14.祭りの準備をする予定だったのに...
マイが生まれてから3日が経った。
その間、特に何もなく平和でのほほんとした時間が過ぎていた。
竜也は魔法が少し使える様になり、剣に属性を纏わせて攻撃が出来るようになった。
焔はスキルで能力upを持っているので日々、筋トレや早朝ランニング、魔力操作などをしていた。
伐採などのことも欠かさず行っている。
図書館でテイマーについてやこの世界についての事にも調べていた。
ある日、焔が村を歩いていると気になるものを見つけた。
「なんだあれ、[いよいよこの季節!水村の祭りの季節です!祭り開催まで後1週間!お楽しみに]って、あーー!忘れてた!祭りで店出すんだった!てゆうか、竜也が噂で聞いたの1ヶ月以上前だよな...祭りの噂出るの早!」
何故スキルで完全記憶を持っているのに忘れるんだ。
そう、焔は数日前竜也と村を回っていた時に聞いた祭りで店をやると言ったのだ。
「やべぇ、どういうの出すとかも決めてねぇ。食べ物系か?それともファンタジーな世界だからなんかポーションとかにするか?.....いや、食べ物系だな。祭りは歩き食いしてなんぼだろ!」
自問自答。
焔は一人で走りながら喋っている変人である。
早朝だからいいものの昼とかだったら引かれているレベルだ。
ともかく焔は自分の出す店が決まったので、急いで店づくりに取り掛かった。
祭りまでの時間は後1週間。
焔の忙しい日々のスタートだ!
あと後焔はランニングを終え、近くの公園のベンチに座っていた。
「さてと、木材は風魔法を使えば簡単に作れるしそもそも大量にあるから問題ない。となると店の名前か...料理名出良くね?なら、何を作るのか決めなきゃな」
何ひとりで言ってんだあいつ...
そんな視線が焔に向けられるが、焔は気にしないで一人でぶつぶつ喋っている。
「イカ焼き...はイカが釣れないし、カステラは...材料知らんし、りんご飴は...飴の部分分からんし」
そんな延々と続きそうな事を言いながらマイを撫でていたら後ろから声を掛けられた。
「あの、すみません。貴方って最近ずっと図書館で本を読んでいる方ですよね?」
ふり返ると、
そこには160cmぐらいであろう小柄な少女が立っていた。
その少女は緑の髪をしていて藍色の目をしている。
「はい、そうですが...何か用ですか?(やべぇなんか怖い人みたいになってる!女の子と話すことなんかないからどう反応していいか分かんなーい(泣き))」
女の子との会話の経験のなさが響いている焔。
だが、少女は気にしていないようであり、普通に話した。
「いえ、ただ図書館にずっといるのでどんな事を学んでいるのか聞きたかっただけです。私には本友達がいませんので...」
「あぁ、そういう事ですか。いいですよ。俺も本友達いないので。良かったら隣座って話しますか」
ここで焔、大胆な行動に出た!
女の子と話すことなんかほぼない、ならばここで話しておくことで経験を積もうとしたのだ。
「あ、いいですか?じゃあ隣にお邪魔します」
少女はそう言ってゆっくりと焔の隣に座った。
「私、ミラって言います。ここの近くの孤児院に住んでいて、冒険者としてお金を稼いで暮らしています。あなたは?」
焔にパスが来た。
焔は少し戸惑ったが、深呼吸をしてゆっくりと言った。
「俺は焔だ。同じく冒険者をしている。後、ポーションとかも作れるし、鍛治も出来る。(どうしよ、よろしくとか言っといた方がいいのかな)よ、よろしく」
うん、とてもぎこちない。
「焔さんですね。よろしくお願いします!」
ミラは元気よく答えた。
「後、その膝に乗ってる可愛い生き物はなんですか...」
ミラはそわそわしている。
マイが気になっているのと触りたいからだ!
