第1話
申し訳ありません…諸事情により21時過ぎの投稿となってしました…
申し訳ございません…
それでも読みに来て頂けて本当に幸せです!
今回も私の世界観を楽しんで頂けたらなぁと思います。
お日様の匂いがした。あの、なんとも言えない温かくて良い匂い。全てを包み込むような優しくて懐かしい……
──────冥界ってこんなにいい匂いなんだなぁ…
そう思いながら幸せな余韻が止むのを待った。
ベットの上に横たわっていると気づいたのは暫く後の事だった。
「気分はどうかな? アル君」
突然名前を呼ばれて身構える。そして自分のおかれている状況を把握しようとするが……
──────僕は…
「僕は死んだんじゃあ…… それに手足が生えてる… えっ!? はぁぁぁぁ?」
ベットの上で僕はじたばたしながら自分の手足を確認する。僕の四肢は全て切り落とされたはずだった。切り落とされたはずだったんだ。けれど生えているのである。
これが発狂せずにいられるだろうか。
「そうパニックになりなさんなよ〜 アル君」
ベットの横に腰掛けた女性が、僕をなだめる。
そもそも色々おかしいのだ。一つ目、目の前で静かに微笑む女性が何故か僕の名前を知っている。二つ目、僕は確実に死んでいたはずなのに生きている…… 三つ目、手足が生え揃っていること…
と、三つもおかしい事があるのだ。
ニマニマと笑う女性。でも、女性というよりは美少女の方が合う気がする。
軽くウェーブのかかった、後ろの木枠の窓から差し込む日光に照らされ静かに輝く金糸のような髪に、青空のように澄んだ蒼色の瞳、ほのかに桃色に染まった頬。白いワンピースがよく似合っている。
一通り叫び終わり、再び美少女によってベットに寝かされる。今思うのだが、こんなに良いベットで寝たのは初めてな気がする。物凄くふかふかで温かい。
「落ち着いた?」
「はい… ありがとうございます…… で、貴方は………」
──────誰なんだ。僕を助けてくれたのは確かだと思う。けれど、見ず知らずの他人をわざわざ助けるか? 余程裕福なのだろうか… 寝具だけでなく他の家具も皆品が良い。木製ゆえなのだろうか。すこぶる居心地が良いのだ。窓から差し込む光りも心地良い。
「私の名前は今じゃなくても構わないでしょ? アル君また叫びそうだし」
は、はぁ… と生返事をするも納得がいかない。それを察してか美少女が語りはじめる。
「アル君、君がたまたま私の管轄にいたから助かったんだからね。感謝してよね」
──────管轄?
「あ、ありがとうございます……」
「ほんとに、危なかったんだから…」
伏し目がちに喋る彼女。
「でね、瀕死のアル君を拾って助けたの。どうやって助けたのかは秘密〜」
「秘密って、腕と足が僕無かったですよね…」
「無かったねぇ〜」
また笑う彼女。こっちからしたら笑い事ではない。
「いや、神様とかじゃなかったら治せないでしょ…」
──────えっ、嘘だろ…
物凄く笑う美少女がそこにいた。
「え、嘘だっ! 貴方、神様なんですか!?」
思わず目を見開いてしまう。僕は神様かもしれない美少女を凝視するが、思考回路がショート寸前まで追い詰められる。
──────やばいやばいやばいやばい。この子が神様だなんて僕はどうすればいいんだろうか。救って貰ってなんなんだが、返せるものも無いし。
なんせ僕は無一文なのだから。眷属になれなんて言われでもしたらっ……… あれっ、僕は。
──────どうして眷属になりたくないんだろうか。
わからない… 正確には思い出せないのだとと思う。ある一定の領域から記憶にモヤがかかっているようで思い出せない…… こんな事、初めてだ。
「よくわかったねぇ〜 アル君。 えらいえらい」
優しくボクの頭をさする少女。手を払い除けようとしたが上手く交わされた… 意外と自分自身、嫌じゃないのかもしれない。結構気持ちが良い。記憶の事は今は───。
「それでね、アル君に伝えないといけない事があるの」
