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7/24

領主館にて

本日二度目の投稿です。

本日も新たにブックマークしていただけていて、とてもうれしく思っております。

それではどうぞ、お楽しみいただければ幸いです。



「サリファス、戻ったか」


「はい。大変お待たせし、申し訳ございません」


屋敷に戻った私は、メイドたちに彼女を預け、領主様の下へと戻った。


「よい。その様子では、違ったのだな」


「ええ、残念ながら」


私の報告を聞いた領主様は、その身を深く椅子へと沈めました。

これは、やはり相当堪えてらっしゃるご様子。


そのご様子は心配でありますが……。

まずはご報告を済ませなければなりません。

そして、ある提案も。


「代わりにいらっしゃた方はなんとも、不思議なお方でした」


御者の報告を聞き、街の東門へと向かった私を待っていたのは、御者の報告と一致する服装をした一人の幼子。

御者が見た時には見えなかったのだろうが、その純白の髪は非常に周囲の目を引いていました。


「非常に利発的な方でもありました。とても見た目通りの年齢とは思えないほどに」


ある打算もあり、わたくしはどうやら困っている様子であったその幼子の手助けをいたしましたが……。

合わせろとは言ったものの、あれほどの演技をなさるとは。

その口調も、多少の誤りはあれど、その年齢を鑑みれば十分に社交界でも通用するだろうと思えるものでした。


その後のやり取りもそうでした。

こちらの話を聞く姿勢を見せ、その内容を理解しする。

相手の主張を一度受け入れつつ、自分の主張をはっきりと示す。

警戒もあったのでしょうが、過ぎた待遇には遠慮を見せる。


「そして、おそらく実力もお持ちでございます」


何とか引き止め、換金のために受け取った、こぢんまりとした巾着袋。

少々作りが粗いですが、素材のお陰か十分な強度を持っています。


問題は、その中身。

中に詰められていたのは、この街から数日北に進んだ先に在る森にしか生息しないフェアリーラビットと呼ばれる魔物の角。

この魔物、危険性は皆無に近いのですが、とにかく逃げ足が速く、並みの狩人などでは近づくことさえできないほど。

見た目の美しさに加え滋養効果もあるその角は、その希少性からかなり高値で取引されています。


そして、その中にいくつか混ざる魔物の牙や爪。

私の見立てが正しければ、これらは危険度の高い種のものであるはず。


もし袋の中身が後者が数個程度であったならば、どこかで拾ったか何かしたのだろうと思いましたが……。

実際、街の子供たちも小遣い稼ぎに街の外でそう言った素材集めといったことを試みます。

たいていは、親や衛兵に危険だからと止められていますが。


けれども、フェアリーラビットの角がこれだけ入っているとあれば、話は変わります。

少なくとも、獲物に感知されないほど遠くから攻撃を加える、または感知されず近づくことができ、そこから確実に仕留められる手段、または技術を持っているはずです。


(そういえば、小さいものではありましたが、弓を背負われていましたね)


あの弓で仕留めていたとすれば、いったいどれほどの技量があればなせるのでしょうか。

それともあの粗末に見えた弓は、実は何か特別なものなのでしょうか。


この推察は無意味ですね。今重要なのは彼女がそれだけの実力か手段を持っているという事なのですから。



「領主様、彼女の存在は今回のことを解決するきっかけになるやもしれません」


「……それは本当か?」


今まで椅子に沈んだまま私の報告を聞いていた領主様が、一転身を乗り出してきました。


「断言は致しかねますが、可能性は高いかと。珍しい物好きな者たちにはさぞ魅力的に見えるでしょうな」


私の言葉に、領主様は少し考えこまれている様子。

おそらく、よその者、しかも子供を巻き込んでしまうことに悩まれているのでしょう。

この方は優しいお方ですから。

それでも少しばかりたった後、お顔を上げられました。


「やり方はお前に任せる。私が直接できることは少ないが、必要なものは言え。可能な限り用意しよう。そして、ここで終わらせろ」


「御意に」


私は一礼し、部屋を後にします。


退室する直前、頼んだぞと、まるで祈るような声が聞こえてきました。

私は必ずやこの仕事をやり遂げて見せましょう。

我が敬愛する主人のために。




------




領主の屋敷についたとたん、私は屋敷のメイドさんたちに預けらた。

メイドさんたちに連れられて部屋に案内され、入って荷物を預けたと思いきや、


「本日はお疲れということですので、まずは入浴の後、この部屋にてお食事のご用意をいたします。それでは失礼いたします」


と言って、私の服に手をかけてきた。

驚きのあまり飛び退いて何をするのかと聞いてみれば、


「お客様の身の回りのお世話は私共がいたしますので、お客様は抵抗せず楽になっていてください」


と言ってきた。

そして、


「だからいいですって!自分で入れますから!」


「そういうわけにはまいりません。私たちがお客様のお世話を申し付けられた以上、誇りをかけてお世話をさせていただきます。さあ、まずはお召し物をお預かりいたしますので、こちらにお越しくださいませ」


