表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/150

042 異次元迷宮「エノム・オルミガロ」

 四人乗りのエアカーが完成するまで、まだ時間がある。とりあえず、俺たちは情報収集および何か困りごとの依頼でもないかと、冒険者ギルドにやってきた。


 受付の女性はビセーヌさんで、元冒険者だったこともあり、筋肉の引き締まった腕でややがさつに書類を扱うのが特徴的だ。

 小麦色に焼けた肌は、きっと事務職になった今でも日焼けするように心がけているに違いない。頭に傾けて載せている、赤い花をあしらった小さな麦わら帽子は、冒険者時代の名残だろうか。


「ムートリア聖国の情勢? そりゃあ、良くないね」


 エルバートの問い合わせに、ビセーヌさんがぶっきらぼうに答える。


「商隊の行き来もままならないから、護衛の仕事にあぶれる奴らもいっぱいさ」


「僕はクーデターと聞いているのだけど、一体何が起こっているんだい?」


 エルバートとユーゼはムートリア聖国方面からここメキド王国に来たので、その当時の向こうの情勢は分かっている。


「反政府組織が聖王と対立しているという話さ。それで、聖王に取って代わって国を治めたい、というのが反政府組織の思惑さ。向こうの冒険者ギルドから寄せられる情報だと、今は拮抗(きっこう)していて膠着(こうちゃく)状態だって話だ」


「長引くってことか。分かった。ありがとう」


「次に向かうのはジドニア獣国になりそうね。エアカーが完成するまで時間があるから、依頼を見ましょう」


「ちょっと待ってくれ。あんたたちBランク冒険者だろ? これを受けてくれよ」


 ビセーヌさんが慌てるように、レイナを引き留める。

 実際にBランクなのはレイナ一人だけど、名目上はBランクパーティだ。


 差し出された依頼票には、「異次元迷宮『エノム・オルミガロ』のボス討伐」と書いてある。


「今はさ、この間のロック鳥の襲撃の影響で、高ランクの冒険者が足りていないのさ。まだ怪我から復帰していない者が多くて、異次元迷宮に向かってもらえる気概のある奴がいないんだ」


 通常、骨折したら「ハイ・ヒール」で治癒する。そして、骨折そのものが治っても、元のように動かせるまでにリハビリが必要になる。そのリハビリの期間は、術者の光属性魔法の熟練度によって大きく変わると言われている。

 ミリィは「ハイ・ヒール」ではなく、「ヒール」で骨折を完治できる。そして、リハビリも要らない。このことから、ミリィの光属性魔法の熟練度は相当高いと予想できる。そしてこれは、ヤムダ村で剣を使って回復魔法を発動する練習を繰り返した成果だと思っている。


