ハンターたるもの
第十一話です。
昨日も評価、ブックマークが増えていまして、とてもうれしかったです。
皆様にもっと楽しんでいただけるよう、精進してまいります。
それでは、お楽しみください。
「この騒ぎは何だ?お前たちは何をしている!」
そう声を張りながら、ここにやってきた大柄で筋肉質な男。
その男は名前をプラドといい、ハンターズギルドの副ギルド長であるという。
「騒ぎの原因はお前たちか。ここは決闘での使用は許可されていないはずだ。お前はギルド員だな。お前には確か受付を任せていたはずだ。ここで何をしている。説明しろ」
プラドは鋭い視線を私と戦っていた男に向けながら問う。
「そ、それは……。こ、こいつが俺たちを馬鹿にするようなことを言いやがったからだ!こいつがハンターになりたいとか、他にも好き放題舐めたこと言いやがるから、俺がハンターがどういうものか教えてやろうと……!」
男は口ごもるも、私に目を向けた途端、必死な様子で訴え始めた。
プラドは男の言い分を聞くと、ついで私に視線を向けてきた。
「娘、お前にも聞こう。なぜこうなった」
ふむ。
この人はちゃんと人の話を聞こうとする人らしい。
良いぞ。
私の好感度アップだ。
「大体その男が言った通りですが、少し訂正します。私はハンターズギルドを馬鹿にはしてません。私はあくまで、彼が私の外見だけで決めつけるものだからそれを指摘してやっただけです。ハンターズギルドに対しては何も言ってません」
私の話を聞いた男は、周囲で観戦していたものたちに視線をやる。
「お前たちの中にその様子を見ていた者で、この娘の言い分におかしなところがあると思う者はいるか」
その台詞に対して、周りにいたものたちは何も反応しなかった。
「そうか、大体分かった。それで子供を相手に力ずくか?しかも真剣とはな。煽られたとしても、どう考えてもやりすぎだ。それにお前がなぜ登録を拒む。お前にそんな権限はない」
プラドは男にきっぱりとそう告げると、処分は後で伝えると言って、男をギルドへ戻らせた。
男が私に負けたことに触れなかったのは、彼なりのやさしさか。
「そして娘、お前もあまり余計なことを言わないことだ。今回は何事もなく良かったかもしれんが、次はどうなるかわからんぞ。気を付けろ」
そして、私にも言葉をかけてくる。
男に向けたものとは違い、大分穏やかな声だ。
しかも子供のもわかるように気をつけているのがわかる。
この人は良い人だ。
間違いない。
そして私の勝手な感想だが、この人、顔つきが結構きついから、子供たちに逃げられていそうだ。
いや、意外と一周回って人気者なタイプか?
まあどちらにせよ、私は普通に接してあげよう。
「はい。ご忠告有難うございます。あと、場を収めてくれてありごとうございます。面倒をかけてしまってごめんなさい」
私があの男を煽って怒らせちょっとした騒ぎになってしまったのは、半分くらいわざととはいえ、プラドに余計な手間をかけさせたのは事実。
私は素直に頭を下げた。
「しっかりした子だな。これも俺の仕事だ。気にするな。たしかハンター登録に来たと言っていたな。詳しい話は中でしよう」
そう言ってプラドは軽く笑みを浮かべながら、私の頭をなでてきた。
(これは子供に人気なタイプだな。撫でなれてる)
そう思わされる、優しい手つきだった。
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場所を移り、建物に入って奥に進み、階段を上がった廊下の先に在るギルド長の部屋、その横にある服ギルド長の部屋。
プラドと私はテーブルを挟み、ソファに向かい合って座っていた。
「さて、まずはうちのギルド員が迷惑をかけた。本当に申し訳ない」
話始めるなり、プラドはそう言って頭を下げてくる。
「ハンターズギルドは門戸をたたくその人間がどんな奴であろうと、拒むことはない。それがたとえ過去に罪を犯した者であってもだ。誰でもなれるってこともあって、訳ありだったり素行が悪かったりする者も多い。だから町の人間からも煙たがられる。ハンターってのはそういうもんなんだが……。あいつは以前からそれを不満に思っている節があった。それにさっさと対処していなかったこちらが悪い」
