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初めての護衛任務

第二十二話です。

誤字報告をしていただきまして、有難うございます。

私としても気を付けてはいるつもりなのですが、どうしても見落としがあるようで……。

報告していただけると非常に助かります。

それでは、どうぞ。



「すまなかった」


私に向かって、若い兵士さんが頭を下げてきた。


「お前の実力はよくわかった。今回の任務では、よろしく頼む」


「はい、認めて頂けたのなら何よりです。こちらこそ、よろしくお願いします」


そう返して、私も頭を下げた。


「いやはや、見事な腕前であった。益々エリザベスの護衛に欲しいものだ。今からでも構わんが、どうかね、マーガレット殿?」


声と共に、拍手が聞こえてきた。

離れて観戦していた領主様が近くにやってきていたらしい。

後ろにサリファスさんもいる。


「お誘いは嬉しいのですが、遠慮させていただきます」


「ううむ、わかってはいたが実に惜しいな。まあ良い。此度の任務、よろしく頼むぞ」


そういって、領主様はサリファスさんを連れて屋敷の戻っていってしまった。


というかいいのだろうか。

領主様の兵に、手合わせという名目ではあったものの、勝ってしまった。

領主様としては、ある種その顔に泥を塗られたようなことになると思うのだが……。


(まあ何も言われなかったし、良しとしておこう)


私はヴァイツさんに向きなおり、声をかけた。


「これで私の実力については理解していただけたと思いますが、大丈夫ですか?」


もし納得できないというならば、もう何人かと戦ってもいい。

まだそこまで疲れたという感じはしないし、むしろ対人戦のいい経験になりそうだ。


「ああ、よくわかった。皆もよいか?」


そういってヴァイツさんは残りの人たちに目を向けるが、反対する人はいなかった。

なんだ、残念。


(いや、残念ってなんだ。まるで戦闘狂みたいじゃないか。むしろ余計に戦わずに済んでよかった。うん)


ちょっと思考が過激になっているかもしれない。

落ち着こう。


「顔合わせはそろそろよろしいですかな?」


領主様を屋敷へ連れていたサリファスさんが戻ってきた。


「はい、私は大丈夫です」


私がそう返せば、他の人達からも同意の声が上がった。


「それでは今後の予定などの打ち合わせといたしましょう。それではこちらへどうぞ」


先導に歩き出したサリファスさんに続いて、私たちは屋敷の中へと案内され、私たちは護衛時の役割分担など、依頼内容を詰めていった。



------



今日はいよいよ出発の日。


手合わせした日から、身の回りの準備とかミリィの訓練とかギルドに顔を出したりとかしていたら、あっという間に日が経ってしまった。


準備はそこまで用意するものはなかったのですぐに済んだけれど、ギルドの挨拶が大変だった。

特に受付のお姉さんが。


挨拶をしようと思って建物に入ったら、お姉さんに無言で手招きされ、何だろうと思って近づいてみたら、がばりと抱きしめられてしばらく放してもらえなかった。

抱かれていたらそのぬくもりが気持ちよくて、ついついされるがままになってしまったのは秘密だ。


そんなことはあれど、大きなトラブルはなく。


ミリィは体力こそそこまで変化はしなかったようだけれど、周囲を探る感覚を磨くことはできたらしい。

初めは私への報告も何を言ったらいいのかわからない風であったけれど、日ごとに今日はあんなことがあった、こんなものを見つけたって目をキラキラさせて報告してくれるようになった。