「もう少し詳しく教えてくれるかしら?」


 他の冒険者たちは怪我のリハビリ中でいない。そして、冒険者ギルドは困っている。

 困っている者を助けたいのがレイナやエルバートのポリシーだ。


「流石はBランクパーティのリーダー。冒険者ギルドへの貢献度も高くするよう、ギルドマスターに掛け合っておくよ」


 目的の異次元迷宮はここから五日ほどの距離の丘にあり、そろそろボスを討伐しないと、迷宮から魔物が溢れ出す恐れがあるそうだ。

 ここ数カ月の間にいくつかのパーティが挑んだのだが、ボスまで辿り着けずにリタイアしている。とにかく多くの魔物に遭遇する。そのすべてがアリの魔物だ。


「みんな、受けるわよ? いいわね?」


「もちろん。僕に異論はない」


「エル様が受けるといったら、受けるのです! アリなんて、ばばーんと粉砕しちゃいます!」


「ユーゼさんは、頼もしいんだね」


「そうだね。ミリィの言う通りだ。全部ユーゼに任せてもいいかもね。俺は後ろで見ているよ」


「ミリィちゃんがいるから、魔物に突っ込んで行けるんですよ。頼もしいのはミリィちゃんです。チャムリなんかとは比べ者にならないです」


 今は姿を隠しているチャムリを、ディスってからかうユーゼ。


 レイナが手続きを済ませ、俺たちは異次元迷宮「エノム・オルミガロ」に向かった。


  ★  ★  ★


 ここが、異次元迷宮……。

 薄暗い洞窟みたいで、ちょっと怖いかも。

 パンダ君は、今までこんな迷宮にいくつも挑んできたんだよね。私も頑張らないといけないの。


「ライト」


 この魔法は、周囲を明るくする魔法なの。

 意識して消灯するまで、周囲を明るく照らし続けてくれるんだよ。

 そして、その間に、他の魔法を発動することもできるの。だから、明るい状態で回復魔法を唱えることができるんだよ。


「ありがとう、ミリィ」


 パンダ君に「ありがとう」って言われると、なんだか嬉しい気持ちになるの。

 もっと頑張れば、もっともっと言ってもらえるよね?


「サーチ!」


 パンダ君に「チェック」の魔法を伝授してもらったから、今日は「サーチ」で魔物の名前も分かるんだよ。

 今までは「大きな魔物」とか「人型の魔物」ぐらいしか分からなかったから、とっても便利になったと思うの。とくに、この迷宮には「アリ型の魔物」しかいないと聞いてたから、魔物の名前が分からなければ、役に立てなかったんじゃないかなあ。


「今日もミリィがサーチを使う? それなら、すぐに魔法に集中できるから助かるよ」


 攻撃魔法を発動するには、一旦、「サーチ」を解除しないといけないの。だから、私が「サーチ」を発動していれば、パンダ君は魔法の発動を早めることができるんだよ。


 洞窟の中を進んで行くと、見えてきたのは分かれ道。

 多分、今いる所が本通りで、右にあるのは小部屋に続いている細い通りだと思うの。


 昆虫のアリが作る巣と違って、本通りは垂直な縦穴にはなっていなくって、傾斜のついた坂道になっているの。

 魔物が大きすぎて縦穴を登れないからだとビセーヌさんは言っていたけど、本当なのかな?

 その他に、ビセーヌさんに教えてもらったことは、小部屋の魔物を倒して進まないと、後ろから(はさ)み撃ちに遭うってことなの。


「こっちに進むわ」


 レイナさんが細い通りに入って行ったけど、その先には……、


「アイアン・アント、数は……」と言いかけて、困っちゃった。どうしよう。アイアン・アントは次々と集まってきているの。


「いっぱい来るの」


 そう言うしか、思いつかなかったの。でも、伝わったみたい。


「レイナ、下がれ! イージス!」


 私たちと同じくらいの背丈の大きなアリの魔物が、土埃(つちぼこり)を上げて迫ってくるよ!


