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少女森の中で - 2

第4話です。

読んでいただき、有難うございます。

ブックマーク・評価もいただけていてとても嬉しいです。

前話のあとがきに書いたように、お礼は小説でということで、今回はボリューム多めでお届けします。

お楽しみいただければ幸いです。

この森に来て二日目。

暗い森でたった一人木の根元に体を預けて無防備に寝入るという危険を冒した私は、幸い無事に朝を迎えることができた。


ほっと胸をなでおろすと同時に、安心して体の力が抜けたからだろう、くぅ、と情けない音がお腹から聞こえた。

まずはお腹を満たすところから始めよう。

精霊さんに水をお願いして、顔を洗い、のどを潤す。


「腹が減っては戦はできぬって言うし、とりあえず食べられそうなものを探そう」


両手を軽く握って、よし、と軽く気合を入れてから、私は森の中を歩き始めた。



---


「……こんなにイージーモードでいいのかな」


辺りを注意深く観察しながら歩いてみれば、昨日食べた木の実を付けた低木がそれなりに見つかった。


いくつかとって、そのすっぱさに顔をしかめながらしばらく歩けば、

次に見えてきたのは青々とした実を沢山付けた立派な木。

なっている実はどれだけ重さがあるのだろうか。

中には地面につきそうなほど枝がしなっているものもあった。

小ぶりなものでもメロン並みの大きさがあるだろうか。

一つ頂戴して一口かじってみれば、じゅわっとあふれる果汁に、口いっぱいに広がる優しい甘みと、鼻を通るさわやかな香り。


美味しすぎて、泣いた。

だばだば泣いた。

そしてあっという間に一つ食べきった。


もうこれだけあればいいんじゃないかと思う己を叱責しつつ、また戻ってこられるようにと周りの木々に印をつけながら歩みを進めた。


それからも、出るわ出るわ。

空を仰げば果物、草をかき分ければ果実野菜に、ちょっと掘り返せば根菜類。



「……ここにいれば食には困らないね、これ」


歩きながら、呆れるくらい多種多様な野菜や果物を食べていたら、すっかりお腹いっぱいになってしまった。

休むのにちょうどいい場所を見つけたので、食休みがてら小休憩。

果物で手がふさがっているので、開けた口に直接精霊さんに水を注いでもらう。


(……これは女の子としてやっちゃダメな気がする)


