけでこの注目具合なのだから、目立ったことをしてしまえば広まるのはあっという間だろう。
だがそれでも、あくまで私は自分の赴くままに、自由に旅をしたいのだ。
(何か対策なり工夫を考えないといけない)
そんなことを考えつつ歩いていると、とある露店においてある果物に目が留まった。
それはあの森で食べたことのある果物の一つ。
(あれは森に来て二日目に食べた、甘くさわやかな味わいが特徴のあの果物!)
ちょうど小腹もすいていたことだし、今朝受け取ったお金の総額がどれほどのものなのか確かめるためにも、ここで買い物をしてみるとしよう。
そう考え、私は店番をしている男に声をかけた。
「すみません。この果物、一つもらえませんか?」
「おう、ちょっと待ってな。一個で銀貨1枚と銅貨10枚だ。嬢ちゃんはお使いかい?」
11枚取り出すのははっきり言って手間だ。
ええい、日本の貨幣額面を見習え。
「ええ、まあ。そんなところです」
「そうか、小さいのにえらいもんだ。ほれ、気を付けて持てよ」
何とか取り出した貨幣を渡して果物を受け取る。
他にも、食材や雑貨の店などを覗き、旅に必要そうな消耗品を少しずつ買って回った。
そうしていろんなお店で扱っているものの値段を見て回れば、この街での生活にかかりそうな金額は大体見えてきた。
(それと比較して、今朝もらった金額を見ると……すでにちょっとした小金持ちだな)
今朝受け取った報酬には金貨10枚が含まれていた。
単純に食費と消耗品だけで考えれば、金貨が2枚あれば1か月は余裕をもって過ごせるだろう。
宿代やほかの費用を考えればもう少し必要になってくるだろうが。
それに、私は今店構えがこぎれいなところにしか足を踏み入れていない。
それに対して周りの人達は結構な人数がきれいでない店にも入っていっている。
試しに一軒入ってみれば、他の店に置いてあったものと似たようなものでも、価格が安いものが置いてある。
もちろんその分質は落ちるようだが。
であれば、多くの人は先ほど試算したよりも少ない額で生活していると考えれば、金貨の価値はもっと大きいと考えられる。
(持ち運びには注意しないといけないな)
旅をするというのにジャラジャラとお金の音を鳴らして歩いていたら、強盗やスリに取ってくださいと言っているようなものだ。
もし銀行のような組織があるなら利用させてもらうし、なければそれはそれで対策を考えなくてはいけない。
かなり大枠でしか額面分けされていないから、硬貨はあるだけで重さ、体積ともに邪魔になってくるだろう。できれば預けてしまいたいが。
お金のことといえば、旅には金がかかるものだ。
消耗品はもちろん、装備や滞在費、食費など、用途はたくさんある。
当面は今朝換金したもので足りるだろうが、この先のことを考えると、お金を稼ぐ手段が必要になってくるだろう。
(まあ、これはあまり心配していないけど)
なぜなら、今朝、素材を換金できたから。
換金できたということは需要があるということだ。
需要があるならばその供給をする側になればいい。
今朝サリファスさんに聞いてみたところ、そういった職業の集まる施設、狩人組合という組織があるとのこと。
(まだ時間はあるし、早速行ってみよう)
私はサリファスさんから聞いていた位置を思い出しながら、歩みを進めた。
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煩雑。
しばらく歩いて見つけた建物は、その単語がぴったりだった。
何度も増改築を繰り返したのか、周囲の建物よりも大きく、いびつな形をしていて、妙な威容を放っている。
重厚そうな建物の壁や柱には無数の傷がついており、それがよりその威容を増す要因になっていた。
中に入ってみれば、鼻をつくアルコールのにおい。
中はかなり広く、その面積のほとんどが酒場の間取りなっているようだ。
酒場の席にはあまり多くの人はいなかった。
いてもお酒らしいものを飲んでいたり、仲間と話をしているようで、こちらにはあまり関心を向けていないようだ。
幾人かはこちらを見ている人がいたけれど、こちらに近寄ってくる様子はなさそうだった。
きょろきょろと周りを見渡し、受け付けらしい場所を見つけたので近寄ってみる。
そこにはちょうど良く一人の男性がいたので、声をかけた。
「あの、少しいいでしょうか」
「あん?なんだ?……気のせいか」
気づいてもらえなかった。
いや、単純に背が足りないのが原因なのだけれど。
私の背では、受付のカウンターから少し頭が出る程度。
だが、白い頭が出ていたら気づくと思ったんだが。
「あの、すみません」
今度は少し飛び上がり、カウンターに上半身を載せる感じで声をかける。
もちろん足は宙ぶらりんだ。
「おお、子供だったのか。すまんな、小さくて気が付かなかった。それで何の用だ?依頼か?」
く、そのセリフを言われることになろうとは。
地球のころは小さい時に親戚にからかわれてよく言われていたが。
そのセリフ、結構心に来るんだ。
まあ、それはおいておこう。
小さいのは事実だし。
「いえ、依頼ではなくで、聞きたいことがあって。ハンターってなるのに何か必要なんですか?」
私が問えば、男はすんなり教えてくれた。
「いや、特にいらんな。魔物どもを殺せりゃそれでいい。稼ぐんならうまく倒して素材なりなんなりを確保しなくちゃならんがな。魔物を殺せるんなら、老人でも子供でも男でも女でも構わん。それがどうした?」
ふむ。
特に何かしなければいけないことはなさそうだ。
ならさっさとハンターになってしまおう。
善は急げだ。
「私、ハンターになりたいんです。登録をお願いします」
私がそういうと、男は驚いたように目を見張り、私の顔をまじまじ見た後、カウンターから出てきた。
そのまま私の全身を見始める。
ちょっと不快ではあったが、男の様子を注視しつつ待っていると、男は口を開いた。
「ダメだ」
第九話、いかがでしたでしょうか。
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