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35話 剣の嵐

ネット小説大賞の一次審査通過してました! これも皆さまの応援のおかげです! ありがとうございます!



 戦線は膠着……いや、同盟軍がやや劣勢を強いられていた。その原因の一端は、圧倒的な差のある数だった。

 魔物の成長スピードは他種族とは比較することができないほどに早い。故に損耗してもすぐにそれ以上の補填がなされてしまうのだ。

 反対に同盟軍は損耗するばかりで兵の補填など常にギリギリである。


 しかし数の差はそれだけが理由ではない。


 ここ半年間、戦線を最低戦力で留めた魔王眷属である魔人種達の戦略・戦術が優れていたからだ。

 勇者が召喚され、育成期間を経て、戦場に送り出せる最低限のレベルにまで達した頃合い。この今、溜めた続けた魔物達を一気にけしかける。勇者達を屠るために。魔王軍は今代最大の攻勢を仕掛けた。



 ***



 焼けた野原に広がる戦線の右翼は、撤退ギリギリのところまで追い詰められていた。一般兵はすでに二割を損耗。圧倒的な数の暴力に飲み込まれつつあり、それを勇者組の数人が主となってなんとか凌いでいる状態だ。その中心は近藤グループだ。


「ウォォオオッ!!」


 狂戦士の志村が全身に傷を負いながら魔物の軍団を吹き飛ばす。付加魔術は施されているが、ほぼ純粋な暴力によってだ。


「一回落ち着け志村! 回復が追いつかない!」

「わかってるよそんなこと! でもこうしなきゃ死ぬ!」

「クソがッ!」


 近藤も悪態を吐く。わかっているのだ。無理をしなくては死んでしまうことなど。しかしだ、それにも限界はある。


「ぐぁぁあ!」


 勇者組の一人が吹き飛ばされた。近接格闘系技能を主に習得している男子だ。判断ミスで複数の魔物に一気に囲まれてしまい、手数が足りなくなったところに強烈な一撃を見舞われたのだ。

 それがきっかけだった。同グループのメンバーがそれに一瞬気を取られ、次々と追い詰められて行く。それによって状況の悪化が加速。近藤グループにもその余波が訪れた。


「ッ!?」


 近藤からふっと力が抜けた。その感覚を近藤はよく知っている。何回も、何十回も覚えたものだからだ。


「大丈夫か!?」

「魔力がもうないぜ!」


 取り巻きB君の付加魔術が途切れた感覚だった。B君の魔力が枯渇したのだ。立っているどころか声を出すのも辛いB君を、A君がしっかりとカバーする。魔力補給薬が貰える地点まで後退するしかなかった。


 そうなると困るのは志村と近藤だった。一体一体は大したことはない。しかしあまりの量に付加魔術なしでは討伐ペースが間に合わない上に、体力が持続しない。志村に至っては蓄積されたダメージが徐々に蝕まれていた。


 そして、


「うわぁぁぁ!」

「なんだ!?」

「勇者様! B級上位相当の魔物です! 」

「クソッ! !」


 B級上位。二級冒険者でも上位に位置する冒険者でなくては討伐できない魔物だ。およそ徴兵されている一般兵の殆どが敵わない敵。そして勇者組である近藤も、この圧倒的な悪条件下では討伐困難だ。


 まさに絶対絶命、剣ヶ峰、万策尽きるといった具合だ。近藤は拳を握り締め、志村に言葉を絞り出す。


「志村、ここはお前に任せた」

「ふん、君の顔を見なくていいとなると清々するね」

「お前はっ」

「他人の為に命を張るなんて君らしくない。君はもっと横暴で乱暴なガキだろう。変にいい子ぶるなよ」

「……」

「あと、ここは僕一人で十分だ。むしろ君がいない方が楽だね」

「この、言ってろ!」


 それは近藤が真に覚悟を決めた瞬間だった。死にたくない、死なないというものではなく

 生きるという確固たる意志。生き抜くという決意だ。


 近藤は戦場を駆けた。魔物は基本的に回避し、どうしようもない時は一撃入れて通り抜けた。

 そして辿り着いた時、近藤は驚愕した。


「倒されてる……」


 報告にあったB級上位の魔物が一刀両断されていた。切り口に乱れはなく、まるで標本か何かのようにそこに転がっていた。硬い皮も、分厚い肉も関係なく、巨体がそこに転がっていたのだ。

