うそつき
しかし、翌朝目覚めると、クミの姿は忽然と消えていた。
荷物も何もかも無い。
私が貸してあげたスウェットだけは、きちんと畳んでカーペットの上に置いてあった。
しかしクミは、再び私の元から忽然と姿を消してしまった。
どうやら私が眠っている間に居なくなっていたようだ。
家の中、近所、クミの実家、何処を捜しても見当たらない。
昨晩、新たに教えてもらった携帯電話番号に電話をしてみる。
「お掛けになった番号は、現在、使われておりません」
受話器からアナウンスが流れた。
私は、膝から崩れ落ちた。
クミ……どうして?
まさか私……騙されたの?
私たち、親友だったよね?
どうして?
ねぇ、どうしてッ!?
※※※※※※※※※※※※
しばらく経っても、クミは見つからなかった。
彼女からの連絡も何もない。
私は、どうやら騙されたようだ……。
妊娠の話も真偽は定かでない。
まさか、騙されるとは思わなかった。
クミは多少、ワガママな部分はあったが、根は優しくて素直な良い子だったのに……。
どうして親友を裏切るなんて酷い仕打ちを……。
きっと彼と駆け落ちをして、私の知らない間にクミは変わってしまったんだ。
そうだ、クミはもう、昔のクミじゃないんだ。
平気で親友を裏切る、うそつきな悪い女になってしまったんだ……。
※※※※※※※※※※※※
あれから一ヶ月が過ぎた。
裏切られた私はショックから立ち直れず、大学を休み続け、ガソリンスタンドのアルバイトも辞めて、家に引きこもっていた。
眠れない毎日。
大好きだった人から裏切られた心の傷。
無くなった貯金。
思い描いていた新しい家族のカタチ。
あぁ、空が白みだし、また朝がやってくる……。
朝日が疎ましくて、私は再び布団の中に潜り込む。
私は、この出来事を誰にも話してはいない。
法的手段を取る気にもならなかった。
それよりも、一刻も早くクミを忘れてしまいたかった……。