「あぁ、こいつはマイって言ってドラゴンの子です。卵から産まれて3日経った可愛い相棒です。触ってみますか?」
「はい!」
焔はミラにマイを渡した。
ミラは幸せそうにマイを受け取り、撫でた。
その後はミラと一緒に図書館で読んでいる本のことや、冒険者として魔物とどう戦っているかを話し合った。
話していくうちに焔は緊張が解けていつも通りに話せるようになった。
ミラも敬語がなくなり、友達感覚で話してくれるようになった。
「孤児院には今20人くらい人が居てね、みんなで協力して暮らしているんだよ」
「へー、生活に困ったりしないのか?」
「ん〜、困るとしたら病気とか怪我とかかな、私も冒険者してるからポーション代がかかるし病気になると看病をしなきゃいけないし」
マイを撫でながらミラが言う。
マイは気持ちよさそうに鳴き声を上げている。
「孤児院を管理してる人とかいないのか?」
「んー、いるんだけど今は他のところにいて頼めないの。近くの首都アプソリュにいてね、クエストを沢山して稼いできてくれるの。もうすぐ夏だからそろそろ帰ってくるんだ」
「そうなのか...ポーションとか簡単に作れるからミラ達の分も作ってやろうか?後、孤児院の手伝いも暇な時なら出来るけど」
これは!?焔の固有スキル"困っている人を少しでも手伝いたくなる"が発動した。
「えっいいの!?じゃあお言葉に甘えて、今から孤児院に来てもらおうかな!やることが沢山あるんだ〜」
ミラは焔の腕を掴み、駆け出した。
焔は急に触られたため一瞬戸惑ったが初めて女の子に触られたので嬉しくなった。
「ここが孤児院だよ!」
ミラが指を指した先には教会のような大きい建物がたっていた。
孤児院は外の壁が白く、所々欠けているところもあった。
(こういう所も俺が修復出来たらいいんだけどな。俺もそろそろ家が欲しいし建築の勉強しようかな?)
焔は竜也と一緒に門の牢屋に住んでいる。
流石にもう普通の家に住みたいようだ。
「こっちに来て!」
焔はミラに案内されて孤児院の中に入った。
中に入ると元気な子ども達がわあわあと寄ってきた。
「ミラ姉おかえり!」
「ミラ姉ご飯〜!」
「こらみんな、ミラ姉が困ってるでしょ。おかえりミラ姉」
と様々な言葉をミラに言った。
ミラはかなりここの子ども達に好かれているんだと焔は思った。
焔がその中で元気が無い子は一人もいなかった。
「ミラ姉、その人誰?」
(あ、俺初めて来たから自己紹介しなきゃいけないのか。
さあ、完璧な自己紹介をしておもしろい人だと思ってもらうぞ!)
「俺は--」
「彼は焔。私の手伝いをしてくれるって言ってくれたんだ!物知りで優しいから頼ってあげてね!」
焔は自己紹介しようとしてミラに遮られたが、中々いい紹介をされて嬉しい思いをした。
「そして焔の肩に乗ってるこの子はマイちゃん!とっても可愛いから一緒に遊んであげてね!」
ミラが焔達の事を紹介したが子ども達は焔達を警戒している様だ。
孤児院にいるから当たり前だろう。
知らない人を信用は出来ないからだ。
たとえそれが信用している人の紹介であっても。
(どうしようか...俺に対する警戒を解いてあげないと)
焔は子ども達に一歩近づいた。
(今は夏の少し前、少し暑くなってきている。ならば、これだ!)
「みんな!今ちょっと暑いよね!そんなみんなに〜、涼しくなれ〜!」
そう言い放ち焔は霧状の水を出した。
...まあ、水遊びみたいなものだ。
「わっ、お兄さん凄い!何これ!」
「えっ?どうやって出してるの?」
「涼しい〜!凄いすご〜い!」
焔は子ども達が喜んでくれてほっとした。
でも、忘れてはいけない。ここは教会の中だ。
隣から震えた声が聞こえてくる。
「焔...床が濡れちゃったじゃない!ちゃんと掃除してよね!」
「は、はいぃ!ごめんなさい!」
その後焔は子ども達も和解でき、仲良くなれた。