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女猫たちの戯れ  作者: 南あきお
女猫たちの戯れ
9/10

懐かしいメロディ


挿絵(By みてみん)


桜満開の春。

僕は妻と供に、母とマミさんの墓参りに来ていた。



……あれは僕がまだ幼い頃、起きた事件。



当時、住んでいたアパートの部屋に女が押し入り、僕は人質にとられ、殺されそうになった。

その時、一緒に居たマミさんは、必死になって僕を守り、逃がしてくれた。

そして、マミさんはその女に殺害され、女も部屋で自殺を図った。



その事件後、僕の母はショックから頭がおかしくなってしまい、精神病院に入院した。


僕は一時的に『みその園』という児童養護施設に預けられたが、そのすぐ後、母の両親(祖父と祖母)に引き取られて育った。


僕が高校生になった頃、入院中の母が、マミさんとの思い出話をしてくれた。

母が実は同性愛者だったという事に最初は戸惑ったが、母とマミさんとの恋はプラトニックなもので、実際には恋人という関係には至らなかったようだ。


その時の母は、精神の状態が良かったのか、正気を取り戻しているかのように見えた。

実に饒舌にマミさんとの思い出話を、懐かしみながらも話してくれた。


しかし、その一週間後。

母は随分前から悪かった肝臓を患い、死んでしまった……。


母の最期の言葉は、



「マミに会いたい」



だった。

母とマミさんは、本当に愛し合っていたのだろう……。

情熱的な愛の裏で繰り広げられた、女と女の愛憎劇。



母の墓、マミさんの墓、両方の墓参りをした。


墓参りの帰りの車の中で、カー・ラジオから懐かしいメロディーが流れた。

それは、Cyber Babeの『Reincarnation』という曲だった。

僕が子供の頃、母から教えてもらい、よく一緒に歌っていた曲だ……。



「誰の曲?」



曲を口ずさむ僕に、妻は問い掛けた。

妻はこの曲を知らないようだ。

かなり昔の曲だ……無理もない。


※※※※※※※※※※※※


それから一年後。

桜が咲き誇る春。


僕と妻の間に、双子の女の子が産まれた。

僕は双子に『マミ』と『クミ』と名付けた。


母とマミさんの冥福を祈って……。

今度こそ、二人がずっと一緒に居られますように……。



【 完 】

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