30話 月夜の修行?
あけましておめでとうございます!
超遅筆な上、着地点がまるで見えていませんが今年中に完結目指して頑張りたいと思います!
修行を始めて二日目。私はかつてないほどの瀕死状態に追い込まれていました。場所は中庭ではなく城の一室。眠気を誘うような暖色の明かりが部屋を照らしてはいますが、妙な孤独感に捕らわれます。
「あと何冊あるのですか……」
机に向かって座っていた私が伸びをしながら見たのは、大量に積まれた本達。軽く50冊は超えていますが、私はこの全てを読み理解しなければいけません。それが修行内容であるからです。
私がこの部屋に放り込まれのは昨日、アルテミシアさんがルーラさんとエルミダちゃんどこかに転移させた後です。
アルテミシアさんは私に使えるだけの魔術を行使するように言いました。なので私は言われた通りに実行したのですが、何故かため息を吐かれ、次の瞬間にはこの部屋だったというわけです。
そしてアルテミシアさんは言いました。
「私が用意した本を読んで学べ。なに、お前の得意分野だ。期待している」
アルテミシアさんはぱんぱんと手を叩きました。すると壁一面の書架から次々と本が一人でに動き出し、アルテミシアさんの背後にあった机に積まれていきました。
一体何の魔術を使ったのか気になりましたが、私は欲求をぐっと抑えました。
「何についての本なのですか?」
「魔術に関する本に決まっておろう。まずはお前の引き出しを増やして貰う。知ってる魔術が弱過ぎて話にならんからな」
「わかりました」「早く終わらせろよ? それまでは私も遊んでくるのでな」
例の如く消えてどこかへ行ってしまいました。それから私は休憩を挟みながら本を読んでいきました。本は好きですが、読んでいるのは専門書と何ら変わりのない物。非常に頭を使います、疲れます。
そして死に体の私が出来上がったわけです。
「ご飯にしますか……」
昨日のうちに見つけておいた厨房に足を運びました。
実は、広いこの城で厨房を見つけるのは大変でした。【水蒸気式感知魔術】では入り組んだ城の隅々まで感知するのは難しかったのです。どうやら屋外でないと効果を十分に得られないようでした。これでは洞窟での使用も限定的になるでしょう。失敗です。
とはいえ一人で探し回っていたのでは大変なのですが、有効な手立てもありませんでした。今のところも、当然昨日の時点でもそうした魔術はまだ見ていませんし。
そう思いながら扉を開いた私がいたのは、地球とは大分違いますが厨房でした。
私は今日になってもそれが不思議で呟いてしまいます。
「この城の構造がおかしいのではなくて、アルテミシアさんの魔術の所為ですよね……。一体何魔術なんでしょうか」
転移するような感覚はありませんでしたが、これも転移魔術なのでしょうか。しかしもう一度扉を開いても先程の部屋に繋がっていますし、これは部屋が直接厨房に繋がっている?
「でも魔術式がまるで見当たりません。刻印魔術のように何か印があるようにも見えませんし……」
考えれば考えるほどにアルテミシアさんの謎魔術は分からなくなっていきます。それかもしかしたら単純な話で、アルテミシアさんは魔術式なんて無しに魔術を使えるだけかもしれません。何せ神話に登場する伝説の女性なわけですし。
それ以上の思案は泥沼にはまること必至でしたから私は切り上げ、自身の昼食? いえ、そういえば窓がないので今の時間がわかりませんが、食材を棚から取り出し調理にかかりました。
考えごとは危ないですが、あいにくと包丁は使っていません。全て魔術で代ていますから。半ば自動的に調理をしながら、やはり私は思考に耽てしまうのです。
ルーラさんとエルミダちゃんにも会えていません。二人とも無事でしょうか。アルテミシアさんに確認したいのですが姿を現しませんし、私では捜査不可能。打つ手なしです。
でも二人なら大丈夫だと信じます。エルミダちゃんはアルテミシアさんも気に入っているようでしたから大丈夫。ルーラさんは……正直危ないでしょうが、ルーラさんなら大丈夫だと信じたいです。
油が手に跳ね思わず現実に引き戻されました。誰もいません。
思えば旅に出て割とすぐにルーラさんと出会って、一人になるのも久しぶりでした。王城でも柄にもなか様々な人と話していましたし。私も異世界に来て変わったというよりか、無意識に寂しかったのでしょうか。
いえ、寂しいなんてことありませんね。そもそもが一人ですし、基準はそこにあるのですから。これが当たり前でした。忘れていましたが。
「さあ出来ました。早く食べて戻らないと」
簡単な野菜炒めでしたが、まあまあ美味しく出来ていました。
***
「な、何ですかこれは……」
修行? を始めてから10日目。私はようやくあれだけあった本の三分の二ほどまで読み終えていました。自分のことながら凄まじいペースだと思います。途中からは精神干渉魔術に関する魔術式から新魔術【意識加速魔術】を作成し、それで意識を引き延ばして読書速度を上げて読んだからでしょう。