いろいろ落ち着いたらコップとか食器とか作ろう。

それに使えそうな木も見つけたし。


そして、休憩中にふと思い立ったことがあった。


「……そういえば、魔法って何が使えるんだろう」


思えば今まで水を出す魔法しか使ったことがない。

私が知っている限り、魔法は精霊さんにお願いをすることで使うことができる。

では、精霊さんはどこまでお願いを聞いてくれるのか。

精霊さんの存在は、それっぽい気配をずっと身近に感じているから特に疑ってはいないけれど。

何の魔法で何をどこまでできるのか。

これは確かめてみねばなるまい。


というわけで、休憩がてらいろいろ試してみた。

試せたのは、いわゆる属性で言えば、水、風、土、雷の四種類。


まずは水。

出せるのはわかっていたから、どこまで操れるかを試してみたら、これが結構自由がきいた。

球体で維持するのも、その形状を変化させるのも、勢いをつけて放つのも。

物理的な質量は魔法にはあまり関係ないらしい。

魔法すごい。

攻撃に使えそうなのは、高圧水流を物干し竿くらいの細さで放つやり方か。

木の幹に風穴を開けられたので、十分な威力があると考えていいと思う。

地球の高圧水流はどこまで威力出るのか知らないけれど。

これ以上細くするには、集中と練習が必要そうに感じた。



次は風。

こちらも操るということについては全く問題ないと思われた。

流れの強弱も思うままだし、すごく集中すれば複数の流れを作ることもできた。

そして、よくものを切断するのに使うような風の刃も問題なく実現できた。

期待以上の切れ味に調子に乗って使いまくっていたら、目の前の木がこちらに倒れてきて押しつぶされそうになったときはさすがに焦った。



次に土。

これなかなか厄介だった。

操る分には、やはり問題ない。

土で何かを作るのも、作りたいものをイメージしながら魔法を使えばいいので非常に楽ができそうだ。

問題はその速さ。

全体的に変化が遅いのだ。

ほかの属性と比べて、はるかにゆっくりと変化していくので、とっさの判断で何かするには全く向かない。

土の精霊さんはきっとマイペースなのだ。そうに違いない。

とはいえモノづくりに関しては最も使えると思うので、良しとする。



最後に雷。

これは操るとかいう次元ではなかった。

この体に魔力があるとすれば、ただただ魔力を雷に変換して光の速度でとんでもない衝撃をぶつける。

ただそれだけ。

雷なので、被害は拡散しにくいけれど対象をひたすらに蹂躙する。

あと狙いにくい。

思うように狙ったところに当てられない。

お陰で木に当たって危うく山火事になりかけた。

仕方ない。雷だもの。

魔法ならきっと制御できると信じて、要練習である。



火属性は手のひらに小さい火を浮かべて終わりにした。

万が一山火事でも起こしてしまったら、見つけた食材たちを失うだけでなく、最悪私が炎にまかれて死ぬ。

それでは本末転倒だ。

雷でやらかしかけたのは笑えなかったがご愛敬。



魔法についてここまでのことを総括すると。

精霊さんは結構お願いを聞いてくれる。

求めることが複雑になると、より私の想像力が問われてくる。

結局、集中するとはより具体的にイメージするということなのだ。

つまり、イメージさえできれば大体のことができる。


魔法すごい。

精霊さんすごい。


「精霊さん、いつもお水をくれてありがとうございます。これからもよろしくお願いします」



ところでなぜ四属性だけで、光とか闇とかそういった属性を試さなかったのか。

それは、単純に私が雷を試した直後に寝落ちしたから。

後になって思えば、おそらく魔力切れというものだったのだろうけど。



そんなおっちょこちょいで二日目が終わり、三日目には全力で安心して寝られそうな場所を探した。

一日中あちこち駆けずり回った結果、崖の壁面に小さなくぼみを見つけて、これを土魔法で拡張してやればいいのだと思い立った。

その日は疲れ果てていたので、とりあえず掘り進み、こもれる状態を作って眠った。



そこからは食べ物を集めてきたり、隠れ家を改良したりして数日を過ごした。


そしてそれらが落ち着いたとき、ある問題に直面した。


「体を鍛えようにも、肉がない!」


今まで野菜や果物でお腹を満たしてきたけれど、ここを離れるには体力をつけなければならない。

もちろんこの森に来た当初よりは、はるかに健康状態はマシになったし、それなりに活動できるようにもなってきた。

けれど、今の私の目的はマーガレットと一緒に世界をめぐる事。

そのためには、このがりがりに痩せた体に肉と体力をつけなければ、この森を出ることすらできないだろう。

もしかしたらタンパク質を含む野菜なんかもあるのかもしれないが、とれるなら肉のほうがいいのは間違いないのだ。


なら獲ればいいじゃない。

ではどう獲るか。


まずこの体ではこちらから攻める物理的な狩りは無理だ。

追いかけている間にこちらがダウンしてしまう。

やるなら体を鍛えてからだ。


次。

飛び道具なら追いかけなくても、気づかれないところから仕留めることが期待できる。

ということで作ってみました。

私お手製の、よくしなる枝と丈夫そうなつるでできた弓。

