登録試験?
第十話です。
今回も若干短めですが、お楽しみいただければ幸いです。
ブックマーク、評価していただいた方、有難うございます。
まだの方は、ぜひお願いいたします。
「ダメだ」
ハンターズギルドでハンター登録をしようとしたら、何やらじろじろ見られた挙句、断られた。
だが私はこの程度で憤慨するようなお子様ではない。
「なぜですか?」
「ハンターズギルドお前みたいな子供が来るところじゃない。ままごとでできるようなことじゃねぇんだ。分かったら帰れ」
「それはおかしいです。先ほどは子供でも魔物を倒せればいいと言っていたじゃないですか。それに、ここでは大きな危険のない、街中の依頼もあると聞きました。それを受けて小遣い稼ぎをする子供もいると」
「ああ、倒せればな。お前さんの見てくれじゃあ、とてもじゃないが倒せるようには見えん。そんで、ここで依頼を受ける子供はそれなりの事情があるやつばかりだ。どこの貴族だか知らんがその子供が来るようなところじゃねんだよ。帰れ」
「私は貴族じゃないし、遊びでここに来たわけじゃないです。それに魔物を倒す自信もあります。どうすれば登録してもらえますか?」
「ダメと言ったらダメだ。白色種だからって調子に乗ってんだろうがそうはいかねえ。ハンターはな、お前みたいな舐めたクソガキがやれるもんじゃねーんだよ。いい加減出ていかねえと力づくで追い出すぞ」
一応真面目に受け答えしてみたが、取り付く島もない。
この男、何か貴族や白色種に因縁でもあるのだろうか。
妙に目の敵にでもしているような印象を受けるが。
まあ、この様子ではこれ以上何か言っても、ますます頑なになるだけだろう。
一度出直そう。
「わかりました。貴方が見かけでしか人を判断できないような、自分の思い込みで他人を決めつける人だということはとてもよく分かったので。後日出直して他の人にお願いすることにします。まさかここをあなた一人で回しているということはないでしょうから。それじゃあ」
「待て」
少しばかり鬱憤を晴らしつつ、踵を返して出ていこうとしたら、呼び止められた。
「何ですか?」
「テメエ人に喧嘩売っておいてただで帰るつもりじゃないだろうな」
見れば、言ったことが何か地雷でも踏んだのか、男は顔を真っ赤にして私をにらんできている。
(自分が帰れって言ったんだろうが)
ちょっとイラっとしたから煽りはしたが、ここまで効くとは思わなかった。
だけど、この流れは使えるかもしれない。
「貴方が帰れっていったんじゃないですか。それに、私は喧嘩なんて売ってません。事実を言っただけですが」
「このクソガキが、こっちが下手に出てりゃいい気になりやがって!」
「どこが下手だったんです?終始偉そうでしたよね。私のことなんて何も知らないくせに」
「黙れ!そこまで言うなら見せてもらおうじゃねえか、テメエの自信のほどをよぉ!だが俺が勝ったら二度とここに顔を出すな!」
釣れた。
「いいですよ。じゃあ、私がかったらハンターの登録をしてください。まさか嫌とは言わないですよね?」
「いいだろう。そんなことはありえねえがな!ついてこい!」
そう言って男は肩を怒らせながら建物を出ていく。
私はそれに追従しながら、周りに視線を向ける。
(流石にこれだけ騒げば注目されるよね)
数が少ないとはいえ、建物の中にいたハンターは漏れなくこちらに視線を向けていた。
中にはついて来る者もいるだろう。
(ちょっと面倒なことになったけど、とりあえずさっさと男を試して、登録を済ませよう)
そう考えつつ、私は男の後を追った。
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連れてこられた先は、建物の裏手にある訓練所のような場所だった。
藁の人形であったり、いろんな武器が揃えておいてあるところを見ると、外れではないだろうことは分かる。
「ここだ。武器はその辺のを適当に使え。先に言っとくが手加減はしねえ。というかぶっ殺す気でいく。死にたくなきゃ全力でやるんだな」
男は私に向き合うと、腰の剣を抜きながらわざわざそんなことを言ってきた。
今は少し落ち着いているようだが、あのセリフがよほど癇に障ったのだろうか。
というか真剣でやるつもりらしい。
殺る気満々だ。
せっかくだからもう少し煽っておこう。
「それはご丁寧にどうも。いたいけな子供相手にぶっ殺すとか大人げないですね。貴方何歳ですか?」
「このクソガキが!死ね!」
皮肉を全開にして、さらに鼻で笑ってやれば、男は完全に頭に来たらしい。
一瞬で顔を先ほどよしさらに赤くすると、暴言を吐きながら、剣を右手に持って詰め寄ってきた。
上段からの剣の振り降ろし。
これは右へ躱す。
男はそのまま左手で裏拳を放ってくる。
これは男の腕を抑えて勢いを殺す。
背中側に回りながら男の軸足に私の足を添え……たいが足が届かないので、仕方なく膝裏を蹴りつけてバランスを崩してやる。
そこから抑えた左腕を男の背中側に引いてやれば、男の体は簡単に地面へと倒れる。
森にいたころ土魔法で金属を選別して作り上げた短剣を首元に添えてやれば、一丁上がりだ。
(あ、しまった)
つい隙だらけだったから普通に終わらせてしまった。
本当はこの戦いで、ハンター登録だけじゃなく、ハンターの魔法の使い方を見られたらいいと思っていたのに。
もしかしたらこの男が使えない可能性もあったが、それはそれだ。
(魔法についての知識は、マーガレットの記憶の義母姉が使っていた様子だけ)
もしかしたら魔法は貴族だけのものだったり、一般人が気軽に使えるようなものではないかもしれない。
そうだった場合、魔法の使い方を考えなければならないだろう。
その判断材料にするつもりだったのに。
(やってしまったものは仕方がない。またの機会にしよう)
「これで、納得してもらえますよね?」
魔法のことは置いておき、とりあえずハンター登録をと、男に降参を促す。
しかし、
「ま、まだだ!テメエ何しやがった!俺がこんなガキにやられるわけねえだろうが!もう一度だ!」
そう言って男は私を突飛ばそうとする。
それを躱して離れると、男はすぐさま立ち上がって、剣を構えてきた。
再びかかってきたのを、先ほどと同じように、相手の死角に潜りこんで姿勢を崩し、引き倒してやる。
男はそれでも認めないと騒ぎ暴れようとする。
私がだんだん面倒になり、そろそろ気絶でもさせて強制的に終わらせようかと思っていたら。
「これは何の騒ぎだ?お前たちは何をしている!」
大柄な筋肉質の男が、訓練場に乱入してきたのだった。
第十話いかがでしたでしょうか。
よろしければ、評価、ブックマークをよろしくお願いいたします。
次回からはもう少し、テンポよく、かつ分量もそれなりに書いていきたいと思うので、ご期待いただければと思います。それでは。