少し憂いを帯びたおもむきで僕を見つめる女神。何かあるのだろうか。僕の身体に異常は無いようだし、でも助けた代わりに寿命を減らしてしまっただとかあったりするのだろうか……
まあ、命を助けて貰ったのだからそれくらい構わないのだかなんて思ってみる。
「あ、あのね。 アル君は私の眷属にね、なってもらったの」
「はっ?」
いきなりの爆弾発言すぎる。この女神は何を言ってるんだろうか。いきなりすぎて全てを受け止めきれず絶句してしまう。
「ご、ごめんね?アル君… 仕方がなかったの… ね? 思考停止しないでちゃんと聞いててね……」
女神が僕の様子をチラチラ確認しながらゆっくり僕にわかるようにか語り始める。
「アル君を治したのは正確には私じゃないの。
私の眷属になったアル君自身なんだよ。 まぁ、私が眷属にしてなかったら死んでたのは同じなんだけれど。 ほんとに治してあげれるなら治してあげたかったのよ? 私だけの力で… でもほぼ全て私の力は封印されているから…… ごめんなさい、無力な神で………」
──────いや、そんな悲しい顔されたら責め用にも責めれないじゃないか……
「でも、眷属って神様の独断で決めることは出来ないんじゃあ……」
これは前に知人から聞いた話しだから信憑性があるかはわからないのだが、お互いの合意があってからの契約なはずだ。神様の独断でなれるものじゃないはずなのだ…
滑る髪を耳にかきあげる女神。
「いやぁあ…… まぁ、そうなんだけどね。色々やり方はあるんだよぉ。 ほら、私一応昔えらかったから?」
いや、なんで疑問形なんですか… 太古すぎてわかるわけが無いでしょう女神様よ…
「でね、謝らないといけないのはその先なの。 あのぉ… 途中まではね、契約上手くいってたのよ? でもぉ… あのぉ… 私焦ちゃって… アル君の記憶の一部を消してしまったの……… ほんとにごめんなさい…」
「は?」
二度目の絶句。思い出せない事くらい気にしなくて良いと思っていたけれど。そういう事だったのかと理解するが納得出来かねる。勝手に眷属にしたうえに記憶を一部ではあるが消しちゃった?
ふざけるな。だが、助けてくれたのも事実なのだ。この女神様も悪気があったわけでは無さそうだが………
──────これってどうすればいいんだ…
怒るにも怒れないし…… そもそも帰る場所もなかった気がする。思い出せないだけかもしれないが……
「やっぱり怒るよね… アル君、眉間に皺が………」
僕の眉間にそっと指を伸ばす彼女。少し震えている気がする。
「本当にごめんね、アル君… 私、駄目な女神だから………」
彼女の指が僕の額を優しくさする。仕方がなかったんだと思う。本当に。
「大丈夫ですよ、女神様。 貴方が助けてくれてなかったら僕は今頃死んでましたし、御自分を攻めないでください」
できる限り僕は笑った。満面の笑みで。
今度は僕が、俯いたままの彼女の肩を軽くさすったりしてみる。眷属だしこれくらいは許されるだろうし。
「貴方の、お名前を聞かせてください。 僕の女神様?」
これで少しは落ち着いてくれるとありがたい。何故か僕が罪悪感を抱くはめになるなんて思いもしなかった。彼女が自分を責めるのを止めてくれないと止みそうにないのだ、この罪悪感は。
「あ、ごめんね。 名のってすらなかったね私」
目尻を軽く押さえる彼女。心なしか声色も上がった気がする。
──────笑ったらちゃんと可愛いな。女神様。
ふっと温かい春の野に駆け抜ける風のような微笑みだった。
「私の名は、ロザリア。母なる女神なんだよ? これからよろしくね、アル君」
僕は。無くしてはいけないものを失ったのかもしれない。でも、今はただこの女神様と共に僕は。
──────歩んでいきたいと思う。
最後まで読んで頂きありがとうございます!!
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