狙いは風魔法で補助してやれば大丈夫。


出来栄えを確かめるため、いざ試射。


結果。

まともに引くことすらできなかった。

流石に落ち込んだ。

四つん這いでしばらく動けなかった。



そして次の選択肢。

魔法。

水魔法の高圧水流で射貫いてもいいし、風魔法でスパっと切ってもいいし、土魔法で罠を仕掛けてもいい。雷魔法は調整がきかないので見送り。

体力は関係なく、遠距離から攻撃できて、特別な道具は何もいらない。

魔法ってすごい。便利すぎる。


早速狩りにでた。

獲物を探しながら、なんとなくここがよさそうと思ったところに、土魔法で落とし穴を作っていく。

ネットとかなくても、土魔法で崩れない程度に薄く穴をふさいで、はっぱをかけてやればカモフラージュ完了。



そうしているうちに見つけたカピバラのような動物。

額に生えた小さな角がとってもチャーミングだ。

無防備に草を食む姿はとてもかわいらしい。

そんな生き物の命を奪おうしていることに、罪悪感と抵抗を覚える。


が、慈悲はない。

私は雑念を振り払うように、思い切り風魔法を放つ。

放たれた風の刃は、一直線にカピバラもどきに迫り、その首を飛ばした。


「ごめんね。でも、あの子のためにこんなことで立ち止まってはいられないから」


あっさりと初の狩りを成功させた私は、獲物を回収して隠れ家へと戻り、やったこともない動物の解体に四苦八苦しながら、この森に来て初めての肉にありついたのだった。

この時ほど食事前のあいさつに心を込めたことはないし、食べた肉の味はとてもおいしいとは言えなかったけれど、この先忘れることはないだろう。


この日から、私の一日の活動に狩りが加わった。


そして、食材に肉が加わってからというもの、この体は日を追うごとにどんどん変化していった。


荒れ気味だった肌は張りとつやが出て瑞々しく。


骨と皮ばかりだった体は程よく筋肉がつき、毎日動き回っていることもあって、子供体形なりに引き締まって均整の取れた体つきに。


ぼさぼさガサガサだった髪も、若さの力故にか、ろくに手入れなどできていないのにもかかわらず、サラサラのつやつやだ。



この変化が、肉を食べ始めてから約一週間で起こった。

この変化の仕方は、この世界では果たして普通なのか、おかしいのか。

私は後者だと思っている。マーガレットの記憶に出てくる人たちも、私をここまで運んできた男たちも、地球の人と比べて特段おかしなところはなかったと思う。

それに、このペースで体形が変化していたら、この世界はおそらく、ふくよかな人々であふれるだろう。

マーガレットや私のこの世界で触れた範囲は狭いけれど、間違ってはいないと思う。


それに、牢屋にいたころから薄々気づいてはいた。

マーガレットの体質が普通ではないことに。


確かにマーガレットは虐待され、不健康な状態だったが、目立ったケガや病気をしていなかった。

幼い体に、頻繁に殴る蹴るの暴力を受けていたのに骨折もせず、細かいケガもすぐにふさがって治ってしまうため、傷を負ったことに気づきすらしなかったこともあったに違いない。


その記憶があったから、私はあの時、ためらいなく崖から身を投げ出せたのだ。

現に、崖を転がり落ちたにもかかわらず骨折も捻挫もしていなかった。


おかしいのは頑丈さだけではない。

この森に来てから、次の日に疲れや筋肉痛を感じたことがないのだ。

来た当初は食事をとれていないのが原因であろう倦怠感が体に居座っていた。

それが食事をとれるようになってからというもの、動けば疲れるが寝ればすっきりと目覚め、筋肉痛を感じることもなく日に日に体力が増していくのを実感できるほどの成長具合。

おそらく自然回復力がとても高いのだと思う。

超回復力とでも言おうか。


かなりの頑丈さ、超回復力がこの体には備わっている。

そこに加えて、魔封じの枷をもってしても抑えきれない魔法の才。

魔封じの枷はあの国の上位の魔法使いをも封じてしまう代物だというから、マーガレットの魔法の才は相当なものなのだろう。


成り行きでこの体を受け継いだ私からすればとてもうれしいことばかりだが、マーガレットはいったい何者なのかが気になってくる。


この世界にアルビノ種として生まれたものは皆そうなのか。

マーガレットだけなのだとしたら、マーガレットが特別なのか、それともただの個性なのか。

もしくは母親や父親、その系譜に特殊な事柄があるのか。


(マーガレットのことを知ることができるなら、旅のついでに調べてみてもいいかもしれない)


そんなことを思いながら、私は旅立ちに向けて準備を進めていった。



第四話、いかがでしたでしょうか。

今後の予定としては、次に別視点を挟み、その後いよいよ世界を望む旅へと出発するという流れを考えています。ご期待いただければ嬉しいです。


拙作をお読みいただいた皆様、面白い、続きが気になると感じられましたら、ぜひブックマーク登録、評価をお願いします。

数字が見える評価というのはとても励みになると、私も作者になってみてから痛感いたしました。

数字が増えれば増えるほどやる気がみなぎってきますので、ぜひお願いいたします。

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