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女猫たちの戯れ  作者: 南あきお
女猫たちの戯れ
4/10

新宿二丁目


一ヶ月半後。

私は、なんとか大学に復帰した。

そして、過去の出来事を上書きするかのように、がむしゃらに勉強と新しく始めたアルバイトに打ち込んだ。

東京に就職を決め、大学もきちんと卒業し、上京し、新生活が始まった。



東京での一人暮らし。

東京にはクミと何度か遊びに行った事があったが、実際に住んでみると大変だった。


馴れない一人暮らし。

家事はいつも実家の母親にまかせっきりで、私は炊事や掃除の大変さを思い知った。


新居となるアパートの敷金礼金、毎月の家賃の振り込み手続き、電気やガスや水道の開通手続き、近所にあるスーパーマーケットやコンビニの位置の確認など、バタバタと進める事になった。


どちらかと言うと、私は一人で何でもそつなくこなすタイプだと思っていた。

自分の部屋は自分で掃除していたし、それなりにできていた。

だけど実際に家事すべてを自分一人でこなすとなると大変だった。

掃除はまずまずできていたが、特に料理は難しくて、私は簡単な料理しか作れず、もっと母親から学んでおくべきだった、と反省した。

ちょっとした野菜の煮物でも、味付けのさじ加減でこんなにも不味くなるとは知らなかった。

たびたび母親に料理について電話をしたりした。


就職先はデザイン会社で、私はカメラマンのアシスタントとして働いた。

仕事のほうは順調で、忙しくもあったが、なんとか同期の社員たちに遅れを取る事なく頑張った。

努力は実り、私は先輩たちからも信頼を得る事ができるようになっていった。

先輩がパーティーなどに誘ってくれて、私はそこで色んな筋のコネクションを作る事ができた。


東京の慌ただしい生活は、クミを忘れるには好都合だった……。


東京には、同性愛者たちが集う街、新宿二丁目がある。

レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、様々な人たちがいた。

いつしか私は、その街でハメを外すようになり、一軒のレズビアンバーに入り浸った。


酒と煙草。

女と女。

実に居心地が良かった。

何も隠す事はない。

ありのままの私。


そのバーで知り合った女の子、アサカと意気投合し、私たちは付き合う事になった。


挿絵(By みてみん)


アサカは私より5つ年下の20歳の女の子で、学生時代から読者モデルをしており、今は某女性ファッション誌の専属モデルをしている。

日本人とスペイン人とブラジル人の血が混じったクウォーターで、スタイル抜群の美人。


見た目は鋭く、冷たい感じのする美人なのだが、私の事を献身的に愛してくれる。

お互いに料理は少々苦手だったが、アサカは私の部屋に来ては料理を作ってくれた。

私には勿体無い女だ。

こんなに美人でスタイルも良く、モデルをしている女の子が、どうして私の事を気に入ってくれたのか不思議だった。

付き合おうと言ってくれたのは、アサカからだった。



……幸せだった。

アサカと一緒にいる時は、クミの事を忘れられた。


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