もともと外への興味はあったようで、楽しくて仕方がないといった様子を見ていれば、多少の障害はあっても自分で乗り越えられるだろうと思えた。

もちろん、私にできることがあれば手助けはしていくつもりだ。


護衛任務の間、ミリィをこの街に置いていくか、どうにかして連れていくかどうするかで少し悩んだが、結局連れていくことにした。


この街に置いていくにも、ついて来るかと聞いた直後に置いていくのは、いらない誤解を招きそうだし、預けるにしても当てがない。

ギルドにも領主様にも、そういうお願いをできるほど何かしたわけではないし。


そういうわけで、護衛任務に私の仲間として連れていくことにした。

それを護衛隊長やサリファスさんに打診しに行ったが、やはりというか当然というかあまりい顔はされなかった。

むしろ最初ははっきり拒否された。

だけど、ミリィの行動に関しては私が責任を持つこと、緊急時にはエリザベス様を優先すること、そしてエリザベス様本人の意向で、同行が認められることになった。


エリザベス様曰く、


「年が近い子がいたほうが楽しいですから。それに、一人増えたぐらいであなたたちは満足に護衛もできなくなるのかしら?」


と。

彼女の強気で挑発的な物言いに私は少し驚いたものの、ヴァイツさんはため息をつきつつ認めていた。

ヴァイツさんの様子では、エリザベス様はいつもこんな感じなのかもしれない。

そういえば、私を専属護衛にしたいと言い出したのも彼女だったか。

大人しい利口な子なのかと思っていたが、意外とお転婆なところがあるらしい。


護衛任務で護衛対象が一人増えるのは大変なことだと思うが、ミリィは護衛対象ではないし、エリザベス様優先で行動すれば大丈夫なはずだ。

ミリィとはこの話し合いの前に、護衛任務に連れていくつもりでいることと、優先順位については話してある。

彼女は特に反対することなく受け入れてくれたが、私の足手まといになるのではないかと気にしていたので、しっかり訓練して、今後助けてくれればいいと言っておいた。



準備を整えて領主様の屋敷に向かえば、屋敷の前にいかにも貴族と主張するような立派な馬車が停まっていた。

外装には何やら紋章のようなものがある。

きっとこれが領主様の家紋なのだろう。

覚える気はないけれど。


(いや待てよ。魔法学園は貴族も多いはず。その相手をするのなら、貴族の家紋とかも覚えなきゃいけないのか?)


魔法の素質を持つものは貴族に囲われると聞いたから、おそらく学園には貴族の人が多くいるのだろう。

地球での知識のせいだろうが、貴族はどうも面倒な存在という印象が強い。

もちろん貴族のすべてがそうだとは思わないけれど。

ここの領主様は良い人そうではあるが、全員がそうというわけでもないはず。

そして、私は特に目立つ白色種。


(ちょっと早まったかもしれない)


起こりそうなトラブルを想像していたら、その憂鬱さに思わずため息をついてしまった。


「?メグ、どうかした?」


「ううん、なんでもない」


隣を歩いていたミリィがそれに気づき、心配そうにのぞき込んでくるが、ごまかしておく。


貴族との関りがあると決まった訳ではないのだから、今から気にしていてもしょうがない。

私は気持ちを切り替えて、馬車の方へと向かった。



屋敷の入り口へと向かえば、そこにはすでに護衛の五人が準備万端といった様子で立っていた。

私たちに気づいたヴァイツさんが歩み寄ってくる。


「うむ、時間通りだな。今日からよろしく頼む。荷物は随伴する馬車が向こうにあるから、そちらに乗せてくれ」


挨拶を交わし、指示の通りに荷物をもう一台の馬車の方に乗せる。

こちらの馬車は家紋はあるものの、屋敷の前にあったものよりも幾分か質素な造りをしている。

移動中護衛が全員外に出て歩くわけにもいかないので、こちらの馬車に乗るものと外の警戒をするもので分かれて移動するとのこと。


今回の道のり、予定は二週間とされている。

道中は一日かからない距離ごとに宿場らしいものがあるので、それを利用しながら進むことになっている。

よほどのことがない限り、貴族のお嬢様を連れて野宿などはありえないそうだ。



「もうすぐお嬢様の支度が終わる。お嬢様が馬車にお乗りになり次第出発するから、用意しておけ」


護衛の一人にそう言われ、一台目の馬車の近くでミリィと共に待機する。

ミリィはかなり緊張しているようだ。

護衛の任務の話をしたときに、今まで孤児として暮らしてきて、貴族様と関わる事になるなんて想像もしていなかったと語っていたから、粗相をしないようにと必死なのだろう。

私は少しでも緊張を解せればと、彼女の手をにぎにぎした。


ほどなくして屋敷の扉が開かれ、エリザベス様が出てくる。

私とミリィは言われていた通り、馬車の手前に跪き、彼女を迎える。


「護衛隊の皆様、よろしくお願いしますね」


「は、お任せください」


エリザベス様が声を掛け、ヴァイツさんがそれにこたえる。


「マーガレット様も、よろしくお願いします」


「はい、お任せください」


聞かされていた予定ではヴァイツさんに声を掛けて終わりだったはずなのだが、なぜか私にも声を掛けられた。

とっさだったのでほぼ同じ内容しか言えなかったが、エリザベス様は満足そうに頷くと、馬車に乗り込んでいった。


「それでは出発する!」


ヴァイツさんの掛け声とともに、馬車が動き出す。


街を出るまではこのまま護衛全員が歩きで進み、街を出た後に交代で進む。


私は、いきなりの長期の任務に、道中で何事もありませんようにと祈りつつ、馬車と共に歩みを進めた。



私の、初めての護衛任務が始まる。



如何でしたでしょうか。

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今後もどうぞお付き合いくださいませ。

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