というのも四日目にまた唐突に現れたアルテミシアさんに発破をかけられーー若干の脅迫をされたからです。結果的に効率的でしたので良かったのですが。
しかしそうして読む速度を上げても解決出来ない問題が、新たに私の前に立ちはだかったのです。
私の前にあるのはこれまで読破して来た本よりも古びた表紙の本でした。その時点で何か嫌な予感はしていたのですが、読まなくてはどうにもなりませんから私は本を開きました。しかし読まなくてはどうにもならないのですが、私はそれが読めなかったのです。
「ほう、そこまでいったか」
「アルテミシアさん、これ何語ですか?」
アルテミシアさんの神出鬼没にもすっかり慣れた私は、本を指して聞きました。するとアルテミシアさんは虚空から取り出した椅子に座りました。
「それはお前たちが使っている魔術言語のひとつ前、古代魔術言語だよ」
「なるほど。どうりで雰囲気が似ていると思いました」
「古代魔術言語で扱う古代魔術の効力は桁違いだがな」
「そうなのですか?」
「そうだとも」
アルテミシアさんは珍しく居座るつもりなのか、既にお茶の入っているカップも茶請けを取り出しました。私の分はありません。
「ずっと聞きたかったのですが、アルテミシアさんが使っているその魔術は何なんです?」
「ふむ、ちょうどいいか……。何故古代魔術が強力なのかにも関係するしな」
一口お茶を啜りました。
「ではまず、お前は魔術と古代魔術の差がわかるか?」
「いえ」
「少しは考えろ馬鹿者」
解せません。それを質問しているのに。
私は暫く思案しましたがまるでわかりませんでした。それに見かねたのかアルテミシアさんは咀嚼していた茶請けを飲み込み、お茶で口を整えました。
「内包する神秘の差だ」
「神秘、ですか?」
「簡単に言えば世界に干渉出来る権限だよ。神秘を内包するほど世界により強力な干渉が出来る。つまりだ、魔術は現象を起こす力だが、古代魔術はより強力な現象を起こせるというわけだ。
さらに言えば相手と同程度の神秘が内包されていなくては、相手を傷つけることが出来ない。神秘は存在の強度すら決めるものだからな」
「そんなものがあったのですか。どこにも記載されていなかったのですが」
「昔と比べて神秘は薄れていっているからな。その記憶すらなくなっていっているのだろう」
嘆かわしいことだ、と肩を竦めるアルテミシアさん。
「でも何故わざわざ劣化させたのでしょうか」
「簡単だよ。神秘は内包されているほどに扱いが難しくなる。今の魔術は神秘が薄れる代わりに扱える者を増やしたのさ。太古に比べ人は増えた。質より量が優先されただけだよ」
さらに呪文を唱えて魔術を行使する間接構築法が生まれたわけですか。扱いやすくなる反面、そういったことがあったのですね。
「そもそもお前のスキルである【言語理解】というのは、何を基準に理解出来るようになっていると思っていたのだ。確かに言語そのものを理解するというのは大きな要因であろうが、内包する神秘に耐えうるようになることは絶対条件だぞ」
「ではアルテミシアさんが使っているのは古代魔術なのですか?」
「何を言っているのだ馬鹿者。貴様確かに私は古代魔術から現代魔術まで網羅しているが、お前が訊いたのは別物だ。
魔力を代償に世界に干渉する魔術。その上位互換である古代魔術のさらに上位。私が使っていたのは魔法だ」
絶句でした。でも考えてみれば納得です。だって神代の時代に活躍した英雄様ですよ。その中でも最強格とされているアルテミシアさんが魔法を使えないで、誰が使えるというのでしょうか。
「因みに何魔法なのですか?」
「空間魔法だよ。世界のルールの一部、その中でも空間に関するものを塗り替える魔法だ」
「……何とコメントしたらいいかわかりませんね」
「お前ではまだ到達出来ん領域だ。とりあえず知っておくだけでいいさ」
「わかりました。コツコツ頑張ります」
アルテミシアさんはティーセット一式を空間魔法で回収し、椅子から立ち上がりそれも回収しました。恐るべし空間魔法ですね。
「では私は行くとしよう」
「あの、ルーラさんとエルミダちゃんはどうですか?」
「ふっ、どちらも中々面白くなって来ているぞ」
「ああ、はい」
碌でもなさそうですね。
「では早く古代魔術を習得しろよ。それが終わったら次の段階だ」
「はい!」
返事を聞いたアルテミシアさんはまた姿を消し、どちらかの方へと向かったのでしょう。エルミダちゃんはともかく、ルーラさんも面白いと言われ始めたのです。それはつまり以前よりは認められ始めているということでしょう。私も頑張らなくては。
お読みくださりありがとうございます!
今年もどうぞよろしくお願いします!
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