プラドはそう言って軽くため息をついた。
「ハンターは誰でもなれるが、ゆえに決まりには厳しい。誰でも入れるとはいえ、決まりを守る意思がない者は登録させん。決まりを破ったものは程度に応じて処分を下す。それが、そういったやつらを招き入れた組織として外へ示すべきけじめだからだ。これを守り貫くことで俺たちは存在を許され、頼られる存在になれる。そしてそれを失ったとき、俺たちはただの蛮族の集まりと化す。そうなればこの街に居場所はなくなるだろう。俺たちはそういう存在だ」
そこでプラドは言葉を切ると、何やら面白いものを見るような目でこちらを見てきた。
「お前は白色種で、身なりからすると貴族の子供か?しつけが行き届いているようだから、相当家柄は良いのだろうな。白色種で貴族ともなれば、歳や名前くらいは聞こえていてもおかしくはないが……。外に出始めたのは最近か?白色種は能力が高いものが多いとはいえ、まだ小さいなりの実力かと思えば、武器を持った大人を素手で制圧できる実力がある。そんなお前が、ここに何を望む?」
そして口を閉じ。静かに見つめてくる。
私はそれにこたえるべく口を開いた。
「私は旅をしています。その路銀稼ぎにここが一番合っていそうだと思ったから、ここに来ました」
「そうか、旅か。ハンターズギルドは数だけは多い。多くの国をまたがってあちこちにあるから、確かに向いているな。だが白色種であれば国への士官も容易だろうし、貴族の中でも引く手数多だろう。他にも騎士や文官系統にも優遇されるはずだ。それでもここがいいというのか?」
「もちろん。私も目的は自由に旅をすることですから、そういったものには興味ありません」
「自由にとは言うが、お前は希少な白色種だ。それを隠さない限り、お前の意志に関わらず取り込もうとするものが出てくる。中には手段を選ばない者も、犯罪目的でお前を狙う者も間違いなくいるだろう。少なくとも、国に仕官するなり何らかの形で庇護されている方が、まったくでないとは言わないが、手を出しにくくはなる。だが自由に歩き回っていれば、そいつらの格好の的だ。それでもか?」
「何を言われようと答えは変わりません。邪魔をする者がいるのなら、避けて通るなり、押し通るなりするだけです」
プラドの問いに私がきっぱりと答えを返すと、プラドは何やら満足したように笑い始めた。
「そうかそうか。益々気に入った。お前は実にハンターに向いている。わかった。ハンターへの登録を認めよう。まずはここでハンターについての説明を聞け。言っておくが、さっき言った通りハンターズギルドは決まりごとに厳しい。聞き漏らして決まりを破るなんて事のないようにしっかり聞けよ」
「言われるまでもありませんね。本当であれば、私は目立ちたくないので。さっきのことだってあそこまでするつもりはなかったんですから」
「お前、それ本気で言ってるのか?」
プラドへの注意にそう言葉を返せば、なぜかプラドに驚きと呆れの混じった顔を向けられる。
何か変なことを言っただろうか。
「お前、すでにこのギルドじゃ相当目立ってるぞ。なんせ自分の子供みたいな娘にハンターがいいようにやられたんだからな。その上白色種。明日には間違いなく街に広がってるだろうよ」
呆れ交じりのその言葉に、私は衝撃のあまり言葉が出なかった。
私としたことが、こんなところで無自覚目立ちをしてしまうとは。
正直、白色種の話題性とこの体の外見による注目度を見誤っていた。
白色種の話題性は実態は大したことがないだろうと思っていたし、外見については背が低くてちょっと不便という程度にしか考えていなかった。
それらがここまで絶大な話題性を提供することになろうとは。
だがなってしまったものは仕方がない。
せめて話題が風化するまで話題を提供することなく、大人しくするのが最善だろう。
そこまで考えて、すでにハンターの説明が始まっていることに気づいた私は、慌ててせて名を聞きなおすのだった。
第十一話、いかがでしたでしょうか。
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