 さらに、その他大勢の魔物も屠られていた。B級上位と同様に全て刀剣による斬撃痕があった。


 近藤は予想外の光景に近くにいた一般兵に声をかけた。


「お、おい。これは誰が……」

「あの人です。あの女性がさっき現れて一瞬で倒されたんです。自分たちは危ないから離れていろと言われ」


 一般兵は困惑と歓喜の色が混じった声とともに指を指した。

 その先では剣舞……否、剣嵐とでも言うべき剣撃を繰り出す一人の女剣士がいた。一見適当に見えるような無数の剣撃は全て正確に魔物を切り裂き、殆どの魔物が一撃で屠られて行く。

 さらに驚くべきは女剣士の振るう刀剣のリーチから、明らかに外れている魔物すら切り裂かれているということだ。魔術を併用している様子はない。つまり何かしらの魔術以外の技能を以って埒外のリーチを実現しているということだ。


 一般兵と近藤が唖然とした視線を集中させるなか、女剣士は数分とせずにある程度の魔物を狩り終えた。返り血すら浴びず、刀剣に血潮も残さず、少しの汗はかいているが息は全く上がっていない。まさに余裕といった様子だ。


 女剣士は刀剣を鞘に収めることなく近藤たちに近づいた。まさかの行動に近藤らは警戒をするが、それに気がついた女剣士が声を上げた。


「あなた達と敵対はしないから安心しなさい。ただここは戦場だからね。武器を手放すなんてことしないわよ。死にたくないもの」


 近藤が代表して答える。


「そ、そうか……。俺は勇者の仲間の近藤だ。お前は誰だ? こんなに強い奴がいた記憶がないんだが」

「私? 私はルーラ、二級冒険者よ」


 女剣士ーールーラは続けて言う。


「悪いけれど、ここから先は私は手伝えないわよ」

「な、なんだ!? ルーラがいればそれこそもっと楽に」

「私、あるお方に付けていただいている修行の一貫でここに飛ばされださたのたけど、言われていたことも済んでしまったし、多分戻されるのよ。加勢したい気持ちはあるのだけどね」

「そうか……」


 と、そう言われたが近藤が納得できるかと言われれば話は別だった。しかし自分が、ルーラよりも遥かに弱い自分が何を言おうとどうにもならないことは知っている。それは近藤が月夜を姐さんと慕うきっかけになった一連の騒動で染み付いていた。

 だから周囲で不満や反感を抱く一般兵の気持ちも理解出来ていたが、それでも無理にとは言わない。


「戻されるまででいい。頼む、力を貸してくれ! あんたがいれば傷つく奴が減るんだ!」

「……まあ、そのつもりよ。ツキヨにもそう頼まれているし」

「ツキヨ……って、月夜の姐さん!? し、知り合いなのか!?」

「ええ、ツキヨの仲間。ツキヨもこの戦線に飛ばされているはずよ。あの子、私なんかよりも強いんだから」

「姐さんも修行か?」

「そうよ。もう一人とんでもない子も一緒にーー」


 その時、遠い場所で爆発が起きた。その音は衝撃波となってルーラ達を揺らす。


「始まったわね。多分これは、エルミダね」

お読みいただきありがとうございます!


まずは謝罪を。一ヶ月も経ってしまいすいませんでした。あの、某有名ラノベ大賞用の作品を書いてみようと思いまして。いや、異世界ミステリー難しいですね。間に合わないのですけど、来年に応募したいと思います。公開出来たらするかもです。


いや、ほんと時間空いてすいませんでした!

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