「フレイム・ランス!」


 エルバートさんが盾を構えて前進し、その後ろからパンダ君が火の槍を発動したの。

 走ってくるアイアン・アントの群れは、縦に並んだまま火の槍に次々と貫かれて、黒い霧になって消えちゃった。

 パンダ君、凄い、凄すぎなの。


「パンダさん、お見事です!」


 あ! 私の言いたかったことを、ユーゼさんに先に言われちゃった……。


「あ、あの。パンダ君、凄かったの!」


「ははは、ユーゼの活躍の場を奪っちゃったね。貫通する魔法が洞窟の中でここまで役に立つとは思っていなかったよ。ミリィも出番がなかったよね」


 そう言ってパンダ君は私の頭を撫でてくれたんだよ。やだ、嬉しいけどちょっと恥ずかしいかも。


「なあに、まだ一回しか戦っておらぬではないか。出番なぞ、これからたくさんあるのである」


 チャムリちゃんが、偏屈(へんくつ)なお爺ちゃんみたいに腕を組んで、ぷいっと横を向いちゃった。

 でもね、今まで一緒に旅してきたから、なんとなく分かるの。あれは、チャムリちゃんも褒めて欲しかったんだよね。でも、何もしていないから、褒められないよ。


「広い通りに戻りましょう」


 この小部屋の魔物を全部倒しちゃったから、また本通りに戻って奥を目指して歩き出したの。

 途中、襲ってくるアイアン・アントを、今度はユーゼさんとレイナさんが連携して倒しているの。


「ローズ・スプラッシュ!」


 レイナさんは虫が苦手なのに、大きな虫の魔物と戦うことは大丈夫みたい。


火炎撃(かえんげき)芍薬(しゃくやく)!」


 ユーゼさんの攻撃は、棍からお花が咲くように見えてとっても綺麗なの。

 それに、ユーゼさんが今使っている棍はパンダ君が新しく生成した物で、毎日魔法を通して魔法棍になっているんだよ。


「パンダさん、素晴らしいですよ! 新しい棍は魔物に与えるダメージが大幅に上がっています!」


 棍をくるくると回してユーゼさんが喜んでいるよ。


 いいなあ。私にもパンダ君からプレゼントが……。


 ここは本通りだから道幅が広くって、魔物が二匹横に並んで攻撃してくるの。

 それに対応するために、一匹をエルバートさんが受け持って、残りをユーゼさんとレイナさんが協力して倒しているの。


 パンダ君は、今は貫通する魔法ではなくて、横に広い魔法を使っているみたい。 


「曲がっている場所だと、フレイム・ランスよりもエア・スラッシュのほうが使い勝手がいいね」


 そういうことだったんだね。

 火の槍は真っ直ぐに進むから、曲がっている通りで魔物を貫通しても、壁に当たってしまうみたい。

 パンダ君、いろいろ考えて戦ってるんだね。私も頑張るよ。


 パンダ君が魔法で魔物を倒すことで空いた位置へ、ユーゼさんが突進して行ったの。

 奥にいる魔物に、一撃入れるみたい。


「倒しますよ! 氷結撃ひょうけつげき竜胆(りんどう)!」


 今度は青いお花が咲いたんだよ。綺麗だね。

 魔物は凍りついて、お花と一緒に砕けていっちゃったの。


 あ! 危ない!

 ユーゼさんが隣の魔物の動きに気づかずに、そのまま噛みつかれた!


「はあぁぁ!」


 私が慌てて回復魔法を唱えようとすると、それより早く、チャムリちゃんの回復魔法が発動したの。


 チャムリちゃんは、ユーゼさんが噛みつかれた瞬間に、もう発動していたから、いつもユーゼさんのことを見て、予測して動いているんだね。私もできるようにならなきゃ。


「ユーゼ、大丈夫か!?」


「エル様、大丈夫ですー」


 エルバートさんが、ユーゼさんを(かば)うように前に出て剣で魔物を切り伏せてるの。エルバートさんは盾で受けるだけでなく、積極的に剣で攻撃もするんだよ。なんでも、パンダ君に剣を魔法剣に変えてもらってから、以前と比べ物にならないくらい良く切れるようになったんだって。


「近寄ってくる集団はすべて倒したみたいね」


「ふぅ。アリの魔物って、集団で襲ってくるから戦闘中は息つく暇もないよね」


 迫ってくる魔物が途切れて、大きく息を吐いたパンダ君。何回も魔法を撃ってたよね。

 ここでもたくさんの魔物を倒し、いっぱい魔石を拾ったよ。


 それからも何度も小部屋を回ったり、本通りで戦ったりして、数え切れないくらいの魔物を倒して行ったの。

 すべてアリ型の魔物で、最初はアイアン・アントだけだったのに、次第にシルバー・アント、ミスリル・アントと、強い魔物が現れるようになっちゃって、それに伴って私の出番も増えてきたの。今では、回復だけじゃなくって、「フォース」や「シールド」で支援もしているんだよ。


「サーチ! ……小部屋には、アサルト・アントの群れがいるの」


 冒険者ギルドでビセーヌさんに聞いた話だと、ほとんどの冒険者がアサルト・アントを倒せなかったということなんだけど、大丈夫かな?


 私たちが小部屋に入る前に、アサルト・アントが物凄い勢いで飛び出してきたよ!

 私は急いで「シールド」を皆に掛け、続けて「フォース」を掛けたの。これくらい皆が近くに集まっていると、一度の発動で全員に掛けることができるんだよ。これはロッドのおかげなの。

 このロッドは、ヤムダ村に魔物がやってきたときに偶然使えるようになった物なんだけど、なんだか懐かしい感じがするの。


 アサルト・アントは今までこの迷宮で現れたどの魔物よりも小さくて、細い通路に三匹ぐらい並んで突進してくるよ!