こうして問答を繰り返しているわけだが。

私と対峙しているのはメイドさんたちのまとめ役らしき、他のメイドさんより少し年上そうなメイドさん。

この人が全く引く気配を見せない。

迷惑だろうから。

私は貴族じゃないから。

私に構ってないで他の仕事をしたほうがいい。


そんなことを並べて辞退しようとしても、


仕事なので迷惑とかありません。

お客様がどのような方であろうと、仕事を全うするのみです。

お客様のお世話が私たちの仕事ですので。


といって、柳に風。馬耳東風。暖簾に腕押し。糠に釘。


そして結局。


「ご加減はいかがですか?」

「どこか気になるところなどございましたら、遠慮なくお申し付けください」


「あ、いえ、特にないです。とても気持ちいいです」


私はメイドさんたちに裸に剥かれ、丸洗いされています。


私は、押しに弱いのかもしれない。

自分の今まで知らなかった弱点を知った。

今まで押しが強い友人とかいなかったからな……。


そうして若干遠い目をしていると、



「それにしても、美しい肌でございますね。何か特別なお手入れなどされているのですか?」


メイドさんの一人がそんなことを聞いてきた。


「いえ、特に何も……」


「勿体ないですわ!せっかくとても良いものをお持ちなのですから大切にして差し上げないと」


「本当に。うらやましいくらいですわ。それにこの白い御髪も、まるで故郷の雪のように真っ白で、とても美しいですわ」


思わず正直の答えれば一人のメイドさんに驚かれ、他のメイドさんたちもうなづいている。


それにしても、この人たちはこの髪や目の色を見ても特に何も反応しなかった。


(ここの人たちはアルビノを気にしないのか?それともそう振舞っているだけか……)


いっそはっきり聞いてしまおうか。

旅の恥はかき捨てというし、そういった価値観を知れればこの先のふるまいの参考にもなるだろう。



「あの、一つ聞きたいんですが、この髪や目の色、気持ち悪いと思ったりしないんですか?例えば、悪魔の色、とか……」


マーガレット受けた虐待の数々や投げかけられた言葉を思い出し、若干言葉尻が震えてしまったが、思い切って聞いてみると、


「とんでもございません!」


思いのほか強い勢いで否定された。

その勢いに驚いていると、そのメイドさんはさらにまくし立ててくる。



「どこでそのようなことを言われたのかは、まあお察しいたしますが、そういうのは隣国の馬鹿どもだけでございます。むしろ、このようなお色に生まれた方はいずれも高い能力をお持ちで、国や貴族から丁重に扱われることのほうが多いですわ。ですがその分、人さらいに狙われたりすることもあるようではございますが……。そもそも白色種の方たちは人数が少ないですから、狙ってもすぐに犯行が明るみになって粛清されます。特に北方の宗主国では白色種の方は神の子とされるくらいですから、宗主国の人たちに悪事を知られれば、きっと地の果てまで追いかけられるでしょう。宗主国の方は信仰に厚い方が多くいられますから」



ここまで言い切ると、一度息をつき、


「と、申しましたように白色種の方を虐げているのはダノフの者どもくらいのものですから、心配成されることは何一つございません。ご安心ください」


そういって笑みを向けられた。


その笑みは純粋にこちらを気遣い、安心させようと向けられたものであることが伝わってきたので、


「お気遣い、有難うございます」


こちらもにっこり笑顔付きで答えた。


「……ふぐっ、尊い……あ、鼻血が」


何やかつぶやいた一人のメイドさんが、離れて何かしていたが……。


どこにでも業が深い人はいるものだ。




風呂を上がった私は丹念に体の手入れをされ、手入れの方法を教えられた。

なぜかその間中、しきりに容姿をほめられ持ち上げてくるものだから、うれしいやら恥ずかしいやらで、いたたまれない気持ちにさせられた。


(聞き方、何か間違えたかな……)



その後、部屋で晩御飯を頂いたわけだが……。


今まで、まともに味付けなど無い自然の味な食事ばかりを口にしていた私は、人里で丁寧に調理され味付けされた食事に思わず感動してしまった。

感極まるあまり、ちょっと涙も出てしまったのだが、それをメイドさんに見られたのが良くなかった。


何を勘違いしたのか、背中をさすられあやされ、挙句食事まで手づから食べさせられるという事態になってしまった。

この体の見た目は七歳だが、中身は二十歳超えているのだ。

食事をあーんで食べさせられるなど恥辱の極みでしかないと断ろうとしても、なぜか無理して大人のようにふるまおうとしていると思われたらしく、構い度合いがさらに悪化した。


(もう好きにしてくれ……)



その後も寝る時まで、メイドさんたちはかわるがわる私の下を訪れ、寝る瞬間までそばに控えては私を構ていった。

そばにいるのは彼女らの仕事として当然のことなのかもしれないが、妙に疲れた宿泊だったなぁと思いながら、私は眠りについた。



------



「あの子、きっと故郷でひどい目にあって、逃げ出してきたんだわ。悪魔の子だ何だってひどい言葉をかけられて、苦しくて苦しくて、必死の思いで飛び出してきたのよ」


「だからお風呂であんなにおびえた様子だったのね。自分でできるって意地を張っていたのも、そうするように強要されたり、そうしないとひどい目に合う状況だったからに違いないわ。なんてかわいそうに……」


「あんなに可愛くて美しい子をひどい目に合わせるなんて、ダノフの連中は血も涙もない連中なのね。あなたたちも見たでしょう。透き通るような白い髪に長いまつげ。瞳はルビーの宝石のようだったし、肌なんて白くてシミ一つないし、まるで上質な布地のような手触りだったわ。宗主国の人たちがダノフのやったことを知ったら、きっと大変なことになるでしょうね」


「ここにはもうそんなひどいことをする輩はいないと私たちが教えてあげましょう。まずは、徹底的にあの子に優しくして差し上げましょう。きっと抵抗するでしょうけど、押し付けるくらいの気持ちでいくわよ。そう、今日は私たちが、あの子のお母さんになるのよ!」


「「「はい!」」」



第七話いかがでしたでしょうか。

もし、僅かでも面白い、続きが気になると感じて頂けましたら、評価、ブックマークをお願いいたします。

また、感想も受け付けておりますので、ぜひお寄せくださいませ。

それでは、また明日お会いしましょう。

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