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御屋敷の朝

第八話です。

少しばかりPCにトラブルがあり、短めでの投稿になります。本日中に復活する予定なので、明日の更新からまたしっかり書いていきたいと思います。

それでは、お楽しみくださいませ。



目が覚めたら見慣れない天井に慌てる。

誰もが一度は経験したことがあると思う。


久々に見た屋内の天井に、一瞬ダノフの屋敷に戻されたのかと思って慌てたが、よく見れば見覚えのある内装に、昨晩はフリウスの街の領主様の屋敷に泊まらせてもらったことを思い出した。


寝起きにぼんやりしてしまうとは、ずいぶん深く寝入ってしまっていたらしい。


とりあえず顔を洗おうと思ったが、洗面台がない。


(確か昨日風呂場で桶を使ってたはず)


そう思って風呂場をのぞいてみれば、すぐに見つかった。

水魔法で桶を満たし、服をぬらさないように顔を洗う。


昨晩脱がされた服は昨晩のうちに返ってこず、どうすればいいのと思いきや、用意されていたらしく、それを着させられた。


(……ちょっと胸のあたりがきつく感じるのがなぁ)


昨日の今日で服を用意したということはないだろうから、おそらく誰かの持ち物なのだろう。

自分で服を作った時には、サイズは全然気にしていなかったけれど。


(そうか、これから既製品買ったりするときには気を付けないといけないのか)


女の子の買い物の仕方など知らないが、幸いほぼ生まれ変わりみたいなものだ。

これから知って聞けばいいだろう。

そう考えると、入り込んだのが成長した体でなくてよかったかもしれない。

7歳なら物を知らなくても、教えを乞うのが不審につながることはないだろうから。


着替えもなく、他にできることもないので少し部屋の中を見回っていると、風魔法に足音が乗って聞こえてきた。

少し経てば、ドアがノックされてから扉が開かれ、昨日いたメイドさんのうちの一人が入ってきた。


「おはようございます。お早い御目覚めですね。よくお休みいただけたでしょうか?」


「はい。寝心地もよくて、気持ちよく寝られました」


「それは何よりでございます。それでは、朝のご用意をさせていただいた後、朝食でございます。朝食は食堂とこちらのお部屋、どちらでとられますか?」


(……これ、食堂で食べるって言ったら誰かと同席することになるのかな。そうだったら面倒だし、やめておこう)


「ここでお願いしたいです」


「かしこまりました。それでは、お召し物を失礼いたしますね」


今度は抵抗せずにされるがままになった。

この人たち抵抗しても絶対引こうとしないから、もう諦めた。


そうしてメイドさんたちに身を任せて身支度をしてもらった後、身支度の間に用意されていた朝食を食べる。


それにしても、着させられたこの服、どう見ても貴族の子供が着ていそうな簡素なドレスなのだが。

相変わらず胸のあたりがちょっときついけれど。

濃紺の上質な布で織られたドレスは、編み込みを入れられたこの白い髪ととてもよくあっている。

この赤い瞳は青とは合わないように思ったが、意外にもワンポイントの宝石のようで、ちょうどよいアクセントになっていた。

鏡の前に立たされた私は、その見た目の美しさと顔の愛らしさもあって、まるでどこぞの貴族の令嬢のようである。


(というか、実際令嬢だったんだよね。そんな扱いはされてなかっただけで)


この四か月余りが濃密すぎて、あの牢にいたのが遠い昔のように感じる。

もしマ-ガレットがまっとうに令嬢として扱われていたのなら、こんな格好をして生活する未来もあったのかもしれない。


とはいえ、今の私は旅をしている身で、こんな服では旅などできはしない。

昨日預けた服はどこに行った。


朝食を食べ終わるころ、この部屋をサリファスが訪ねてきた。

サリファスはメイドたちを下がらせると、口を開いた。


「おはようございます。昨晩はよく眠れましたかな?」


「はい、お陰様で。とても良くしてもらって、なんだか申し訳ないくらいです」


「それはようございました。ご満足いただけたようで、何よりでございます。さて、昨晩お預かりした素材ですが、こちらに金銭をご用意しております。内訳はこちらに記載されておりますので、ご確認くださいませ」


そういって、空の昨日渡した巾着袋と、お金が入っているらしき巾着袋が複数、そして一枚の紙を渡された。

のだが。


(……字が読めない)


幼いころから牢に監禁されていて、まともに字に触れてこなかったマーガレットはもちろん、そこに書かれていたのは日本語ではなく、この世界の文字。

幸い数値らしいものは辛うじて読み取れたので、手元の巾着袋の中身と照らし合わせてみれば、すぐに数字は理解することができた。


(どこかのタイミングで文字は勉強しておこう)


今まで問題なく話すことはできていたからよかったけれど、少なくとも読むことはでき、自分の名前を書ける程度にはしておいたほうがいいだろう。


「確認しました。ご丁寧にありがとうございます。ついでといっては何ですが、私の服は返していただけますよね?」


「ええ、もちろんにございます。ただ、昨日お預かりしてから、こちらで勝手ながら洗わせていただきました。ですがまだお渡しの準備ができていないのです。なので、本日はこちらで服をご用意いたしますので、お渡しの用意ができるまで街を見て頂くのは如何かと、伺おうと考えていたところでございます。して、いかがでしょうか?」


「わかりました。そうすることにします。ただ、その間あまり多額のお金を持って歩きたくないので、このお金は預けておきたいのですが、いいですか?」


「もちろんですとも。わが家の名に懸けて保管しておきますのでご安心くださいませ」


そう言ってサリファスはにっこり笑った。


「あと、外出するときの服はドレスはやめてほしいのですが」


「……ええ、申し付けておきます。本来は朝のご支度の時に外出用のものをご用意するはずでしたが、ご迷惑をおかけいたしました」


「いえ、気にしていませんので」


このドレスを着させられたのは、どうやらメイドたちの暴走によるものだったようだ。



「それでは、行ってらっしゃいませ。三つ時の鐘が鳴る頃にはお戻りください。お荷物をお返しいたします」



そう言って頭を下げたサリファスに見送られ、私は街に繰り出した。

第八話、いかがでしたでしょうか。

ちょっとした日常回でした。


少しでも面白そう、続きが気になると思っていただけましたら、ぜひ評価、ブックマークをお願い致します。


ブックマークと評価の両方を頂けたなら、私は超頑張ります。

よろしくお願いします。

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