 他にも、壁を使って迫ってくる者もいて、全部で五匹ぐらいを一度に相手することになっていて大変そう。

 それをエルバートさんが盾で防いでいるんだけど、そこから抜け出した一匹が滑り込むようにレイナさんの足元に牙を向けたの!


「ヒール!」


「ありがとう。助かるわ」


 片足に噛みついたアサルト・アントの頭に剣を突き立て、ユーゼさんと入れ替わって後退するレイナさん。


「ウインド・ブラスト!」


 パンダ君の魔法がユーゼさんの前に大きな風の流れを作って、それでユーゼさんの突破を邪魔していた魔物を奥へと転がしたよ。


「私の棍からは逃れられませんよ! 地襲撃(ちしゅうげき)(すすき)!」


 それを追いかけるように、ユーゼさんが駆けて振り抜いた棍が茶色く光って、(すすき)が魔物に映し出されたの。薄は茶色い茎で白い穂がついていて、ちょっと可愛いかも。


「えい!」


 さらに棍の一撃が入って、アサルト・アントは薄の白い穂が一斉に舞う姿となって消えていっちゃった。


 この後も、ユーゼさんとレイナさんが交互に入れ替わって魔物を倒し、それに、パンダ君の魔法もたくさんの魔物を消していったの。


「シールド・チャージ!」


 最後は、エルバートさんが盾で突進して仕留めたの。エルバートさんは剣だけではなくって、盾でも攻撃できるんだよ。


「アサルト・アントも何とかなったね。これなら、最奥部のボスも何とかなりそうだね」


「ああ。みんなの力を合わせれば、ボスも倒せるさ」


 本通りに戻って奥へと進んで行き、私たちは遂に、一番奥の突き当たりに辿り着いたみたいなの。

 ここには綺麗に装飾された大きな扉があるの。


「ここにボスがいるわ。みんな準備はいい?」


 レイナさんが振り返って皆を見たの。

 迷宮に入ってから、ここまでたくさん戦ってきて、レイナさんは戦うごとに動きが速く、そして攻撃力が上がっているように見えるんだけど……。パンダ君が言うには、これは「ローズ・ゾーン」っていう自動発動の特技によるものなんだって。


「いつでも行けまーす!」


 皆が頷きあい、ユーゼさんの掛け声とともに扉が開かれたの。


「うわっ いっぱいだ」


 扉の先には、パンダ君が驚くくらいに、たくさんの魔物がいるよ!

 ここの魔物は今までの魔物と違って、皆黒っぽくて、ゆらゆらと揺れていて、向こうが透けて見えている……。


 私は皆に補助魔法を付与しながら、魔物を調べてみたの。

 一番大きいのがクイーン・アント。羽で飛んでいるのがウイング・アントで盾と槍を持っているの。そして、クイーン・アントの前を守るように並んでいるのが、ガードマスター・アント。


 クイーン・アントは一匹だけで、他のは五匹ずついるの。全部で十一匹になるね。


「レイナは左、エルバートは中央、ユーゼは右!」


「はい!」


 リーダーはレイナさんだけど、今みたいに、後ろで全体をよく見ているパンダ君が指示を出すことがよくあるんだ。


 あれ?

 三人が魔物に近づいたときに、誰かが『クイーン・アント』と言ったような感じがするの。耳で聞いたんじゃなくって、頭の中に直接語りかけるように。

 そして、さっきまでゆらめいて透けていた魔物たちが、はっきりとした魔物の姿になったの。


「飛んでいるのは、できるだけ俺が仕留めるから、みんなは地上のを優先して狙って!」


 右から、火の玉が飛んでくる! ウイング・アントが魔法を放ったみたいなの。


「はあぁぁぁ!」


 チャムリちゃんが結界を張って、皆を魔法から守ってくれる。 


 あれ? 皆にかけてあった補助魔法が消えてるよ? 


 もう一度、補助魔法を発動しないと!

 それからは、戦っている皆に回復魔法を届けることで手一杯に……。


「ウインド・ブラスト!」


 パンダ君が魔法で右のウイング・アント二匹を落下させたの。パンダ君はそのまま走って魔法剣で二匹とも切っちゃった。


 その横でガードマスター・アントと戦っているエルバートさんの様子が少し変なの。顔色が黒っぽくなっているような……。


「キュア・ポイズン」


 回復魔法をお休みにして、毒を治す魔法を掛けてみたの。

 良かった。エルバートさんの顔色が戻ったみたい。

 うん、あれは毒だったんだよね。ガードマスター・アントは毒を使ってくるみたいなの。


「オーラ・スラッシュ!」


 レイナさんが、最近新しく使えるようになった剣技を使って、周囲を広く薙ぎ払ったよ。その姿は凛々しくて、とっても綺麗。

 パンダ君から聞いた話だと、剣の熟練度が上がると、新しい技が使えるようになるんだって。私の場合は、レベルが上がると、新しい光属性の魔法が使えるようになるから、似たようなものなのかな。


 左の方を気にしているうちに、右の魔物はパンダ君とユーゼさんが片づけちゃっていたの。

 そして、パンダ君はその位置から火の槍を発動して、左にいるウイング・アントを仕留めたの。


「助かったわ」


 ウイング・アントの攻撃を避けながらガードマスター・アントと戦っていたレイナさんは、これでガードマスター・アントに専念できると思うの。


「きゃっ!」


「ユーゼ! はあぁぁ!」


 中央で、クイーン・アントに迫ったユーゼさんに、回転する鉄の刃が命中! ユーゼさんは棍を握ったまま後ろに倒れ込んだの!

 私は急いで回復魔法を発動しようとしたんだけど、今度もチャムリちゃんが先に回復魔法を発動しちゃったよ。


「先読みなのである! ユーゼが攻撃を喰らう前に準備していれば、すぐに発動できるのである」


 つまり、いつもユーゼさんを見ているってことだよね。

 私の場合だと、ロッドを握っていれば皆に魔法がかかるから、誰か一人を見るんじゃなくって、皆を見ていないといけないの。

 私も皆をよく見て、傷つくより先に準備できるように頑張ってみるよ!


 エルバートさんとレイナさんの切り込みで、残りはクイーン・アントだけになったの。


 レイナさんとユーゼさんが攻撃し、エルバートさんが巧みに盾で攻撃を受けているよ。


「エア・スラッシュ!」


 皆の後ろでしばらく魔法の集中をしていたパンダ君が、大きな空気の刃を発動し、クイーン・アントに深手を負わせたの。


「土属性の魔法を使ってきたから、この魔物には風属性の魔法が効くかと思ったけど、思った以上に効果があったね」


「風属性、了解でーす! 陣風撃(じんぷうげき)大麦(おおむぎ)!」


「仕留めるわ! ローズ・ラスター!」


 ユーゼさんが棍で殴って緑色に穂を垂らす大麦を映し出すと、そこにレイナさんが剣を突き刺して、光輝く大きな赤いバラを重ね、数瞬の間をおいて、クイーン・アントはバラと一緒に弾けるように砕け散ったの。


 レイナさんのこの技は、以前朱雀を倒したときにも使っていたんだけど、今のレイナさんの使える技の中で最大の威力だと聞いてるの。最初から使えばすぐに魔物を倒せるのに、でも、そうはできないみたい。ある程度戦わないと発動できない技なんだって。

 古代神殿で習得したエルバートさんの「ファイナル・テンペスト」も同じで、すぐには発動できない技らしくって、私は技を発動している姿をまだ見たことがないの。


 クイーン・アントが大きな魔石に変わり、少し離れた所に円環のような形をした白い光が現れたの。


「これで依頼達成だ! 町に戻ろう!」

023話と042話を比べると、

ミリィの口調がやや異なるように見えますが、

前者は完全に心の声で(しかも、病気でつらい状態)、

後者は誰かに説明する話し方です(考え事もしています)。

本当は、宿屋の娘なので丁寧な話し方もできるんですが、今回は通常モードです。


資料集側に、039話までの登場人物・魔法紹介を掲載しました。

興味のある方は、目次ページ、タイトル上のリンクから移動してください。

また、資料集側を評価いただき、ありがとうございます。

本編は、まだ物語の根底がほとんど見えてませんから、評価のしようが無いですよね。

近日中に、大きな流れの一部が(少し?)明らかになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